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2020年6月の記事

2020年6月29日 (月)

マスカレード・ホテル

★★★☆
製作:2018年 日本 上映時間:133分 監督: 鈴木雅之

 東野圭吾原作のミステリーで、連続殺人事件の新たな現場になるとされたホテルを舞台に、キムタク演じる刑事と長澤まさみが演じるホテルのフロントクラークが犯人を探すという展開である。
 ホテルにはいろいろな客が訪れるが、有名人の不倫やストーカー、嫌がらせ客など様々である。だがホテル側はどんな客でもプライバシーは尊重しなくてはならないし、腹を立ててもいけない。

 そんなホテルでの人間模様やホテルマンとしての心構えなど、まるで蘊蓄映画といった趣きばかりで、いつまで経っても犯人は現れない。そして映像もホテルの中ばかり、従って気の短い観客は、この前半だけを観て席を立ってしまいそうだ。
 だからと言ってラストまで133分我慢していても、さほど面白くなるわけでも感動的なシーンを体感できる訳でもないのだ。しかし駄作と言うわけでもなく、それなりに完成度の高い作品と感じる人もいるだろう。なんだか摩訶不思議な感覚の作品なのである。

 さて犯人の正体にはあっと驚かされたものの、なんだかあれだけの犯行を実行するほどの動機を感じられなかった。またかなり凝り過ぎの感があり、小説ならともかく映像だけでは迷路のような複雑な犯行手法が分かり難い。
 さらにエンディングクレジットが流れる中での「アンコール的ラストシーン」には、賛否両論が渦巻そうでだ。何となく洋画のようでかっこ良いと思う人もあり、気取り過ぎてくどくてアホくさいと感じる人もいるだろう。
 いずれにせよあれだけの豪華俳優を集めたけど、133分は長過ぎたんじゃないの・・・。

評:蔵研人

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2020年6月27日 (土)

アイネクライネナハトムジーク

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:119分 監督:今泉力哉

 人気作家・伊坂幸太郎の小説が原作である。舌を噛みそうな訳の分からない長ったらしいタイトルだ。アイネ・クライネ・ナハトムジークとはモーツァルトの曲で、ドイツ語で「小さな夜の曲」を意味するという。
 本作では仙台駅前でストリートミュージシャンが、ややスローテンポなギター弾き語りで「小さな夜」という曲を歌っている。そしてその場所こそが、主人公とその彼女との出会いの場所になっているという設定なのだ。

 なんとなく、三浦春馬が主人公で多部未華子がヒロインという感がある。だが実は三浦の先輩の原田泰造、友人の矢本悠馬・森絵梨佳夫婦、そのまた友人の貫地谷しほり・成田瑛基夫婦、さらには矢本悠馬の娘を演じた恒松祐里なども準主役と言える群像劇なのである。
 従ってじっくり観ていないと、置いてきぼりにされてしまいそうな作品なのだが、底辺に流れるテーマは共通しているようだ。つまり出逢いとは劇的とか偶然ではなく、どうやら強い絆で結ばれている誰かとは、自然に出逢えるようになっている。・・・ということらしい。

 何となくボーとした感じで、この2時間近い映画を観終わってしまったが、特に新しい発見もなく大きな感動も得られなかった。それにしても、伊坂幸太郎がラブストーリーを書くと、やっぱりこんな感じに仕上がってしまうのかな・・・。いずれにせよ全てがハッピーに締めくくられていて、作者の温かみを実感できた作品であったことは間違いない。ただ要になるボクシングシーンに、全く迫力を感じられなかったのが非常に残念である。
 
評:蔵研人

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2020年6月24日 (水)

僕のワンダフル・ジャーニー

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:109分 監督:ゲイル・マンキューソ

 不安定な環境の中で生まれたCJの成長を見守るため、死後にも、モリー、ビッグドッグ、マックスと生まれ変わって、CJと出会うボスドッグ・ベイリーの犬目線ファンタジー作品である。2016年に製作された『僕のワンダフル・ライフ』の続編とのことだが、そちらはまだ未鑑賞なので、残念だが比較は出来ない。かなり評価が高いようなので、いずれ前作のほうも観てみようと思っている。
 
