« 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? | トップページ | 血槍富士 »

2020年10月29日 (木)

光秀の定理

★★★★
著者:垣根涼介

 明智光秀が主人公の歴史小説なのだが、どちらかというと架空の人物である愚息と新九郎の視点で語られるところが多い。愚息とは世の中のしきたりに迎合せず、辻博打で生計を立てている破戒僧の名である。そして彼が信じるのは手垢のついた仏教ではなく、釈迦の直接説法だけだというのだ。

 また若き兵法者である新九郎は、剣の道を志すも金に困り辻斬りに身を落としていた。そんなある日、辻博打をしている愚息と運命的な出会いを果たす。さらに若き日の光秀を辻斬りしようとしたが、新九郎との実力差を認めた光秀が刀を差し出すのを見ていた愚息に光秀の勝ちだと言われてしまう。こんなことが縁となり三人の奇妙な付き合いが始まるのであった。

 このほかにも光秀の妻煕子の聡明さや、光秀が世話になっている細川藤孝のしたたかさ、そして織田信長の残虐さの中に同居する器の大きさなどを分かり易く描いている。それだけならよくある歴史小説との差別化は果たせないのだが、本作では愚息の辻博打で使われている「3つの定理と確率論」が大きく関わってくる。そこが実に興味深いというか、他の歴史小説にはあり得ない構成となっているのだ。

 さらに面白いのが、光秀を描いておきながら、あの『本能寺の変』の描写が一切省略されているのである。ただなぜ光秀が、その暴挙に走ったのかという謎解きだけは、光秀が没した15年後に、愚息と新九郎の酒の肴として語られる。まさにそれが『光秀の定理』であり、まるでミステリー小説の結末を探り当てるように一気にむさぼり読んでしまうだろう。


評:蔵研人

下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓

人気blogランキングへ

人気ブログランキングへ

↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

| |

« 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? | トップページ | 血槍富士 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? | トップページ | 血槍富士 »