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2019年9月16日 (月)

イマジン

著者:清水 義範

 この著者の作品はとても読み易くて面白いので、すぐに読むつもりだった。ところがいつもの薄い短編集ではなく、なんと667頁に及ぶ分厚い文庫本だったため、恐れをなして本棚の隅っこで眠ってしまったのである。だが本棚でこの本を見つけるたびに気になり、満を持してこの長編小説を読んでみたところ、超・遅読者の私でもあっという間に読破してしまったのだ。
 もちろんタイトルの『イマジン』は、あのジョン・レノンの名曲を意味しているのだが、直訳した「想像する」という意味も兼ねているようである。ある意味「若き日の父への想像や未来の自分自身への想像」、ということであろうか・・・。

 父親と大喧嘩をして一人暮らしをしはじめた19歳の翔悟は、どうした訳か何と23年前にタイムスリップしてしまうのである。だがその世界では使える金も知り合いもない。頼れるのはただ一人、若き日の父・大輔しかいないことに気づき、仕方なく父が暮らしていたというアパートを探し当てるのだった。
 そして翔悟は偶然、酔いつぶれて路上で倒れている若き日の父・大輔に遭遇し、彼を助けることになるのである。若き日の父はちょっぴり頼りないが、とても好人物で真面目な男だった。そして二人は互いに何か引き寄せられる絆を感じ合ってしまう。だからすぐに二人は親友になり、しかも息子の翔悟が、未来では厳しい父が出世する礎を創ってあげることになるのだ。
 さらに仕事の話が一段落したあと、まだ暗殺されていないジョン・レノンを救出するために、二人でニューヨークに向かうのである。そんな急展開・荒唐無稽・とんでもハップンな展開に、清水節が冴えわたることになる。

 さてタイムスリップして「若き日の父親に遭遇」というパターンは、浅田次郎の『地下鉄に乗って』、本多孝好の『イエスタデイズ』、重松清の『流星ワゴン』さらに映画においても『オーロラの彼方へ』、『青天の霹靂』など、実によくある話なのだが、きっと誰でも感情移入してしまう特効薬なのかもしれない。
 本作ではことに、過去から現在に戻ってからの「再遭遇」が実に感動的であった。父親と息子の関係とは、照れ臭さと反発さえ除外してしまえば、それほど素晴らしい絆で結ばれているのだろうか。中学生のときに父親が他界してしまった私にとって、親父と一緒に酒を酌み交わすことは、あの世で実現させることしか出来ないのが悲しいね・・・。

 さてそれにしても本作は、かなりの引用やオマージュが鏤められているものの、矛盾が生じないよう細かい部分に神経を配りながら、分かり易くて読後感のすっきりした作品に仕上がっているではないか。ただ唯一気に入らないのが、ダコタ・ハウスで突然出現するアーノルドの存在だ。この男の任務の設定が実に安易で古臭く、手垢が付き過ぎているからである。
 いずれにせよ歴史には拘らず、パラレルワールド含みのどんでん返しで締めくくっても良かったのだ。また歴史通りの進行を選んでも、あともうひと捻りの工夫が欲しかった、と感じたのは決して私だけではないだろう。だがその部分に目をつぶってしまえるほど面白い、「時を超えた父子の絆」を描いた感涙長編ファンタジー小説なのである。

評:蔵研人

 

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