 犬の演技は素晴らしいし、犬物語としては面白かったのだが、人間のほうの話が今ひとつ盛り上がらなかったのが残念である。とは言ってもまさにアメリカンなハッピーエンドに涙がボロボロ、デニス・クエイドはまさにこうした役柄がピッタリだが、やはり年を取った感は否めない。主演の女の子がもう少し可愛いと良かったのにね・・・。少なくとも犬好きの方には、たまらなく感動的な映画であろう。
 

評:蔵研人

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2020年6月23日 (火)

トラフィッカー 運び屋の女

★★☆

製作:2018年 アイスランド 上映時間:91分 監督:ボクァ・シグソーソン

 珍しいアイスランドの映画で、コカイン密輸を企てる兄弟と運び屋の女の運命を綴るクライム・スリラー作品と言えよう。人間関係については余り深く描かれていないのだが、弁護士の兄、出所したばかりの弟、シングルマザーの運び屋の何れもが、金に窮していることだけは確かのようだ。
 
 コカインの運び方だが、数本の親指大カプセルに詰め込まれたコカインを、運び屋の女が無理矢理飲み込んで飛行機に乗る。そして空港を出たところで弟の車に便乗し、ホテルで用を足して大便と一緒に排出されたカプセルを弟が回収して兄に届けるという流れであった。

 ところがなかなか机上の計画通りに行かないのが現実である。無理に沢山のカプセル飲み込んだせいで、女が飛行機の中で苦しみ始めてしまうのだ。女は機内のトイレで吐いてしまうのだが、その吐瀉物の中に大事なカプセル3本混ざっている。慌てて拾い上げてポケットに入れて席に戻るのだが、到着した空港のトイレでポケットを探っても、カプセルは2本しかみつからない。どうやら1本は機内に落としてしまったらしい。

 女と同じ飛行機には、見張りとオトリ役を兼ねて弟も同乗していたのだが、用心深い兄に「空港を出るまでは絶対に女と接触するな」とくぎを刺されていた。ところが、到着した空港のトイレに入った女が、いつまで経っても出てこないため、兄の忠告を無視してトイレ中に入ってしまうのである。
 これらの行為は全て空港内の監視カメラに記録されており、その後に機内で発見された1本のカプセルとともに重要な証拠物件になってしまうのだった。

 ただ女がホテルのトイレですぐに排便していれば、弟がその中からカプセルを回収し、二人はそのまま別れて事件も未解決のまま終わったはずなのだが、なんと女は頑固な便秘に罹り、下剤を飲んでも3日間排便がない。それどころか増々体調を崩して病院に行きたがるのだが・・・。この状況に弟は中々解放されないし、兄のほうも焦り始める中、今度は敏腕の女麻薬捜査官が動き始めるのであった。

 良し悪しは別としていろいろと引き込まれる映画なのだが、自分が犯人になったようでストレスが溜まってくるし、吐瀉物や大便の不潔感が漂ってくるところが我慢ならない。さらにはもう少しで園子温監督の『冷たい熱帯魚』になりそうで、「それだけはやめてくれ!」と叫び出しそうになってしまった。
 そらにラストは予想外の展開で、かなり胸糞が悪くなるだろう。数人の悪い奴らが登場するものの、ちょっぴり心優しいところが見かけられた。ところが弁護士の兄だけは見かけと正反対の大悪人。これが現実なのかもしれないが、救われなさ過ぎるし実に後味の悪い映画だった。だからこそ、観客たちの評価も良くなかったのだろうか。

評:蔵研人

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2020年6月20日 (土)

