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2019年8月 5日 (月)

終わった人

★★★

製作:2017年 日本 上映時間:125分 監督:中田秀夫

  原作は内館牧子の小説で、いつもはダンディーな役を演じている舘ひろしが、正反対のおとぼけダメ亭主役を演じているところが見所かもしれない。ただ妻役の黒木瞳が余りにも若見えし過ぎて、ちょっとアンバランスな感があった。

 そこそこ笑えるコメディー仕立てのつもりなのかもしれないが、余りにもありがちな定年後のエピソードには誰もが食傷気味であろう。さらに主人公の定年間際の窓際的な様子から、かなり以前に左遷されたときから、仕事に対する熱意がなくなっている様子が窺われる。
 そのくせ定年後の準備は何もしていないし、定年直後にはウロウロしているだけで、また働きたくなるという展開がよく理解できない。せっかく裕福なのだから、まだ働いている妻を巻き込まず、一人で故郷に帰るなり旅行するなり、ありがたく定年後を謳歌すればいいじゃないか。だから妻に呆れられて、嫌味ばかり浴びせられてしまうのである。

 また一番非現実的なのは、スポーツクラブで知り合っただけのIT会社の社長が、舘ひろしの学歴や経歴を知っていて、その場で顧問としてスカウトすることである。少なくとも「舘ひろしの現役時代に、いろいろ世話になった男がIT社長になり、偶然スポーツクラブで出会った」くらいのエピソードを挿入しておくべきだろう。余りにも安直かつ唐突なので、てっきり詐欺なのかと勘違いしてしまった。

 いずれにせよ、サラリーマンの定年後風景がステレオタイプのオンパレード。そんな取って付けたようなエピソードばかりでは、余りにも説得力がなさ過ぎるのだ。そんな定年退職者は、すでに80代以上の人の一部しか存在しないだろう。現代では定年後のほうが忙しいくらい、皆いろいろな活動に明け暮れていることくらいは理解して欲しいものである。
 それにしてもこの程度の作品では、映画化するほどの魅力も迫力も乏しい。せいぜいTVドラマで十分だったのではないだろうか。


評:蔵研人

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