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2021年2月の記事

2021年2月23日 (火)

工作 黒金星と呼ばれた男

★★★★

製作:2018年 韓国 上映時間:137分 監督:ユン・ジョンビン

 1992年の実話である。北朝鮮の核開発をめぐり南北の緊張が高まる中、その実態を探る任務を帯びたパク・ソギョンは、コードネーム黒金星という工作員として北朝鮮に潜入する。そしてなんと金正日総書記と対面するのであるが、そこまでの信頼を得るために3年間に亘り事業家に扮して、北朝鮮の窓口であるリ所長と交渉を重ねてゆくのだった。

 いまひとつ難しくて、話の展開や映像がよく理解出来なかったのだが、決してつまらない映画ではない。北朝鮮の風景や建物など、そして金正日のそっくりさんや、怖いほどの厳重警戒などなど、製作費と製作意欲の重さをどっしりと感じた。
 ときどき拳銃が登場するものの、アクションは一切ゼロというスパイ映画である。ただ二重三重に敷きつめられた非常に厳格な北朝鮮のチェック体制に緊張感が漂うばかりだ。私が主人公ならおしっこを漏らし立てしまいそう。また韓国の大統領選挙をめぐる祖国と北朝鮮の裏取引にも驚かされた。

 暗くて重厚で難解な映画であったが、最後に同民族である北と南の友情を垣間見て、ぐっと目頭が熱くなってしまった。もしこれがアメリカ映画だったらアカデミー賞を受賞したに違いない。

評:蔵研人

 

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2021年2月20日 (土)

プリズム

著者:貫井徳郎

 小学校の女性教師殺人事件がテーマになっているミステリーである。殺害されたのは美貌の新人教師山浦美津子で、凶器は彼女の家にあったアンティーク時計。従ってこの時計が落下した不運な事故とも考えられるが、窓がガラス切りで外されたうえ、睡眠薬入りのチョコレートが発見されてしまい、他殺の線が濃くなってきたのである。

 本作は1.虚飾の仮面 2.仮面の裏側 3.裏側の感情 4.感情の虚飾 の4部構成となっており、第一部は被害者の教え子である小宮山真司ほか4名の小学生が探偵役を務め、被害者の同僚で恋敵の桜井先生が犯人だと結論付ける。
 ところが第2部では、その桜井先生が探偵役となり、犯人捜しをするのである。なんだ彼女は犯人ではなかったのか。そして何人かの怪しい人物が浮かび上がるが、結局は元恋人で医師の井筒が犯人と断定する。

 第3部に突入するが、井筒は犯人ではなく、今度は井筒が新犯人捜しの探偵役となる。そしてやっとたどり着いたのが、冒頭で探偵役をこなした小宮山真司の父親で、被害者の不倫相手だった。やっとこれで決着し、第1部に結局ループしてゆくのかな…。
 と思いきや、第4部ではその小宮山が探偵役となって、またまた犯人捜しをはじめるのだ。それでは一体誰が犯人なのだろうか。そして小宮山が行き着いた結論は、余りにも恐ろしい結論であった…。

 だが結局のところ犯人は想像だけの存在であり、含みを残しながらも曖昧なまま終劇となってしまう。どうもこれらのストーリー形式は、英国のミステリー作家アントニイ・バークリーが1929年に著した『毒入りチョコレート事件』を参考にしたようだ。
 結局本作は犯人捜しのミステリーを装いながら、被害者山浦美津子の多面性をじっくりと描くことが主眼だったのだろうか。彼女は生徒たちの視点からは、はつらつとして子供たちの立場で考えてくれる信頼できる存在だが、恋敵の同僚の視点は自由奔放で身勝手な女に映っている。
 また元恋人にとっては、女王様のような我儘な存在なのだが、忘れられない魅力的な存在でもあった。ところが年長の不倫相手には、孤独な女性に映ったようである。