少林寺2

★★★☆

製作:1983年 中国、香港 上映時間:102分 監督:チャン・シン・イェン

 あの本格的武術映画『少林寺』の2作目である。監督や主な出演者はほぼ同じなのだが、ストーリー的には前作と全く関連のない独立した話になっている。
 風光明媚で長閑な農村で、川を隔てて男ばかりの少林派の家と、女ばかり生まれる武当派の家が対立していた。ただ少林派の当主と弟は、それぞれ密かに武当派の長女と次女に恋している。だが頑固な武当派当主がなかなか認めてくれない。

 そんな折に近くに潜む山賊たちが、少林派への復讐と武当派の女たちを狙っていた。いがみ合っていた少林派と武当派であったが、共通の敵を倒すために協力することになる。
 単調で突っ込み所の多いストーリーだが、子供たちが楽しいし、牧歌的でほのぼのとした展開の中にも、ハラハラ・ドキドキさせてくれた。またラストの武闘シーンも見せ場が満載であったが、何と言ってもハッピーエンドなのが一番嬉しかった。
 
評:蔵研人

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2020年6月18日 (木)

12人の優しい日本人

★★★☆
製作:1991年 米国 上映時間:116分 監督:中原俊

 脚本が三谷幸喜と東京サンシャインボーイズと言うことで、舞台劇のような創り方になっているだろうと想像していたら、やはりその通りだった。従って舞台は一つだけの会話劇であった。
 タイトルからも連想できるが、陪審員制度をテーマにした米国映画『十二人の怒れる男』の日本版パロディーであり、陪審員として集められた12人の姿をコミカルに描いていた快作と言えよう。

 被告が若くて美しい女性で、被害者の夫が傍若無人な輩だったせいか、会議開始直後ほぼ全員一致で無罪ということになる。ところが全員が帰り始めると、余りにも呆気なかったためか、一人の男が急にもう少し話し合おうと異を唱える。そこからが議論が白熱し始めて、さらには有罪に傾く人が増え始めるのだが・・・。

 登場人物の中で私の知っている俳優は豊川悦司と林美智子だけなのだが、その他の俳優陣もなかなか個性的な演技派揃いである。最初は早く終わらせようとする人、事なかれ主義の人、議論のできない人、感情だけに走る人、空気の読めない人など、陪審員としては全く不適格な集団だった。
 ところが中盤以降は急に論理的に話が展開してゆくところがなかなか面白い。ただワンシーン作品なので、2時間近い上映時間に耐えられない人もいるかもしれないのでご注意。

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2020年6月15日 (月)

MONSTERZ モンスターズ

★★☆
製作:2014年 日本 上映時間:112分 監督:中田秀夫

 韓国映画『超能力者』のリメイク版。相手を見つめるだけで思い通り操作できる男と、それが全く通じない男(主人公)との戦いである。序盤から中盤にかけてはなかなか面白かった。ところが、元々韓国のオリジナルが駄作だったのか、本作の脚本と演出の失敗だったのか、中盤から段々つまらなくなってしまった。と言うより馬鹿々々しくなってしまったのである。

 もしかすると、SF映画なのにホラー映画専門の中田秀夫監督を起用したのが原因かもしれない。SF映画はテーマそのものが荒唐無稽なのだが、だからこそ、科学的かつ論理的で説得力のある創り方をしなくてはならない。ところが本作はこのルールを無視し過ぎたため、漫画未満の突っ込見所満載のヨレヨレ作品になってしまった。まさにある意味、何でもあり反則だらけの安物ホラー映画になってしまったのである。

 まず一番辻褄が合わないのが、相手の目を見て操作するはずなのに、街頭や大劇場などで1000人前後の人々を一瞬に操作で来てしまうことである。そして操作された大量の人々がなかなか覚めないのだが、場合によっては車のライトが光っただけで覚めてしまうという矛盾。
 また警察が無能過ぎるし、目を見てはいけないことを知りながら、無防備で何度も同じ過ち繰り返している。せめて防護マスクを着用するか遠くから狙撃しろよと言いたくなる。また超能力者の手口を熟知しながら、クライマックスで、わざわざ大勢の人々がいる劇場にノコノコやってくる主人公も頭が悪過ぎる。そしてラストの無限螺旋階段は一体何なの?あんなのが劇場にあるはずないし、二人とも死なないのも納得出来るはずがない。

