存在のない子供たち
★★★★☆
製作:2018年 仏・レバノン 上映時間:125分 監督:ナディーン・ラバキー
貧困のレバノンにて、子供が両親を告訴するという、中東の社会問題に真っ向から斬り込んだもの凄い映画である。そして当然の如く、第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされている。
12歳の長男ゼインは、レバノンの貧民窟で大勢の家族たちと同居しており、一家の貴重な労働力でもあった。ところが一つ下の妹が初潮を迎えたため、無理矢理人身売買のような形で結婚させられてしまう。それに怒り狂ったゼインは、家出して職を探そうとするのだが、身分証明書がないため仕事にありつけない。
そんな折りに、たまたま遊園地で清掃員をしていた黒人女性のラヒルと知り合う。彼女はエチオピアからの密航難民で、偽名で不法就労しながら、生後間もない男子ヨハスを一人で育てていた。彼女は生活費と、エチオピアの親への送金、さらには新たな滞在証明書を偽造する費用を稼ぐために必死に働く必要があった。
行き処のないゼインは、そんな貧しいラヒルが住むバラック小屋に同居し、幼いヨナスの世話をすることになる。そして暫くは今まで味わったことのなかった平穏な日々を送り続けるのだが、ある日出かけたラヒルがいつまで経っても帰宅しないのだ。翌日もまたその翌日も彼女は帰ってこない。ヨチヨチ歩きのヨナスを抱えて困惑するゼインは、一体どうすればよいのだろうか…。
本作は実話を再構成した作品なのだという。しかも出演者の大半は、演技経験もなく、なおかつ演じる役柄も自分自身と似た境遇を持った、いわゆるストリートキャスティングで選ばれた人物ばかりだというのだ。
それにしても子供たちの演技力が真に迫っていると感じたのだが、ゼインを演じた少年と妹役の少女は、実際にシリアからレバノンに大量に流れ込んできた難民であり、2人とも役柄同様に日銭を稼ぐ仕事をしていたという。さらにヨナス役の幼児に至っては、本作撮影中に実の両親が不法入国の疑いで逮捕されたというから、子供たちは日常をそのまま演じていたのだろう。
多分レバノンだけではなく、他の中東諸国やアフリカ、東南アジアや南米などにも、本作同様の恵まれない子供たちが大勢存在している可能性がある。こうした作品を観る都度、いかに我々が平和で幸福であるのかを認識せざるを得ない。…だがどうしてそんなに貧しい中で、バスの中や病院など四六時中煙草を燻らせているのか、それだけは不思議でたまらないのだ。
評:蔵研人
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