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2020年1月の記事

2020年1月29日 (水)

最強のふたり

★★★★
製作:2011年 フランス 上映時間:113分 監督:エリック・トレダノ

 だいぶ以前から気になっていた作品だが、最近ハリウッド製のリメイク版が上映されたのを機会に、フランス製のオリジナル版をレンタルしてみた。結論から先に言えば、映像が美しく、音楽センスもよく、俳優たちの個性と演技力も光っていた出来の良い映画だと言えよう。
 ただ一つ残念だったのは、終わり方がいやにあっさりとしていたということである。実話だから仕方がないかもしれないが、脚色しても良いので、もう少し感動的なシーンを挿入してもらいたかったな。まあこのあたりの感じ方は、人によって異なるので、あくまでも私の個人的な嗜好に過ぎないのだが・・・。

 この作品は一見、気まぐれな大富豪の障害者と、スラム街出身の黒人介護者との友情物語として語られてしまいそうだ。だが実はその裏に、貧困、麻薬、移民、病気、死別、養子、障害者のセクシュアリティ等々、さまざまな社会問題が鏤められているのである。
 そしてその結果として、第24回東京国際映画祭コンペティション部門で上映、最高賞の東京サクラグランプリを受賞している。また主演の2人は最優秀男優賞を受賞した。さらに第37回セザール賞では作品・監督・撮影・脚本・編集・音響賞・主演男優・助演女優にノミネート、介護者役のオマール・シーが主演男優賞を受賞している。

 実は私が一番気に入ったのは、オープニングからいきなり始まるカーチェイスから、過去への回想を経て終盤にリターンしてゆくシーンである。そしてここであーそう言うことだったのかと納得してしまうのだ。まあ映画にはよくあるパターンなのだが、本作ではなかなか洒落ている回帰シーンであった。
 さてハリウッドのリメイク版のほうは、まだ未鑑賞なのだが、ネットの評価は圧倒的にオリジナル版のほうに軍配をあげている。・・・ということなので、暫くは静観してみたいと考えている。ただしオリジナル版を観ていなければ、先にリメイク版を観たほうが良いかもしれない。

評:蔵研人

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2020年1月25日 (土)

九月の恋と出会うまで

★★★★
製作:2019年日本 上映時間:106分 監督:山本透

  原作である松尾由美の同名小説を読んだのは、もう5年前のことであり、細かいストーリー展開と結末は余り覚えていない。それで新鮮な眼で本作を観ることが出来た。また登場人物が4人しか登場しないアイデア一辺倒の原作より、映画のほうが恋愛色に染まっていてストーリーも面白いし、スケールも広がっている。それに美しい映像と効果的な音楽が加わるから、珍しく原作を超えた映画と言ってよいだろう。
 ただタイムパラドックスとの因果関係については、やや解り辛いのであとで原作を読むと良いかもしれない。とは言っても、過去改変の影響については、原作でもいま一歩深みにはまり切っていないところが、かなり物足りないので念のため・・・。

 北村志織は、入居したばかりのマンションで、不思議な現象に遭遇する。なんと隣室に住んでいるが、ほとんど話をしたことのない平野という男性の声が、エアコンの穴から聞こえてきたのだった。それも一年後の未来から話していると言うのである。
 はじめは信じられない志織だったが、翌日の天候に始まり一週間分のニュースを言い当てられ、未来からの声だということを信じざるを得なくなってしまう。そのうえ現在の平野を尾行してくれという、奇妙な依頼を未来の平野から受けてしまうのである。だがなぜ尾行するのかという理由は教えてくれない。

 序盤は平野を尾行する理由の謎を追い、中盤はタイムパラドックスを避ける活動、そして後半に完全なラブストーリーへと変換してゆく流れは、「なかなか見事な脚本に仕上がっている」と褒めてもよいだろう。思わず一昔前に、こんな感性の韓国映画をよく観たことを思い出してしまった。
 また主演の高橋一生と川口春奈の演技力と存在感もなかなかであり、二人ともしっかりとこの役柄にはまっていた。まあどちらかと言えば、タイムトラベルよりも恋愛ものとして若い人たちにお勧めの作品かもしれないね。

評:蔵研人

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2020年1月20日 (月)

バイス

★★★☆
製作:2018年 米国 上映時間:132分 監督:アダム・マッケイ
 
 タイトルの『vice』とは、「vice president(副大統領)」のように役職の前に付く場合は「副;代理」を意味するのだが、単独の名詞としては「悪徳;悪玉;欠陥」といったネガティブな意味も持っている。たぶん本作は、その双方の意味を含んでいるのであろう。
 
 本作は実話を下敷きにして、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領に就任したディック・チェイニーの半生を皮肉を込めて描いているようだ。通常副大統領とはほぼ飾り物で、大統領に何かがあった場合の非常口的な役割しかない。ところが彼の場合は、史上最強の副大統領、あるいは影の大統領と呼ばれたくらい権力を掌握していたという。そして少々おつむの弱そうなブッシュを巧みに洗脳して、あの悲惨な湾岸戦争へと導いた張本人とも言われているのである。