 とにかくこの超能力者は「今まで誰にも気づかれずに生きてきた」と言いながら、超・目立つ行動ばかりしている大矛盾。いずれにせよ、いたずらするたび、とっくの昔に防犯カメラに写っていなければおかしいではないか・・・。とにかく数え上げたらモンスター級の突っ込見所オンパレードなのだ。

 そして本作の決定的な欠陥は、意味のない設定が多過ぎるくせに、超能力者が主人公を執拗につけ狙う展開だけで、そのほかの見せ場が全く何もないことだ。そして二人の戦いでも、いつも周囲の人々が巻き込まれて死亡し、主人公が殺されたと思ったら復活というパターンの連続なのである。これでは誰でも途中で観るのを停止してしまうだろう。せっかく序盤が面白かっただけに、非常に残念で惨憺たる結果であった。

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2020年6月12日 (金)

パリ、嘘つきな恋

★★★★
製作:2018年 フランス 上映時間:107分 監督:フランク・デュボスク

 ひょんなことから車椅子生活者に成りすます羽目になったセレブのプレイボーイと、本当の障害を持った女性との恋の行方を描いたラブコメである。そもそもの始まりは、亡母の住んでいたマンションで、母親の使っていた車椅子に座っているところを、隣室に引っ越してきた女性ジュリーに見られたことが原因となる。

 プレイボーイのジョスランは、障害者のふりをしたままジュリーを口説こうと彼女の実家まで行くのだが、そこで本当の障害者である姉のフロランスを紹介される。彼女は障害者でありながら、バイオリニスト、車椅子テニスの選手として活躍しており、心強く前向きな生活をしている。そんな真摯で美しい生き方を実践している彼女は、今までジョスランが経験したことない女性であった。そして彼はデートを重ねるたびに、本気でフロランスに惹かれていくのであるが、どうしても障害者だと嘘をついていることを謝れないでいた。

 何度も嘘を告白するチャンスがあったのに、いよいよとなるとジョスランは告白できない。そんな軟弱なジョスランに、観客たちのイライラが爆発しそうになるのだが、ある出来事に遭遇して正体をバラす結果となるのだった・・・。
 ジョスランを演じたフランク・デュボスクは、いかにもプレイボーイと言ったチャランポランな感じのする男優なのだが、何となく憎めないのも確かである。だが何と言ってもこの映画では、障害者のフロランスを演じたアレクサンドラ・ラミーの、知的でしっとりとした大人の雰囲気に魅せられてしまった人が多いのではないだろうか。


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2020年6月 9日 (火)

カンフーリーグ

★★☆
製作:2018年 香港 上映時間:102分 監督:ジェフ・ラウ

 漫画家の青年インションが、自分が描いた伝説のカンフー英雄たちを過去から召喚し、身分違いの彼女との恋を成就するという荒唐無稽なお話である。その英雄たちとは、ウォン・フェイホン、イップ・マン、チェン・ジェン、フォ・ユェンジャアの4人で、いずれもカンフーの達人達だ。

 DVDのパッケージを見ると、まるでこの4人が秘術を駆使して戦うリーグ戦なのかと勘違いしてしまったが、実は彼等は仲間であり戦うのではなく、インションの恋敵と戦うだけである。それはそれで良いとしても、余りにもおバカに終始し過ぎて、格闘シーンが少な過ぎたのは期待外れだった。

 本作を手掛けたスタッフたちが、あの『カンフーハッスル』とほぼ同じだと言うので、「やっぱりな」と何となく納得できたものの、残念ながらその迫力や楽しさにおいて遥かに及ばないことを確認しただけであった。少なくとも絶対に「アクションを期待して」レンタルしてはいけないとだけ言っておこう。


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2020年6月 5日 (金)

