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2020年4月の記事

2020年4月29日 (水)

チャンス商会 ~初恋を探して~

★★★★

製作:2015年 米国 上映時間:111分 監督:カン・ジェギュ

 70歳の老人の最後の恋をテーマにしながら描いたヒューマンドラマ。主役はスーパーで働く頑固で不器用な独身爺さんで、ヒロイン役は向かいに住む69歳のお婆さん。はじめは勝手に爺さんの家に侵入してご飯を炊く婆さんのほうが積極的なのだが、次第に爺さんのほうもこの婆さんに惹かれてゆく。

 そして背広を購入し、慣れないフレンチレストランで初デート。その後ダンス教室に行ったり、スマホを購入したりと、爺さんはだんだん色気づいてくるのだが、婆さんの娘にこれ以上母親と逢わないでくれと文句を言われる。だがそんなことには挫けずに、二人は急接近してゆくのだった。とこの辺りまでは、老いらくの恋を若者たちが茶化すようなコミカルな展開が続く。

 序盤は韓国映画や香港映画にありがちな、くどいドタバタお笑いタッチが気に入らず★★の評価、途中で観るのを辞めようかと思ったくらいだ。ところが中盤になると、老人の恋がとても心温まる雰囲気に包まれ★★★☆の評価に跳ね上がる。そして終盤の「アッと驚くどんでん返し!」
 そこからは急にシュールでリリカルな展開に染まって、涙涙涙の大洪水となる。もっともここで号泣するのは、人生経験豊富な年寄だけかもしれないが・・・なんと評価は急上昇の★★★★★だぁーっ!!。ということで平均をとって★★★★に落ち着いたわけである。まさに韓国映画の面目躍如だね。それだけにおバカな序盤が実に残念だった。ところが実は、本作は米国映画『やさしい嘘と贈り物』のリメイク版だったんだね。

評:蔵研人

 

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2020年4月26日 (日)

それだけが、僕の世界

★★★★☆

製作:2018年 韓国 上映時間:120分 監督:チェ・ソンヒョン

 玉石混淆の韓国映画だが、時々心を揺さぶられるような作品に巡り合う時がある。紛れもなく本作も、その宝石の一つに数えても良いだろう。本作は韓国の底辺に生きる人々と、金持ちとの貧富の差を感じながらも、音楽がそれらを全て超越してゆくところが見事だった。

 イ・ビョンホン演じるところのやさぐれボクサー。東洋チャンピオンだった過去はあるものの、試合中に審判に暴行し業界から締め出されてしまった。現在は時々スパーリーング役をこなしたりチラシ配りをしながら、マンガ喫茶をねぐらにしたその日ぐらしに明け暮れている。
 彼ジョハの母親は、彼がまだ少年の頃に父親のDVに耐えられず、彼を残したまま失踪してしまったのだった。そして父親はずっと刑務所暮らし、彼が荒ぶるのも無理がないかもしれない。

 ある日数十年ぶりで、偶然母親と再会し母親の住む家に転がり込むのだが、そこには初めて会う彼の弟ジンテ(パク・ジョンミン)が同居していた。ジンテはサヴァン症候群という病を背負っており、一人では生活できないのだが、天才的なピアノ演奏力を持っていたのである。なんと基礎的な音楽知識は皆無なのだが、一度聞いたピアノ演奏は、譜面も見ずに完璧に演奏してしまうのでだった。

 現在国際スターでハリウッドでも活躍しているイ・ビョンホンだが、こんな汚れ役をよく引き受けたものだし、それをまた見事に演じ切っているところにプロ魂を見た。だがそれよりも何と言っても弟めジンテを演じたパク・ジョンミンの表現力が凄かった。それにたった3か月間の特訓であれだけのピアノ裁きも圧巻の神業だ。
 さらには兄弟の母親を演じたユン・ヨジョンの自然だが、じわーっと来る無理のない老巧な演技力。何と言っても本作は、この三人のアンサンブルが見事に絡み合い、完成度の高い作品に仕上がったのだろう。

評:蔵研人

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2020年4月22日 (水)

怪しい彼女

★★★★

製作:2014年 韓国 上映時間:125分 監督:ファン・ドンヒョク

 70歳のおばあちゃんマルスンは、口の悪さと頑固さが超一流で殴り合いの喧嘩も辞さないが、女手ひとつで育て上げて国立大学の教授になった息子だけが自慢の種であった。だがアクの強い性格が災いして、嫁には煙たがられているのだが、そんなことはどこ吹く風で嫁いびり、ついに嫁は精神を犯されて入院する始末・・・。
 そんなある日、街中にある古い写真館で写真を撮ると、なんと50歳も若返ってしまうのである。そして心を込めて昔の歌を歌うと、これが偶然音楽プロデューサーの目に留まって、なんとプロの歌手に推薦されてしまうのだった。

