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2020年1月17日 (金)

ブラック・クランズマン

★★★☆
製作:2018年 米国 上映時間:128分 監督:スパイク・リー
 
 第91回アカデミー脚色賞及び第71回カンヌ国際映画祭グランプリに輝いた実録ドラマである。オープニング映像に『國民の創生』と『風と共に去りぬ』の名作映画が流れるのだが、はじめはその意図するところが分からない・・・。
 実はこの二作は米国の奴隷制度を肯定し、当時を美化していることで成り立っている作品ということになる。そしてそれを観て気勢を上げ熱狂しているKKK(白人分離主義者グループ)の集会批判に繋がってゆくのだ。

 さらには米国ファーストを唱えるトランプ大統領と、その支持者たちに異を唱えるメッセージも込められているのであろう。もっと言えば、この時期にこんな映画を創ったスパイク・リー監督の心情とは、トランプ大統領の台頭により、南北戦争の惨劇と70年代の黒人対白人の壮絶な争いの歴史が繰り返されることを強く危惧しているのではないだろうか。

 さて人種問題をテーマにしてアカデミー賞を受賞した作品と聞けば、いかにも重くて堅苦しい映画を想像してしまうのだが、本作は不思議なくらいかなり軽いノリで楽しめる映画に仕上がっている。これは主人公ロンのポップで明るい性格と同僚刑事フリップのちょっぴり頼りない様子なども描かれているため、シリアスとコメディが絶妙に組み合わさったストーリーになっているからであろう。
 この主人公ロンを演じたジョン・デヴィッド・ワシントンは、なんとあのデンゼル・ワシントンの長男で、元プロアメリカンフットボール選手として活躍したこともある俳優なのだと知ってまたびっくりしてしまった。

 また本作と同時期に製作された『グリーンブック』も、本作同様黒人差別がテーマであり、実話が元ネタで黒人と白人のコンビで話が展開し、差別している白人たちが馬鹿や悪人らしく描かれているという共通点がある。ただ大きく異なるところは『グリーンブック』のほうは、黒人と白人の友情を描いてハッピーエンドで楽観的にしめくっているのだが、本作は現実的で悲観的な観点で描かれているのだ。

 そしてこの2作は同時期にアカデミー賞を競ったのだが、『グリーンブック』が作品賞で、本作が脚色賞という結果で終わってしまった。結局のところ、やはりエンターテインメント性と分かり易さで『グリーンブック』に軍配があがったということなのだろうか。
 ただいずれにせよ、本作が優れた映画であることは認めるとしても、米国の歴史や国内事情に染まっていない私には、いまひとつ本気で共感するスピリットが燃え上がらなかったことも確かである。


評:蔵研人

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