 その不倫相手の小宮山から見た美津子については、次のような記述がある。
 美津子は私が思っているような女性ではなかった。堅すぎず、かといって軽薄にはならず、適度に抑制があり、適度に奔放だった。
 美津子のお喋りは、手綱を解き放たれた駿馬のようにあちこちに飛んだ。音楽や絵画鑑賞など趣味の話かと思えば、若い女性らしくファッションや食事の話になる。そしてそこから派生していきなり哲学を論じたかと思えば、なぜか医学用語にも精通していたりする。私にとってそれは、目まぐるしく姿を変える万華鏡か、あるいは様々な光を乱舞させるプリズムのようだった。話をすればするほど、私の目に彼女は謎めいて映じた。

 これでタイトルの『プリズム』の意味が理解できたはずである。とにかくこうした異色作品も読めるのだから、ミステリーの奥深さをつくづく感じてしまった。

評:蔵研人

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2021年2月17日 (水)

バレンタインデー

★★★☆
製作:2010年 米国 上映時間:117分 監督:ゲイリー・マーシャル

 バレンタインデーと言えば、女の子が好きな男の子にチョコレートを贈る日ということになっているが、それは日本だけの話で神戸のチョコレート屋の戦略が大当たりして、いまだに習慣として残っている嘘の伝統である。
 正式には聖バレンタインデー(セイントバレンタインデー)と言い、毎年2月14日に世界各地で「恋人たちの日」として祝われており、恋人や夫婦がお互いの愛を確かめ合う日なのである。そして男性から女性にバラの花束などをプレゼントする。だから日本を除いた世界中の花屋が、一年中で一番忙しい日と言えるかもしれない。

 本作は数カップルの恋の行方を描いたオムニバス風味の群像劇で、登場人物も多彩であり、かなり豪華なキャスティングで構成されている。なんとなく『ラブアクチュアリー』と似ているよね。また米国のラブコメなので完全ハッピーエンド仕立てだから、安心して最後までゆったりと楽しめる作品である。まさにバレンタインデーに彼女と一緒に観るのは如何かな・・・。ここで細かいあらすじを書いても無意味。とにかく観てのお楽しみである。
 

評:蔵研人

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2021年2月14日 (日)

こどもしょくどう

著者:ひろはたえりこ

 映画『こどもしょくどう』の完全ノベライズである。
 車の中で寝泊まりし、行方不明の親を待ち続ける少女姉妹たち。そんな二人に、おずおずと手を差し伸べる少年。豊かに見える日本社会のひずみを受け、満足に食事をとることのできない子どもたちもいるのである。

 大きな文字でかつ138頁の児童向け書籍なので、遅読の私でも1時間足らずで読破してしまった。映画のほうは観ていないが、近いうちに是非レンタルしてみたい。

評:蔵研人

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2021年2月10日 (水)

天気の子

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:114分 監督:新海誠

 2016年に大ヒットしたアニメ『君の名は。』に続く新海誠監督による劇場用アニメであり、興行収入も『君の名は。』同様100億円の大台を突破している。映像も前作同様CGを駆使した超精密かつ美麗な背景と「アルプスの少女ハイジ」のような線の細い二次元アニメとの組み合わせだ。

 ストーリーのほうも、やはり前作同様荒唐無稽なマンガチックな展開なのだが、『天気を左右できる少女』という魔女めいたアイデアはなかなか斬新である。ただ少女がその能力を得た原因が「死ぬ間際の母と、もう一度晴天の空の下を歩きたいと願った」ことだというのが、余り説得力がなさ過ぎるよね。また少女たちが「空を飛ぶ」のや、3年間も雨が降り続いているのもやり過ぎのような気がする。さらに警察がだらしなさ過ぎるのもなんだかなぁ・・・。まあマンガだからと言えばそれまでだけどね。

 決してつまらない作品ではないし、それなりに面白く鑑賞したのだが、今ひとつ心に響くものが見つからなかった。また終盤にどんでん返しもなく、あっさり予定調和というのも工夫が無さ過ぎる。やはり前作の『君の名は。』には遠く及ばなかったな・・・。

作:蔵研人

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2021年2月 7日 (日)

飛ぶ夢をしばらく見ない

著者:山田太一

 奇妙なタイトルだが、「空を飛ぶ夢」というのは、青春真っ最中と言うことで、男女二人で飛ぶ場合は恋愛かつセックスの比喩だというらしい。ということで、本書の中身もエロチックで奇妙な展開が続くのだろう。

