スリー・ビルボード
★★★★
製作:2017年 英国・米国 上映時間:116分 監督:マーティン・マクドナー
本作は第90回アカデミー賞で、主演女優賞と助演男優賞を受賞している。さすがアカデミー賞に輝いただけに、主演女優フランシス・マクドーマンドの鬼気迫る演技力は、まさに狂人的で凄まじい迫力であった。
ただストーリーのほうはやや単調で、序盤は少し眠くなってしまうのだが、これは製作者の視点がストーリーを紡ぐことではなく、アメリカリベラルの自己批判にあるからかもしれない。
それはそれとして、ストーリーのほうはレイプされ殺された娘の復讐に燃え続ける過激な母親の怨念劇としか言いようがない。ところが一向に犯人は見つからず、母親の八つ当たり的な復讐行為によって直接関係のない人々が迷惑を被るという話である。
邦題の『スリー・ビルボード』とは、まさにそのものズバリ3つの広告看板という意味である。そしてその看板に書かれた内容は、いつまで経っても娘を殺した犯人を逮捕出来ない警察と署長に対する嫌がらせであった。
正式な原題は『Three Billboards Outside Ebbing, Missouri』で、「ミズーリ州エビング郊外の3つの看板」という意味である。またエビングは架空の町であるが、ミズーリ州は実在しており、保守的な気風が漂う田舎町で、白人が多く住んでおり、いまだに人種差別が根強く残る地域だ。また近年、白人警官が丸腰の黒人青年を射殺した事件でも有名である。
ところが皮肉にも、逆にミズーリ州に住む白人もまた差別の対象になっているようだ。つまりミズーリ州の白人の大半は、低賃金労働者で表社会では活躍できない人々で占められており、「ヒルビリー」と呼ばれて蔑まれている存在なのである。そのネガティブなヒルビリーこそが、トランプ大統領の支持基盤とも言われいる、という更なる嫌味も含んでいるようで興味深いのだが・・・。
前半は主演女優フランシス・マクドーマンドの演技力に翻弄され続けてしまうのだが、後半はむしろ悪徳警官を演じ助演男優賞を受賞したサム・ロックウェルの演技に注目したい。大火傷を負い、自らが傷つけた男に慰められ、また恩師の優しい遺言を読んで立ち直ってゆくのだ。じめじめとしていた本作の中での唯一の救いかもしれない。
また中途半端なラストだったが、これはこれで良いのかもしれない。焦って結論を出すより、観客一人一人の良心的判断と想像に委ねてくれたからである。
評:蔵研人
下記のバナーをクリックしてもらえば嬉しいです(^^♪↓↓↓
↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪
| 固定リンク | 0
« 終わった人 | トップページ | クリード 炎の宿敵 »
コメント