 本作は第91回(2019年)アカデミー賞8部門にノミネートされ、最終的にはメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。それもそのはず、まず主演のクリスチャン・ベールが、なんと20キロ近く増量したり老け顔に変身しているではないか。
 さらにラムズフェルド役のスティーブ・カレル、ブッシュ役のサム・ロックウェル、パウエル国務長官役のタイラー・ペリーなども、まさに本物そっくりの再現度を実現しているのである。

 またこの映画を観ていると、1960年代から現代までの米国政界の内幕や権力構造をパラパラと垣間見ることが出来る。まさにこれこそ「社会派政治ドラマ」だと思い込んでジャンルを調べたら、なんと「コメディ」と記載されているではないか。
 実ははこの『バイス』という映画は、悪徳政治家たちの権力ゲームを笑い飛ばすという趣向の、過激なブラック・コメディということらしい。それにしても現存している大物たちを、これだけ皮肉たっぷりに批判できる米国という国の懐の広さには感心してしまうよな・・・。

評:蔵研人

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2020年1月17日 (金)

ブラック・クランズマン

★★★☆
製作:2018年 米国 上映時間:128分 監督:スパイク・リー
 
 第91回アカデミー脚色賞及び第71回カンヌ国際映画祭グランプリに輝いた実録ドラマである。オープニング映像に『國民の創生』と『風と共に去りぬ』の名作映画が流れるのだが、はじめはその意図するところが分からない・・・。
 実はこの二作は米国の奴隷制度を肯定し、当時を美化していることで成り立っている作品ということになる。そしてそれを観て気勢を上げ熱狂しているKKK(白人分離主義者グループ)の集会批判に繋がってゆくのだ。

 さらには米国ファーストを唱えるトランプ大統領と、その支持者たちに異を唱えるメッセージも込められているのであろう。もっと言えば、この時期にこんな映画を創ったスパイク・リー監督の心情とは、トランプ大統領の台頭により、南北戦争の惨劇と70年代の黒人対白人の壮絶な争いの歴史が繰り返されることを強く危惧しているのではないだろうか。

 さて人種問題をテーマにしてアカデミー賞を受賞した作品と聞けば、いかにも重くて堅苦しい映画を想像してしまうのだが、本作は不思議なくらいかなり軽いノリで楽しめる映画に仕上がっている。これは主人公ロンのポップで明るい性格と同僚刑事フリップのちょっぴり頼りない様子なども描かれているため、シリアスとコメディが絶妙に組み合わさったストーリーになっているからであろう。
 この主人公ロンを演じたジョン・デヴィッド・ワシントンは、なんとあのデンゼル・ワシントンの長男で、元プロアメリカンフットボール選手として活躍したこともある俳優なのだと知ってまたびっくりしてしまった。

 また本作と同時期に製作された『グリーンブック』も、本作同様黒人差別がテーマであり、実話が元ネタで黒人と白人のコンビで話が展開し、差別している白人たちが馬鹿や悪人らしく描かれているという共通点がある。ただ大きく異なるところは『グリーンブック』のほうは、黒人と白人の友情を描いてハッピーエンドで楽観的にしめくっているのだが、本作は現実的で悲観的な観点で描かれているのだ。

 そしてこの2作は同時期にアカデミー賞を競ったのだが、『グリーンブック』が作品賞で、本作が脚色賞という結果で終わってしまった。結局のところ、やはりエンターテインメント性と分かり易さで『グリーンブック』に軍配があがったということなのだろうか。
 ただいずれにせよ、本作が優れた映画であることは認めるとしても、米国の歴史や国内事情に染まっていない私には、いまひとつ本気で共感するスピリットが燃え上がらなかったことも確かである。


評:蔵研人

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2020年1月14日 (火)

アリータ:バトルエンジェル

★★★★

製作:2019年 米国 上映時間:122分 監督:ロバート・ロドリゲス
 
 『銃夢』という木城ゆきとのコミックを、ジェームズ・キャメロンが脚本と製作を手掛けて実写化したSFアクション映画である。原作は日本のマンガなのだが、ハリウッドの圧倒的な製作予算によって実現した作品と言えよう。
 いずれにせよ、ビジュアル・スピード感・アクションのどれをとっても不満のない作品に仕上がっているのだが、続編含みのラストがスッキリせず、カタルシスを得られないところが非常に残念であった。そしてアリータは一体何者だったのか、という謎の解明も続編に持ち越されてしまったのである。

 今のところ続編がいつ頃製作開始される、と断言できるはっきりした情報は流されていないようだ。また同時製作でない限り続編製作にもかなりの時間が必要と思われる。だから既に製作を開始している状況でなければ、1~2年以内に上映されることはまず不可能であろう。それに続編が完成する頃には、多くの人がどうでも良くなってしまうかもしれない。
 まあこのあたりが、大長編作品製作の難しさと言えるのだろう。だったら続編を待つよりも、原作のコミックを全巻読み切ってしまったほうが手っ取り早いかもしれないね・・・。

評:蔵研人

 

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2020年1月11日 (土)

