アルビノの木
★★★
製作:2016年 日本 上映時間:86分 監督:金子雅和
世界9か国で19の映画賞を受賞したというのだが、何がそれほど評価されたのか、逆に日本人には理解し難い作品かもしれない。確かにテーマは共感できるし、映像も音楽も文句なく素晴らしい。
ただ脚本が弱々しく、端折り過ぎの感があるため、共感し辛く突っ込見所が多発してしまうのだ。また無名の役者さんばかりなのは仕方ないとしても、かなり演技力に難が目立つ。だからなんとなく素人芝居を観ているようで、ちょっぴり気恥かしくなってしまった。
ストーリーを一言でまとめれば、「害獣駆除をしている男が、気が進まないのだが、母親の手術代を稼ぐため、村人に神と崇められている白鹿さまを撃ちに行く」というお話である。
いかにもファンタジックな設定なのだが、映画の中では神がかりな出来事や呪いなどは一切ない。ただ淡々と害獣を撃ちに行く男を、現実的に描いているだけである。だから本作はファンタジーではなく、あくまでもヒューマンドラマなのだ。
まあそれは特に文句をつける筋ではない。だが役所が村人たちに大切にされている白鹿の殺処分を秘密裡に行い、かつそれに賞金をかけるが如く、異常に高額な金額を猟師に支払うこと自体があり得ない。またいまどき母親の手術代稼ぎと言うのも陳腐だし、そもそも特殊なオペ以外は、健康保険の高額療養費制度でフォローできるため、これも全く説得力がない。
さらに宿泊先が役所の担当女性の家、というのも安直過ぎるし、プライバシーの侵害ではないか。また村でその従妹らしき女性と逢っても、その話が全く絡んでこないし、祖母が欲しがっていた木の器の話も村人に伝えない。これではわざわざ不自然だった「役所の担当女性宅泊」も全く意味がなかったではないか。
さらに途中で帰ってしまった仲間や、山小屋で待機していた猟師なども、一発屋よろしく、後に何の関りも起こらない。それになんと村の娘に至っては、無意味に唇を許してしまったり、簡単に約束を反故にしてしまうのである。とにかく前後の絡みや関連性が、ほとんど無意味になってしまう雑な脚本なのだ。
決して駄作ではないし、そこそこのめり込めた作品だけに、ちぐはぐな脚本と社会常識等の認識不足などが目立ったのは非常に残念である。だぶん外人たちには、そのあたりの事情がよく理解出来ていないため、単に芸術観だけで高評価してしまったのかもしれないね・・・。
評:蔵研人
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