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2020年12月の記事

2020年12月31日 (木)

時間エージェント

著者:小松左京

 私が読んだのはポプラ文庫の『小松左京セレクション2』に収録されたもので、タイトルの作品以外に四次元トイレ、辺境の寝床、米金闘争、なまぬるい国へやって来たスパイ、売主婦禁止法、愛の空間の6作も併録されていた。
 『時間エージェント』は時間管理局の取締り話を面白おかしく描いた連作で、全8話構成で約220頁を占めている。また本収録7作品の中では、唯一のタイムトラベル小説だった。

 本作が書かれたのは1965年だし、発表誌が平凡パンチということを考えると仕方がないのだが、読みやすいのは良いのだが、バカバカしくて単調で底が浅い小説だったのは期待外れであった。小説より漫画のような作品なのだが、なんと1979年にあのルパン三世のモンキー・パンチによって漫画化されているではないか。この漫画は未読だが、表紙を見る限りエロっぽさも含めてピッタシカンカンかもしれないね。

 さて本書に収録されている『時間エージェント』以外の6作の短編についても、すべてが軽くてエロっぽいドタバタ作品で占められており、アイデアとしては面白いのだが、私が期待しているものではなかったのが残念であった。

評:蔵研人

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2020年12月29日 (火)

ドラゴン・ハート 明日への希望

★★★
製作:2020年 米国 上映時間:97分 監督:イヴァン・シルヴェストリニ

 本作は、ショーン・コネリーがドラゴンの声を引き受けたことで大ヒットした第1作から数えて、シリーズ5作目にあたる。私自身は第1作は観たものの、2作~4作までは未だ鑑賞していない。最初本作も余り興味が湧かなかったのだが、ほかに観たい作品が見当たらなかったため、なんとなくレンタルしてしまった。

 ストーリーはRPG仕立てで、両親を惨殺されて家を焼かれた少年が復讐の旅に出て、ドラゴンの助けを借りて悪人たちを次々に退治してゆくというお話である。このスローガンに惹かれてしまったのだが、少年が少しずつ成長するわけでもなく、いつもドラゴンに助けてもらうばかり。ストーリー自体も単純な勧善懲悪仕様で、まさに小学生向けのファンタジーなのだ。

 少なくともドラゴンのCGだけは立派なのだが、それ以外の何物でもない。また次回作が製作されたとしても、もうお腹一杯で遠慮したくなるね。

評:蔵研人

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2020年12月27日 (日)

時間は存在しない

著者:カルロ・ロヴェッリ 翻訳:冨永星

 下記のような丁寧な構成になっていて、読み易いのだが、読めば読むほど難解になってきて、ほぼギブアップ状況のまま無理矢理完読してしまったかもしれない。

もっとも大きな謎、それはおそらく時間
第一部 時間の崩壊
 第1章 所変われば時間も変わる
 第2章 時間には方向がない
 第3章 「現在」の終わり
 第4章 時間と事物は切り離せない
 第5章 時間の最小単位
第二部 時間のない世界
 第6章 この世界は、物ではなく出来事でできている
 第7章 語法がうまく合っていない
 第8章 関係としての力学
第三部 時間の源へ
 第9章 時とは無知なり
 第10章 視点
 第11章 特殊性から生じるもの
 第12章 マドレーヌの香り
 第13章 時の起源
眠りの姉
日本語版解説
訳者あとがき
原注

 著者はイタリア生まれの理論物理学者で、現在はフランスのエクス=マルセイユ大学の理論物理学研究室で量子重力理論の研究チームを率いている。
 本書では、「時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもない」という驚くべき考察を展開している。だがそれにもかかわらず、私たちが時間が存在するように感じるのはなぜなのか。
 その答えを物理学ではなく、哲学や脳科学などの知見を援用しながら論じているところがユニークである。だがその辺りが本書を難解にしている源なのかもしれない。

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2020年12月23日 (水)

スーパーティーチャー 熱血格闘

★★★☆

製作:2018年 香港 上映時間:101分 監督:カム・カーワイ

 あの「イップ・マン」を演じたドニー・イェンが製作と主演を務めたアクションコメディー。ある日風来坊の熱血教師が、問題児の多い学校に赴任して、問題児たちを更生させるという、使い古されたパターンの学園ドラマである。
 この教師チャン・ハップこそ、かつて問題児でこの学校を退学し、米国に渡り海兵隊になった過去を背負っていたのだ。そしてプロの格闘チャンピオンと互角に渡り合うのである。