 こんな具合で進展してゆく荒唐無稽なファンタジー作品である。また2年後には多部未華子主演で、『あやしい彼女』というタイトルで日本でもリメイクされている。韓国版も日本版も大筋は同じで、どちらも評判が良いのだが、さすが感情の国・韓国版では、女性の感情表現が激しく、お涙頂戴指数もかなり高めに設定してある。
 また日本版では彼女が歌う歌は全てが、1960年代から1970年代の日本のヒットソングであり、昭和生まれの日本人には懐かしさと哀愁を感じさせるのだが、韓国版の歌は老若男女、全世界の人々の心を揺さぶるような選曲だったような気がする。従って国際的には、歌では韓国版に軍配があがるかもしれない。

 ストーリーはありきたりで、途中で結末が見え隠れしていたのだが、何と言っても役者さんたちの演技力と存在感には圧倒されてしまった。ことに彼女役のシム・ウンギョンの、個性的でありながら瑞々しい雰囲気と演技力には惹きこまれてしまった。


評:蔵研人

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2020年4月19日 (日)

50回目のファーストキス

★★★☆

製作:2018年 日本 上映時間:114分 監督:福田雄一

 2004年に製作された米国版がオリジナルで、本作はそのリメイクである。50回目のファーストキスとは、一晩寝ると記憶を失ってしまう女性とのラブストーリーと言えば分かるであろう。そう彼女にとっては、毎日毎日が初めての経験なのだから、いつのキスもファーストキスと言うことになるのである。
 米国版はアダム・サンドラーとドリュー・バリモアのコンビで、ラストシーンで大泣きした記憶がある。この結果が分かっているので、日本版では大泣きはしなかったが、ホロリときたことは否めない。いずれにせよ、米国版を観ていない人なら大泣きだったかもしれないね。

 何れも舞台はハワイだし、内容も殆ど変わらないのだが、やはりキャストにかなり疑問を感じた。まず主演の長澤まさみについては、全く問題なし。ずっとその美脚に見とれていた。彼女だけはドリュー・バリモアを超えていたかも…。ただ相手役の山田孝之の背が低いのがちょっと気になったことと、ムロツヨシと仲野太賀のドタバタ演技が濃すぎてぶち壊し状況だったのがつくづく残念であった。

ストーリーの内容については、米国版を観たときに書いたものを下記に紹介するので参考にして欲しい。

 最近少しブームになりつつある『記憶テーマ』のラブコメで、主演はアダム・サンドラーとドリュー・バルモアのぴったしコンビである。
 恋の始まりは、水族館の獣医をしているアダムが、毎朝同じレストランで、いつも同じ朝食を摂っているドリューに一目惚れするという展開。
 ある日やっと彼女と親しくなり、翌日同じ場所で、親しげに声をかけると、彼女は怪訝な顔をして相手にしてくれない。実はある事故を起こしてから、脳の一部を欠損したおかげで、彼女の記憶は一日しか持たなかったのだ。

 そんな彼女に夢中になってしまったアダムは、毎日毎日手を変え品を変えて、彼女の気を惹こうと涙ぐましいアタックを繰り返すのだった。何度も彼女のハートを射とめて、キス迄には至るのだが、翌日になるとまた彼女は、アダムのことを綺麗さっぱりと忘れてしまうのである。そしてまた翌日を迎えるわけだが、一体何時になったら彼女は彼のことを記憶出来るのか、と不安と期待を抱かせながらストーリーは進んでゆく。

 笑いあり、涙あり、ロマンチックなムードもたっぷり・・・まさに恋人と一緒に観るには最適の映画なのだ。そしてラストのどんでん返しもなかなか洒落ていた。ドリュー・バルモアは余り好きなタイプの女優さんではないのだが、この役処はハマリ役で、アダムともピッタリと息が合っていたと思う。

評:蔵研人

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2020年4月15日 (水)

誰もがそれを知っている

★★★☆

製作:2018年 スペイン他 上映時間:133分 監督:アスガー・ファルハディ

 意味深なタイトルであるが、ここでその意味を解説してしまうと、ネタバレになってしまうので観てのお楽しみとしておこう。主演はポスターの通り、実生活では夫婦で、共にオスカー俳優のペネロペ・クルス(ラウラ役)とハビエル・バルデム(パコ役)である。

 ラウラは、妹の結婚式に出席するため、子供たちを連れて南米からスペインへ帰国する。家族や幼馴染のパコと久々に再開し、実家で賑やかな結婚披露宴が催された。だがお祝いパワー全開の中で、突然停電が起こり、気分が悪くなり寝込んでいた高校生の娘が行方不明になってしまうのである。
 後日犯人から高額の身代金を要求するメッセージが届き、娘が誘拐されたことを確認する。警察に知らせると娘の命がないと脅されて、被害届を出すことも出来ないまま絶望の日々が続くのだった。