A.I.ライジング

★★

製作:2018年 セルビア 上映時間:86分 監督:ラザル・ボドローザ

 珍しいセルビア発のSF映画である。宇宙飛行士とアンドロイドの恋愛というキャッチコピーであの『エクス・マキナ』を連想してしまった。またベオグラード国際映画祭5部門受賞するなど、世界中の映画祭で絶賛されたというのだ。
 それにミステリアスで壮大な宇宙をバックに描いた美しいポスター。それで思わずレンタルDVDショップの店頭で、衝動レンタルをしてしまったのである。

 借りてから自宅でネットの口コミを読んだら、余りにも酷い評価のオンパレード。だが実際に自分の目で確かめてみないことには、うかつに信じられない。と一縷の希望にすがってDVDを回してみたのだが・・・。

 2148年、宇宙飛行士・ミルーティンは、ケンタウルス座アルファ星の調査を、世界最大の宇宙開発社であるエデルレジ社から依頼される。ただ彼は過去の任務中に、何度も女性関係でもめごとがあったことから、今回は女性型のアンドロイドが同伴者に選ばれることになる。このアンドロイドはニマニと呼ばれ、500通りの性格を選べて、ミルーティン好みの外見にカスタマイズされていた。

 ここまでのオープニング設定では、これから何が起きるのか、人とアンドロイドがどのように愛し合うのかと期待を持たせるのだが、実はこの映画の観どころはここまでで、あとはいきなりセックスシーンに突入。宇宙船の中でいろいろ仕事があると思うのだが、その後もやることと言えば、ただただセックスばかり。
 全くストーリーの片鱗もなく、今度は単調なセックスに飽きたミルーティンが、アンドロイドに人間の心を埋め込もうと画策するというだけのお話である。

 それでもラスト近くになって、やっとこの映画最大の観どころが描かれるのだが、時すでに遅しそれでザ・エンドとなってしまうのである。期待感が大きかったせいか、かなり拍子抜けしてしまった。
 だが神秘的な雰囲気を醸し出す映像とスピリチュアルな音楽、そしてアンドロイドを演じた女優のスレンダーな肉体と無表情な演技が、ベオグラード国際映画祭での高評価に貢献したのだろうか。

評:蔵研人

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2020年1月 7日 (火)

黄昏のカーニバル

著者:清水義範

 本作は1990年前後に、今は途絶されてしまった『SFアドベンチャー』誌に掲載された清水義範の短編小説をまとめた文庫本である。その中味は次の7篇のSF作品で構成されている。

1.外人のハロランさん・・・子供の頃に出会った外人はどこから来たの?
2.黄昏のカーニバル・・・某国が発射した核による世界終末の空しい話
3.唯我独存・・・世界の全ては僕が創成したもの
4.嘉七郎の交信・・・宇宙人とコンタクトする爺さんの話
5.デストラーデとデステファーノ・・・時間が逆流する世界
6.21人いる・・・未来の自分が20人登場する話
7.消去すべき・・・全てを消去する自分とは何者

 いずれも懐かしき良き時代の読み易い短編SF小説で嬉しくて堪らない。また現役でこのようなアイデア重視で、わくわくするノスタルジックSFが書ける人は、本作著者の清水義範氏や梶尾真治氏ぐらいだろうか。

 さてこの中で一番興味深く読んだのは、「この世の全ては自分自身の想像力で創成されている」という唯我論をテーマとした『唯我独存』である。まあ唯我論について解説すると長くなるので後日に譲るとして、タイムトラベルファンとしては、プロ野球と時間逆転の『デストラーデとデステファーノ』と、押し入れから出てきた20人の未来の自分の謎を探る『21人いる』も、見逃せない短編であることは間違いないだろう。

評:蔵研人

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2020年1月 4日 (土)

キングダム

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:134分 監督:佐藤信介
 
 原作は原泰久のコミックで、第17回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞している。さらに単行本の発行部数は、56巻発売時点で累計4700万部を突破しているという怪物コミックの実写版映画なのである。

 私自身はコミックの存在さえ知らずに本作を観たため、コミックとの比較は全く出来ないのだが、原作にかなり忠実だったと言うことで、かなりの高評価を得ているようだ。まあ原作に拘る人々が多いのは分かるが、そんなことは無視して観てもなかなか面白い作品であることは間違いないだろう。
 ことに古代中国の風景、壮大な王城と圧倒的な兵士たちなど、実物とCGを巧みに組み合わせた見事なVFX技術とアクションシーンには度肝を抜かれてしまった。これならハリウッド映画にも決して引けを取らないであろう。

 是非この技術を生かして、従来は不可能と言われていた壮大な時代劇を製作して欲しいものである。個人的にはかなり古くなってしまったが、白土三平原作の『忍者武芸帳』の実写映画を是非観てみたいと切に願っている。
 本作は原作コミックの1~5巻をまとめただけの序章に過ぎず、続編を創ればさらにあと10作は出来ることになる。また興行収入も、公開後40日で50億円を超え、まずまずの大ヒットを記録している。従って少なくとも、あと1~3作の続編が製作されるのは間違いないであろう。

評:蔵研人

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