怒り

★★★☆
製作:2016年 日本 上映時間:141分 監督:李相日

 最近の邦画はマンガの実写版ばかりで、かなり食傷気味だったが、本作は原作が吉田修一の小説であり、久々に奥行きのある名品に仕上がっていた。ただ群像劇で主役が大勢存在し、3つのストーリーがパラレルに進行してゆくため、かなり分かり難い構成になっているところが長所でもあり短所とも言えよう。

 それにしても凄いキャスト陣である。渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、妻夫木聡、広瀬すず、宮崎あおい、と誰をとっても主役級の俳優がズラリと並ぶ。それに加えてピエール瀧、三浦貴大、池脇千鶴、高畑充希、原日出子などの準主役級が脇を固めるという贅沢な映画だ。また第40回日本アカデミー賞では、妻夫木聡が綾野剛と同性愛者を体当たりで演じ、見事最優秀助演男優賞を獲得している。ただアイドル系の広瀬すずに汚れ役をさせたのだけは、ミスキャストかもしれない。

 八王子で起きた凄惨な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、犯人もその動機も不明のまま1年間が経過していた。犯人の名前は山神一也で右頬に3つのほくろが並ぶ、そして彼は髪を切り整形しているということが判明。
 そこから3つのストーリーが並行しながら始まるのだが・・・。それぞれのストーリーには、身元不明で右頬に3つのほくろを持つ怪しい男が3人登場するのだ。果たして犯人はこの中の誰なのだろうか、それとも全く別の登場人物が犯人なのだろうか・・・。

 こんな展開でドキドキわくわくしながら、確実にストーリーが進んでゆく。あえて言えば本作のテーマは「人間の狂気」と、「信じることが真実の愛」ということなのだろうか。
 さて冒頭で本作はかなり分かり難い構成だと記したが、ストーリーを3分割したため、時間の制約を受けて話をはしょったのか、のちに映像を編集し過ぎたことが原因なのだろうか。その最たるものが、山神が刺された後の描写が一切無い点であろう。
 また今どき死んだ親の借金に追われて逃げ回るという話も、心情的にも法的にも無理があるようだ。かなり完成度の高い映画であるが、この2点にモヤモヤ感が残ったこと。さらにまるで夢オチの如く、3つのストーリーが全く交差しなかったところに不満が渦巻いてしまった。

評:蔵研人

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2020年6月 2日 (火)

ジョーカー

★★★★

製作:2019年 米国 上映時間:122分 監督:トッド・フィリップス

 あのバットマンの宿敵ジョーカーが、ある事件をきっかけに精神を病みはじめ、次第に巨悪な存在に変貌してゆくまでを描いている。いわゆるジョーカー誕生秘話なのだ。また本作の中でのバットマンは、ジョーカーと接触するものの、まだ小さな少年として登場しているだけで、戦うというレベルとは程遠いので念のため・・・。
 
 ジョーカーの本名はアーサーと言い、ピエロの大道芸を披露しながら、年老いた母を労わり続けていた。そして母親の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みながら、有名コメディアンを目指し底辺からの脱出を夢見ていたのだが・・・。
 ところがある日、同僚から無理矢理拳銃を押し付けられてから、全ての歯車が狂ってしまうのである。あとは負の連鎖に巻き込まれ、哀しみの果てに、どうにもならない運命を選択してしまうのだった。

 それにしてもあれだけ減量し、ジョーカーの狂気と悲哀を余すところなく演じた「ホアキン・フェニックス」の役者魂には脱帽するばかりだ。さすが本作で、第92回アカデミー賞「主演男優賞」を受賞しただけの価値は認めざるを得ないだろう。
 結局ジョーカーは狂った殺人鬼なのだが、本作ではその狂気に同調するかの如く、貧富の差の激しい米国でのセレブ批判も忘れていない。ということは大金持ちであるウェイン財団のバットマンよりも、大悪人だが貧しさの底辺で蠢くジョーカーのほうに肩入れした作品、と言えるのかもしれない。 

評:蔵研人
 

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