 それにしても、60歳近くなったというのに、ドニー・イェンのアクションが素晴らしい。「イップ・マン」のときはカンフーだけだったが、今回は総合格闘技も含めたまさに喧嘩アクションで大暴れなのだからびっくりしてしまった。それに加えて生徒愛に満ちた教育方法も見事だ。まさにスーパーティーチャーそのものである。いずれにせよドニー・イェンあってこその映画と言えるだろう。


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2020年12月21日 (月)

トキオカシ

著者:萩原麻里

 富士見ミステリーのライトノベルである。タイムトラベルものということで購入したのだが、どうも著者の作風と波長が合わないようだ。駄作とまでは言わないが、こんな軽い小説をなかなか消化できず、かなりまごまごしてしまった。そして昨日やっと読み終わったのだが、特に感動もなければ充実感も湧いてこない。

 序盤は学園ラブストーリー風の展開だったのだが、中盤に明治時代にタイムスリップしたあたりから、急におどろおどろしい雰囲気に包まれて萬葉集まで飛び出してくる。さて「時置師」と書いてトキオカシと読むそうだが、彼等一族は永遠に若返りが止まらないため、他人の記憶を食らうことによって、一時的に若返りを阻止して現状を保持しているという。

 トキオカシたちの目的は何なのか、そしてどんな活躍をするのだろうか。と目を皿のように読み進めたのだが、トキオカシの超人的能力は何も発動されないし、主人公は相変わらず弱々しくて、誰の力にもなれないのだ。
 また登場人物や舞台などもかなり限定的で、スケール感も乏しくストーリーも単調である。そして退屈感ばかりが充満してのめり込めないまま、いつのまにか終劇となってしまったのである。なんだこりゃあ!。


 せめてタイムスリップしてきた意味くらいは解明されてもよいのだが、思わせぶりな説明はあるのだが、なにかスッキリとしない。かなり中途半端な気分のまま、本書を閉じることになってしまったのである。
 さてよくよく調べてみると、本作にはまだ続編があるようなのだ。その続編は「カタリ・カタリ トキオカシ(2)」なのだが、もう読む気はしないな…。

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2020年12月19日 (土)

ハスラーズ

★★★

製作:2019年 米国 上映時間:110分 監督:ローリーン・スカファリア

 本作は実話をもとにしたクライム映画で、アカデミー賞にはノミネートされなかったものの、サテライト賞映画部門助演女優賞を受賞し、ゴールデングローブ賞助演女優賞にもノミネートされている。またストリッパーたちの集団詐欺を描いた作品ということもあり、美女たちのヌードにも期待して本作を観た人たちも多いかもしれない。

 だが結論からぶちまけると、主要キャストのヌード場面は皆無だし、ドキュメンタリー風の展開が退屈でたまらなかった。それで途中から早送りして観たのだが、いつまで経っても終わらない。こんな映画なら90分以内で十分だった。だからアカデミー賞にノミネートされなかった理由がなんとなく分かったような気がした。

 もしかすると、実話に拘り過ぎたためにストーリーを犠牲にしてしまったのかもしれない。少なくとも女同士の友情や男性たちとの関係に、もっと心理描写を取り入れても良かったよね。ただ淡々と犯罪の成り行きを繰り返すだけでは、ドラマとしては失格である。

 そんな中で数少ない見所は、50歳を超えたジェニファー・ロペスの見事な肢体と演技力ぐらいかな。それにしても犯罪・暴力・銃社会・貧富の格差・そして戦争へと連なって行く米国病は果てしなく続くのだろうか。


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2020年12月17日 (木)

ブルースカイ

著者:桜庭一樹

 本作は第1部から第3部までの3つの時代の話に分割されている。第1部の舞台が1627年のドイツ・ケルン、第2部が2022年のシンガポール・セントーサ島そして第3部が2007年の日本・鹿児島市である。
 またタイトルの意味するところは何だろうと考えていたのだが、実はこの場所も時代も異なる3つのストーリー全てに登場する少女の名前だった。彼女の名前は「青井ソラ」まるで駄洒落のようなタイトルだったのである。

