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2019年4月17日 (水)

偽りなき者

★★★★☆

製作:2012年 デンマーク 上映時間:115分 監督:トマス・ヴィンターベア

 冤罪に巻き込まれあらゆるものを失い、集団的ヒステリー化した村で迫害される男の話である。本作はデンマークで記録的大ヒットを飛ばし、主演のマッツ・ミケルセンはカンヌ映画祭男優賞を受賞している。
 
 離婚した教師ルーカスは、郷里の村に戻って幼稚園の先生をすることになった。彼は子供たちの人気者だったのだが、ある日親友の娘であるクララにキスをされたりラブレターをもらった。だがクララのその行為を諭すと、彼女は自分の好意を拒絶されたと勘違いし、園長に「ルーカスにいたずらされた」とも取れる発言をしてしまうのである。

 そのあと園長はルーカスの話を良く聞かないまま、得体の知れないカウンセラーを連れてくる。そしてクララに対して誘導尋問のような質問を浴びせかけ、強引にクララから嘘の証言を引き出してしまうのだ。
 さらに園長は父兄や職員たちを集めて、ルーカスによってある少女が被害を受けたと吹聴する。さらには警察にまで訴えてしまい、とうとうルーカスは逮捕されてしまうのである。

 だが子供たちの発言は辻褄が合わず、証拠不十分ということでルーカスは釈放される。しかし無実となっても、狭い村の中で一度広まってしまった虚報は、まるでウィルスのように伝染して収拾が付かなくなってしまった。
 友人たちからは罵られ、食料品店では商品を売ってもらえず、ボコボコに殴られ、大きな石で家の窓が割られて、なんと飼い犬までが殺害されてしまうのである。

 とにかくこんなことになった発端は、全て職員の話を丁寧に聞かない女園長の早とちりである。この園長は決して悪人ではないのだが、世間知らずで事なかれ主義の小心者といったところか。またルーカスのほうもはじめからもっと強く反論すべきだった。彼は優し過ぎたのかもしれない。
 いずれにせよ恐ろしきは、集団心理である。現代風にいえば園長がインターネットで暴露した誤情報が大炎上してしまったということなのだろう。

 本作はヒューマンドラマなのだが、まるでホラーのようにじわりじわりと心を締め付けられるストーリーである。ただ唯一の救いは父親想いの素晴らしい息子と、ルーカスを擁護してくれた少数の友人の存在であった。
 本作の原題は『JAGTEN/THE HUNT』で、デンマーク語の「狩り」というような意味らしい。これはラストの意味ありげな鹿狩りシーンを示唆していると共に、村の人々の「魔女狩り」的な行動も指しているのであろうか。

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