追憶の森
★★★★
製作:2015年 米国 上映時間:111分 監督:ガス・ヴァン・サント
原題は『THE SEA OF TREES』で、富士山の青木ヶ原樹海を意味している。米国映画なのだが、舞台のほとんどがこの青木ヶ原樹海なのである。そして時たま描かれる主人公・アーサーの回想シーンだけが、米国での出来事という構成になっている。
さてアーサーがはるばる日本の樹海を訪れたのは、ネット検索で『理想の死に場所』を探し、青木ヶ原樹海のことを知ったからである。そして樹海の奥深くに侵入し、睡眠剤を少しずつ飲み始めたとき、突然ふらつきながら彷徨い歩く日本人男性が現れ、ここから出られなくなったので助けて欲しいと懇願するのだった。
彼はナカムラ・タクミ(渡辺謙)と名乗り、どうやら手首を切って自殺を図ったものの死にきれず彷徨い続けているようである。その後アーサーは自殺することを中断し、ナカムラを助けることに専念するのだが、なかなか樹海の出口が見つからない。
さらに悪いことに、さきほど服用した睡眠剤が効き始め、ひどいめまいに襲われて崖から落ちてしまうのである。そしてそこに滝のような大雨が降り注ぎ、二人は半死半生の状態で夜を越すことになる。
ナカムラは会社で左遷されたことが自殺の理由だと言うのだが、アーサーにはなぜその程度のことで自殺をするのか理解出来ない。ナカムラは文化の違いだと言い張るのだが、まだアーサーは納得できないようだ。
前半は、たびたびアーサーの回想シーンが織り込まれるのだが、夫婦仲が悪いシーンばかりで、何がアーサーを自殺に追いやったのか不明のままである。後半になってそれが解明されたとき、あっと声を上げ、私自身も悲しみに暮れてしまった。そうだったのか、これなら死にたくもなるよな・・・。
ここで結末を詳しく書くわけにはゆかないが、本作が描きたかったのは「真実の愛と霊魂の存在」だったのかもしれない。また樹海の怖さを大げさに描いている部分もあるが、なかなか奥行きのある味わい深い作品であったことは確かである。
評:蔵研人
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