 魔女狩りを扱った第1部はそれなりに面白かった。だが第2部と3部は全く面白くないし、何のためにリンクさせたのだろうか。確かにある少女のタイムトラベルを繋げるためには必要だったのかもしれないが、それぞれの話には全く関連性がないし必然性もない。ただ一番退屈だったのだが、著者の主眼としては、現代を描いた第3部にあるような気がしてならない。

 アイデア的には決して悪くはないのだが、その世界観はほとんど理解不能だ。正直こんなものを読まされて、不愉快だけが残ってしまった。それにしても一部のネットでは、かなり好意的な評価が目白押しだったのには驚いたのだが、ついてゆけない自分が情けないのだろうか…。

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2020年12月14日 (月)

アルティメット・ソルジャー

★★☆

製作:2020年 米国 上映時間:92分 監督:ダニエル・ジリーリ
 
 戦死寸前の兵士が、極秘プロジェクトのナノテクよって不死の戦士として蘇るのだが、なぜか目覚めると急に暴走し始めるのだった。この兵士と戦ってあえなく瀕死の重傷を負った凄腕ボディガードも、ナノテクによって不死のボディガードとして変身する。そして誰も手を付けられない不死の二人によるバトルゲームが始まるのである。

 こう記すと、なかなか見応えのあるバトルアクションムービーを期待してしまうのだが、ワクワクするのはこのあたりまでだった。戦士のほうはタイの町中で他人の食べ物を取り上げ、警官の拳銃を奪うだけ。そしてもう一方のボディガードは、離婚を迫るタイの美人妻とヨリを戻そうとシャカリキになるだけ状態なのだ。

 結局見所は、終盤にやっと対決する二人のプロレスまがいの格闘だけなのだが、それもなんとなく色褪せた感がある。米国映画でなぜ舞台がタイなのかは不明なのだが、いずれにせよかなりの低予算映画であることは間違いない。まあ100円レンタルで、退屈凌ぎに寝転んで観る程度の作品と言っては失礼なのだろうか…。


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2020年12月12日 (土)

時をめぐる少女

著者:天沢夏月

 本作は筒井康隆の『時をかける少女』とは、全く異なる話であり、そのオマージュでもない。ただあるとき時間の流れの中をさ迷ったことのある女性の日記帳のようなものである。

 本作は次の4つの章で構成されている。
1. 9歳(小学生)の私
2.13歳(中学生)の私
3.21歳(大学生)の私
4.28歳(社会人)の私

 9歳の時、近所の公園で、銀杏並木の奥にある「とけいじかけのプロムナード」という広場を見つける。そこで時計回りに歩くと未来に行き、逆に回ると過去に行くという。でもそれはいつでも誰でも経験できることではなく、私も通算4回しか経験がない。

 小学生の時は父と離婚して、転勤による引っ越しを繰り返す母との確執に悩む。また中学生の時は、転校生同士の葛藤により生涯の親友となった新田杏奈との交友を描く。
 大学生になると、上手くゆかない就職活動に悩み、恋人となる月島洸との出会いと戸惑いが描かれる。そして社会人となって、やっと落ち着いたかと思ったら、月島洸からの結婚申し込みによって、再び少女時代のような憂鬱が襲いかかって来るのだった。

 本作は一見タイムループ的な作品であるが、9歳と28歳の時に2度ずつ少しだけ時間の流れの中をさ迷っただけであり、本質は主人公の悩みと成長に主眼が置かれているのだ。従ってSFでもファンタジー作品でもなく、若い女性の手記を脚色するための道具立てとして、時をめぐるというメルヘン的なシーンを盛り込んだに過ぎない。

 まあ同年代の女性たちにはそこそこ受けるかもしれないが、少なくとも我々おじさんたちは、全く共感が湧かないであろう。ただ読み易かったので、それほど苦痛ではなかったのが救いであった。

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2020年12月10日 (木)

家族を想うとき

★★★☆

製作:2019年 英・仏・ベルギー 上映時間:100分 監督:ケン・ローチ
 
 出演者のほとんどが素人だというのだが、それにしてはなかなかの芸達者揃いだ。ことに嫌われ上司役は警察官だというのだが、本当かな…。
 さて本作は短気で失業中だった父親リッキーが、フランチャイズの宅配ドライバーとしての面接を受けるところから始まるのだが…。実は母親のアビーがパートタイムの介護福祉士として、患者の家々を飛び回っているため、小学生の娘は淋しい想いを募らせてゆき、高校生の息子は反抗的な態度が続いているのだ。
 