 田浦が初めて病院で逢ったときの睦子は67歳の老女だったのだが、なんと退院後は逢うたびに若返ってゆく。2度目に逢ったときは40代の女盛り、3度目は20代半ばの美女、4度目は悪戯っぽい18歳位の少女、そして最後は5歳の幼女として田浦の前に現れるのである。
 まさに女性版『ベンジャミンバトン』なのだが、本作の方が先に発表されているのでパクリではない。ただ『ベンジャミンバトン』の下敷きになったのが、1922年に書かれたF・スコット・フィッツジェラルドによる短編小説なので、そちらを参考にしたかどうかは著者に聞かないと分からない。

 36年前の作品なのだが、全く色褪せていない。本作の主人公田浦修司は、建設会社の営業部次長で妻子のある働き盛りの男性である。ただどうした弾みで精神を病んだのかは説明されていないが、寿司屋の二階から飛び降りて骨折して入院する。そしてそこで自殺未遂で骨折した睦子という謎の女と遭遇するのであるが、エロチックでかつ謎めいた序段はなかなか秀逸であった。

 本作は時間を逆行して生きる女性がヒロインなので、ある種のタイムトラベルファンタジーとも考えられるのだが、かなりきわどい性描写が多いのでエロ小説の趣も備えている。またある意味で、異常世界と精神異常と狂気の漂う純文学と言えなくもないし、当時50歳だった著者の「初老人の恋愛願望」かもしれない。
 いずれにせよ、最初から最後まで目の離せない興味深い小説であることは間違いないだろう。ただ拳銃を携えて映画館で強盗事件を起こす下りは、全く必然性もなく馴染めなかった。またラストも予想の範囲内で、特に目を見張る展開がなかったのも味気なかったね。
 さて余談であるが、本作は1990年に細川俊之、石田えり主演で映画化されているようなので、機会があればそちらも鑑賞してみたいものである。

評:蔵研人

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2021年2月 3日 (水)

記憶屋 あなたを忘れない

★★★
製作:2020年 日本 上映時間:105分 監督:平川雄一朗

 原作はロンドン生まれの織守きょうやの小説『記憶屋』で、すでにシリーズで50万部以上を突破しているという。またその『記憶屋』は2015年に第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しているので、全然怖くないのだが一応ジャンルとしてはホラーということになるのだろうか。

 主人公の大学生・吉森遼一(山田涼介)は恋人・澤田杏子にプロポーズするのだが、その翌日から急に連絡が取れなくなってしまう。数日後に駅で彼女を見かけて声をかけるのだが、彼女は遼一のことを全く覚えていなかった。その後遼一は、都市伝説になっている記憶を消せる「記憶屋」の存在を知る。そして幼馴染の河合真希(芳根京子)や先輩の高原智秋(佐々木蔵之介)らと一緒に、なぜ杏子が記憶を失ってしまったのかを追跡調査することになる。

 そんなくだりでストーリーがはじまり、過去のフラッシュバックシーンを交えながら、こつこつと地味な調査が始まるのである。原作を読んでいないので小説との比較はできないのだが、映画のほうはいまひとつパッとしなかった。記憶を消すシーンもないし、記憶を消されるのは性被害に遭った女性ばかりで深みがない、また先輩の弁護士が本件にばかり関わっていて暇すぎるのも現実離れしている。結局は記憶屋の正体解明だけに焦点が絞られるのだが、途中でなんとなく分かってしまうし、記憶屋になった理由がかなり陳腐なので共感を得られない。

 とにかくこうしたファンタジック系あるいはSF系の作品は、もともとの設定が荒唐無稽なので、それをいかに現実的に見せるかが勝負なのである。ところが本作にはストーリー展開にも映像的にも、ほとんどその努力が込められていないのだ。そのあたりの配慮がなさ過ぎるので駄作とまでは言わないが、観ても観なくてもどちらでもよい程度の映画で終わっているのが残念である。


評:蔵研人

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