自転車泥棒
★★★★
製作:1948年 イタリア 上映時間:88分 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
第2次大戦の敗戦国イタリアが、どれほど貧しかったかを簡潔に描いた名作である。職安前はもの凄い人だかりだ。とにかく職がないのである。そんな中で運よく役所の仕事にありつけたアントニオ。
ところがその仕事は自転車に乗って、壁に映画のポスターを張り付けて回る作業で、自転車がないと職に就けない。少し前に自転車を質草に出してしまったアントニオは、妻と一緒に家中のシーツを剥がして質屋に向かう。その質屋にも大勢の人が集まって大行列だ。やっと新しい質草を提出して、なんとか自転車を請け出すアントニオと妻の顔には久々に笑顔が戻る。
これでやっと人並みの生活が送れる。…とほくそ笑んだのも、ほんの束の間であった。アントニオが夢中でポスターを張っていると、ふとした隙にあっという間に自転車が盗まれてしまうのだ。すぐに気が付き追いかけるのだが、自転車のスピードには追い付かず、見失ってしまうのだった。
すぐ警察に届けるのだが、本気で相手にしてもらえず、挙句の果ては「警察は忙しいので自分で探せ」と言われる始末。そしてアントニオと息子ブルーノによる自転車泥棒探しが始まるのである。
妻と6歳の息子と乳飲み子を抱えるアントニオ。しかし家族を支えたくとも職がない。やっと職を見つけた思ったら、今度は自転車を盗まれてしまう。自転車自体の価値というより、自転車がないことで「また失職してしまう恐怖」に怯えるアントニオと家族たち。果たして自転車を取り返せるのだろうか…。
ネタバレになるのでこれ以上語れないのだが、悪いことに不運は連鎖してしまい、どうにもならない悲惨な結末が待っていた。だがなんと息子のお陰で、最悪の状況だけは避けることが出来たアントニオ。
絶望の中でやっと一筋の灯りを見た気もしたのだが、アントニオとブルーノの涙にむせびながらの悲しいエンディングを迎えるのだ。
それにしても頼りないアントニオだが、妻も息子もしっかり者なので、なんとか立ち直れるかもしれない…。そう言い聞かせながら、この悲しい結末に耐えるしかなかった。
モノクロで低予算であるが、現代の映画にも決して引けを取らない。こんな名作が戦後まもなく創られたのだから、さすが嘗ての映画王国イタリアである。
評:蔵研人
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