 やっと働き始めて、家を建てることに猪突猛進しているリッキーだが、週6日で14時間勤務。それもトイレにいく間もないほどの激務に追いまくられている。また妻も何軒も掛け持ちの介護士で二人とも帰宅が遅く、クタクタに疲れ切っている。だが多額の借金も残っており、必死で共働きしても生活は良くならず、家族はバラバラらなるばかりなのだ。
 
 娘は素直で可愛いのだが、息子のほうは休学になったり万引きで逮捕されたり、家出したりとなかなか手に負えない。そして宅配の仕事も、なかなかままならない。…と最初から最後まで辛い状況が続くのだが、自家用バンで家族全員で患者の家に行くシーンだけは、一筋の光が刺したように感じた。

 本作では、母親と娘には好感が持てるのだが、父親と息子に多くの問題があるようだ。なにせ彼等は他人のことを考えず、自己主張ばかりが強過ぎる。そもそも初めてチャレンジする宅配事業のため、金もないのに新車のバンを無理矢理購入したときから、この家族の不幸は始まったのではないだろうか。娘がバンのキーを隠した気持ちが痛いほど分かった。
 そして尻切れトンボのような形で締めくくったラストシーンについては、仕事に出かけるのか、生命保険をあてにして事故死に向かったのか、観る人々にその解釈を委ねたのだろうか。


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2020年12月 8日 (火)

僕たちの戦争

著者:萩原浩

 現代に生きる根拠なしでポジティブなフリーター尾島健太と、昭和19年に「海の若鷲」に憧れる軍国青年の石庭吾一が、時空を超えて入れ替わってしまうという話である。そしてなんと彼ら二人は、顔や体格だけではなく、基本的な性格や趣向もそっくりなのだ。だからそれぞれの世界では、誰も彼等をその時代の彼等としてしか認めない。ただ時代背景が異なるため、心情は全く正反対だったのだが、なんとかそれぞれの境遇に順応しつつ、元の世界に戻る方法を模索するのだった。

 単なるタイムスリップものではなく、瓜二つの人物がそれぞれ別の時代に跳んで入れ替わってしまう、というアイデアが素晴らしい。そして彼等がそれぞれの時代を受け入れるまでの心理状況と行動の描写が実に面白いのだ。
 ことに過去から現代に来た吾一が見た「現代人や現代社会の異様さ」には、かなり共感してしまう自分も、年寄になったものだと実感してしまった。また吾一が少しずつ現代社会に慣れたのと同様、自分も知らぬ間に慣らされてしまったのだろう。

 さて本作は、現代と戦時中を交互に描いたタイムトラベルものなのだが、SFという臭いは全くしないのだ。どちらかと言えば戦争と現代社会に批判と警鐘を鳴らしながら、二人の青年の成長と恋を描いた青春小説なのだと考えたい。
 またぼやかしたようなラストは、読者の想像に委ねるという方法で収めているのだが、これには賛否両論があるかもしれない。もしタイムトラベル小説なら、それぞれが元の時代に戻ったあと、現代で過去の人たちとのめぐり逢いなどを絡めて締めくくるのが定番であろう。だが本作ではより文学的な締めくくりを選んでいるところが、青春小説たる所以なのかもしれないね…。
 
 さらによく調べてみたら、2006年9月にTBS系のテレビドラマとして放映されているようである。主なキャストは、森山未來、上野樹里、玉山鉄二、内山理名、樹木希林などだと言う。是非DVDなどを探し出して観てみたいものである。

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2020年12月 6日 (日)

存在のない子供たち

★★★★☆

製作:2018年 仏・レバノン 上映時間:125分 監督:ナディーン・ラバキー

 貧困のレバノンにて、子供が両親を告訴するという、中東の社会問題に真っ向から斬り込んだもの凄い映画である。そして当然の如く、第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされている。

 12歳の長男ゼインは、レバノンの貧民窟で大勢の家族たちと同居しており、一家の貴重な労働力でもあった。ところが一つ下の妹が初潮を迎えたため、無理矢理人身売買のような形で結婚させられてしまう。それに怒り狂ったゼインは、家出して職を探そうとするのだが、身分証明書がないため仕事にありつけない。
 