 娘の誘拐という面では、確かにサスペンス作品なのだが、その犯人やその背後に潜む狙いなどを考えると、実は家族たちの後悔の念が渦巻いているヒューマンドラマとも言えるだろう。前半は複雑な家族関係を理解するのに手間取ったが、中盤から元警官による事件の謎解きがはじまり、赤裸々な人間関係が炙り出されてゆく。
 なんと2時間超の長丁場であるが、それでもあと30分くらいは延長してすっきりさせて欲しかったね。まあラストシーンからは、「あとは観客が好きに想像してくださいね」という声が聞こえそうだが、あれではパコさんが踏んだり蹴ったりで気の毒すぎて後味が悪かったな。

評:蔵研人

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2020年4月 8日 (水)

あなたの名前を呼べたなら

★★★★
製作:2018年 インド、フランス 上映時間:99分 監督:ロヘナ・ゲラ

 厳格な身分制度や因習が残るインドを舞台にしたメイドと御曹司との純なラブストーリー。インド映画にしては上映時間が短いし、歌やダンスのシーンも少ないし、地味で心に沁み入るようなメンタルな作品であった。よく調べてみると監督のロヘナ・ゲラはインド人であるが、現在フランスに在住している女性監督だという。それでなんとなく納得するしかないだろう。

 また監督自身は裕福な家庭に育ったようだが、幼い自分の面倒をよく見てくれた住込みのメイドとの想いが心の残滓となっていたようだ。また大人になるにつれ、人を愛するという命題に突き当たり、それを探求するために身分制度と恋愛をブレンドした映画を創りあげたというのである。まあこのような問題はインドだけではなく、日本をはじめとして世界中で経験しているのだが、インドではまだ古い価値観や風習などが根強く残っているということなのだろうか。

 主人公のメイド・ラトナは古い慣習の残るインド農村に生まれ、19歳の時に親の都合で不治の病を持った男のもとに嫁がされる。その夫はすぐに亡くなってしまうのだが、食い扶持を減らすためにムンバイにメイドとして出稼ぎに出る。しかも村では再婚することが許されず、汚らわしい者として親族の結婚式にも参加させてくれないのである。
 それでもラトナは決して悲観的ではなく、「妹を大学に行かせることと、自分自身がファッションデザイナーなる」という夢を持ち続けて頑張っている。心優しい中にも、芯の強さを併せ持っている女性なのである。

 そんなラトナをに接しているうちに、だんだん彼女に惹かれてゆくのがラトナの雇い主のアシュヴィンで、ある日彼女を引き寄せてキスをしてしまう。ラトナは力強く拒まなかったものの、禁断の恋に戸惑いながらある決意を・・・。
 アシュヴィンは米国で自由に生きてきたのだが、兄の急逝によりインドで建設業を営む父親に呼び戻され、高級マンションに住みながら、その仕事を手伝っていたのである。だがそのこと自体が、彼の本意ではないことをラトナには見破られていた。

 アシュヴィンはいかにも世間知らずだが、心優しい良家の御曹司というイメージ通り。ラトナを演じた女優は清楚で芯の強さが漂う。なんとなく『幸福の黄色いハンカチ』を演じていたころの賠償千恵子とオーバーラップしてしまった。それにしても意味深なタイトルだが、それはラストシーンで分かるのでお楽しみに。この洒落たエンディングは、インドというよりフランス製なのであろうか・・・。

評:蔵研人

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2020年4月 2日 (木)

スマホを落としただけなのに

★★★
製作:2018年 日本 上映時間:116分 監督:中田秀夫


 彼氏がタクシーの中でスマホを落としてしまったことから、彼女の個人情報や写真が悪用されるのである。さらにストーカー行為を受け続けた後、挙句の果てには眠り薬を飲まされて監禁されてしまうのだ。さあ北川景子演ずるところのヒロイン麻美の運命や如何に・・・。と言ったかなり病的で気味の悪いサスペンス映画である。

 今や個人情報の全てが詰まっているスマホ。本作のような猟奇的な犯人に拾われなくとも、スマホには成りすましで、勝手に買い物をされたり、交友関係をいじられたり、恥ずかしい写真をネットにバラ撒かれたり、と踏んだり蹴ったりの恐ろしさが秘められている。だから例え保険に入っていても、保険金だけでは決して補填されない。便利かもしれないけど、何でもかんでもスマホ頼みというのも考えものである。

 ストーリー的には前半まではそこそこ興味深く鑑賞していたのだが、後半になってある程度犯人像と動機などが分かってくると、興味もかなり後退してしまった。そして終盤は、なぜ早く警察に連絡しないのかと、イライラが募るばかり。それにしても腕力のありそうな犯人でもないのに、余りにも弱すぎて頼りない彼氏。これらは、明らかにラストシーンをひっぱるためではないか、もう少し説得力のある流れを創れなかったのだろうか。
 

評:蔵研人

 

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