女王陛下のお気に入り
★★★☆
製作:2018年 アイルランド・米国・英国 上映時間:120分 監督:ヨルゴス・ランティモス
18世紀初頭のイングランドを舞台にした宮廷ドラマである。と言っても決して堅苦しいドラマではない。どちらかと言えば、時代考証や史実に不誠実であり、主役のアン女王もコミカルタッチで描かれているのである。
当時のイングランドでは、飽食に染まった貴族たちが、パイナップルを食べることとアヒルのレースに夢中になり、国内では税金を無駄に費やして、他国との戦争ばかりにうつつを抜かしていた。
それもこれもアン女王の体が弱く、自ら十分な政策運営を諮ることが出来ず、幼なじみでお世話係のレディ・サラが、権力を掌握していたからであった。この二人の関係は、まるで五代将軍徳川綱吉と側用人柳沢吉保との関係にそっくりではないか。
ところが厄介なことに、ある日ここにサラの従妹であるアビゲイルが介入して、三角関係となってしまうのである。そしてアン女王争奪戦と、その他の貴族たちを巻き込んだ女同士の嫉妬と憎悪に塗れた権謀術数作戦が開始される。
ストーリー前半は、貧しくて清純だったアビゲイル、頭脳明晰だが傲慢かつ独善的なサラというシナリオだった。ところが次第に二枚舌で野心家であるアビゲイルの本性が剥き出しになってくるのである。ただラストシーンは、サラが追放されたあと、画面一杯にウサギの映像が溢れるだけで、「あとはご想像にお任せします」という無責任な終わり方で幕を下ろしてしまうのだ。
もちろんアン女王のアビゲイルに対する愛情の変化を想像することは出来るものの、その後のレディ・サラについては、何も語られないため、史実を知らない者にはかなり不親切な締めくくりとなってしまったのではないだろうか。なお史実上も、サラはアン女王の晩年にその寵愛を失うのだが、その後ハノーヴァー王家のジョージ2世と王妃キャロライン、首相ロバート・ウォルポールと親交を結んでいる。さらにはマールバラ公家の莫大な資産をトラスト法によって継承し、当時ヨーロッパ有数の資産家になり、84歳という長寿を全うしたという。結局は彼女が一番の勝利者だったのではないだろうか。
評:蔵研人
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