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2020年12月12日 (土)

時をめぐる少女

著者:天沢夏月

 本作は筒井康隆の『時をかける少女』とは、全く異なる話であり、そのオマージュでもない。ただあるとき時間の流れの中をさ迷ったことのある女性の日記帳のようなものである。

 本作は次の4つの章で構成されている。
1. 9歳(小学生)の私
2.13歳(中学生)の私
3.21歳(大学生)の私
4.28歳(社会人)の私

 9歳の時、近所の公園で、銀杏並木の奥にある「とけいじかけのプロムナード」という広場を見つける。そこで時計回りに歩くと未来に行き、逆に回ると過去に行くという。でもそれはいつでも誰でも経験できることではなく、私も通算4回しか経験がない。

 小学生の時は父と離婚して、転勤による引っ越しを繰り返す母との確執に悩む。また中学生の時は、転校生同士の葛藤により生涯の親友となった新田杏奈との交友を描く。
 大学生になると、上手くゆかない就職活動に悩み、恋人となる月島洸との出会いと戸惑いが描かれる。そして社会人となって、やっと落ち着いたかと思ったら、月島洸からの結婚申し込みによって、再び少女時代のような憂鬱が襲いかかって来るのだった。

 本作は一見タイムループ的な作品であるが、9歳と28歳の時に2度ずつ少しだけ時間の流れの中をさ迷っただけであり、本質は主人公の悩みと成長に主眼が置かれているのだ。従ってSFでもファンタジー作品でもなく、若い女性の手記を脚色するための道具立てとして、時をめぐるというメルヘン的なシーンを盛り込んだに過ぎない。

 まあ同年代の女性たちにはそこそこ受けるかもしれないが、少なくとも我々おじさんたちは、全く共感が湧かないであろう。ただ読み易かったので、それほど苦痛ではなかったのが救いであった。

評:蔵研人

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