 そんな折りに、たまたま遊園地で清掃員をしていた黒人女性のラヒルと知り合う。彼女はエチオピアからの密航難民で、偽名で不法就労しながら、生後間もない男子ヨハスを一人で育てていた。彼女は生活費と、エチオピアの親への送金、さらには新たな滞在証明書を偽造する費用を稼ぐために必死に働く必要があった。

 行き処のないゼインは、そんな貧しいラヒルが住むバラック小屋に同居し、幼いヨナスの世話をすることになる。そして暫くは今まで味わったことのなかった平穏な日々を送り続けるのだが、ある日出かけたラヒルがいつまで経っても帰宅しないのだ。翌日もまたその翌日も彼女は帰ってこない。ヨチヨチ歩きのヨナスを抱えて困惑するゼインは、一体どうすればよいのだろうか…。

 本作は実話を再構成した作品なのだという。しかも出演者の大半は、演技経験もなく、なおかつ演じる役柄も自分自身と似た境遇を持った、いわゆるストリートキャスティングで選ばれた人物ばかりだというのだ。
 それにしても子供たちの演技力が真に迫っていると感じたのだが、ゼインを演じた少年と妹役の少女は、実際にシリアからレバノンに大量に流れ込んできた難民であり、2人とも役柄同様に日銭を稼ぐ仕事をしていたという。さらにヨナス役の幼児に至っては、本作撮影中に実の両親が不法入国の疑いで逮捕されたというから、子供たちは日常をそのまま演じていたのだろう。

 多分レバノンだけではなく、他の中東諸国やアフリカ、東南アジアや南米などにも、本作同様の恵まれない子供たちが大勢存在している可能性がある。こうした作品を観る都度、いかに我々が平和で幸福であるのかを認識せざるを得ない。…だがどうしてそんなに貧しい中で、バスの中や病院など四六時中煙草を燻らせているのか、それだけは不思議でたまらないのだ。
 

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2020年12月 4日 (金)

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

著者:廣嶋 玲子

 ときどき思い出したように町の路地裏に佇む奇妙な駄菓子屋さん。そこで店番をしているのは、和服を着てどっしりとしたお相撲さんのようなおばさんである。真っ赤な口紅を塗りたくり、色とりどりの大きなガラス玉のかんざしを何本もさしている派手な彼女は「紅子」という名で、古いお金を集めているようである。

 また店に置いてあるものは、「猫目アメ」、「骨まで愛して・骨形カルシウムラムネ」、「闇のカクテルジュース」、「妖怪ガムガム」、「ぶるぶる幽霊ゼリー」などなど、見たこともない摩訶不思議なお菓子ばかりである。そしてこれらを食べることによって、魔法のような不思議な現象が起こるのである。

 本書では「型ぬき人魚グミ」、「猛獣ビスケット」、「ホーンテッドアイス」、「釣り鯛焼き」、「カリスマボンボン」、「クッキングツリー」、「閉店」の七短編が掲載されているが、読み易くて面白いので遅読の私でさえ1時間程度で読破してしまった。
 好評につき、現在13巻まで出版され、アニメ映画化されたようである。なかなか面白い小説だが、なんとなく藤子不二雄の『笑うセールスマン』を思い出してしまうのは私だけではないだろう。

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2020年12月 1日 (火)

ハッピー・デス・デイ 2U

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:100分 監督:クリストファー・ランドン
 
 前作『ハッピー・デス・デイ』の完全続編である。だが前作の説明は一切ないため、これを初めて見た人はかなり戸惑うはずである。また前作は、タイムループホラーという珍しいジャンルだったのだが、本作はSF色とコメディ色が強くなり、タイムループよりもパラレルワールド風味に染まっている。それにホラー要素はかなり薄められているので、なにか物足りないのだ。

 そしてタイムループの原因は、理工学部で学ぶライアンたちが開発した量子冷却装置(SISSY)だというのだが、なんとなく無理矢理こじつけた感があり余り共感できない。またこの装置を再起動するための方程式を、ヒロインがタイムループを繰り返して解析するくだりもよく理解出来なかった。

 ヒロイン役の必死の演技には脱帽するが、本作が前作より評価が高いのは不思議でならない。やはり今どきの若者たちには、お笑いが必須なのであろうか…。また更なる続編3の製作が噂されているのだが、本作と同じようなパターンなら、もう観たいとは思わない。

 
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