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2020年4月26日 (日)

それだけが、僕の世界

★★★★☆

製作:2018年 韓国 上映時間:120分 監督:チェ・ソンヒョン

 玉石混淆の韓国映画だが、時々心を揺さぶられるような作品に巡り合う時がある。紛れもなく本作も、その宝石の一つに数えても良いだろう。本作は韓国の底辺に生きる人々と、金持ちとの貧富の差を感じながらも、音楽がそれらを全て超越してゆくところが見事だった。

 イ・ビョンホン演じるところのやさぐれボクサー。東洋チャンピオンだった過去はあるものの、試合中に審判に暴行し業界から締め出されてしまった。現在は時々スパーリーング役をこなしたりチラシ配りをしながら、マンガ喫茶をねぐらにしたその日ぐらしに明け暮れている。
 彼ジョハの母親は、彼がまだ少年の頃に父親のDVに耐えられず、彼を残したまま失踪してしまったのだった。そして父親はずっと刑務所暮らし、彼が荒ぶるのも無理がないかもしれない。

 ある日数十年ぶりで、偶然母親と再会し母親の住む家に転がり込むのだが、そこには初めて会う彼の弟ジンテ(パク・ジョンミン)が同居していた。ジンテはサヴァン症候群という病を背負っており、一人では生活できないのだが、天才的なピアノ演奏力を持っていたのである。なんと基礎的な音楽知識は皆無なのだが、一度聞いたピアノ演奏は、譜面も見ずに完璧に演奏してしまうのでだった。

 現在国際スターでハリウッドでも活躍しているイ・ビョンホンだが、こんな汚れ役をよく引き受けたものだし、それをまた見事に演じ切っているところにプロ魂を見た。だがそれよりも何と言っても弟めジンテを演じたパク・ジョンミンの表現力が凄かった。それにたった3か月間の特訓であれだけのピアノ裁きも圧巻の神業だ。
 さらには兄弟の母親を演じたユン・ヨジョンの自然だが、じわーっと来る無理のない老巧な演技力。何と言っても本作は、この三人のアンサンブルが見事に絡み合い、完成度の高い作品に仕上がったのだろう。

評:蔵研人

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