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2019年4月の記事

2019年4月28日 (日)

父、帰る

★★★★

製作:2003年 ロシア 上映時間:111分 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

 菊地寛の小説ではありません。12年間行方不明だった父親が突然帰ってきて、二人の息子と謎の旅に出るという、ミステリアスなロシア映画なのです。
 優柔不断で優しい中学生の長男と、頑固で我がままな小学生の次男の好演が、特に光っていました。特に次男は表情を初め、体中から頑固さが漂っていました。あれは演技というよりは天性のものではないかと思いますし、万一演技だとすれば鬼気迫る大天才であります。
 それにしても不思議なタッチの作品でした。意外なラストの結末、父が行方をくらました理由、息子達を無理やり旅に連れ立った訳、謎の電話、土中から堀り出した謎の箱、これらの全てを説明しないままエンディングとなるのです。
 考えようによっては、馬鹿にされた気分になってしまうのではないでしょうか・・・。しかしながら一方では、この投げやりな終り方が、この作品に深みを与えているとも言えるでしょう。

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2019年4月22日 (月)

ドント・ブリーズ

★★★★

製作:2016年 米国 上映時間:88分 監督:フェデ・アルバレス

 一人住まいで盲目の老人の家に泥棒に入った若者三人だったが、実はその老人は元軍人でジェイソンのような恐ろしい男だった。登場人物ほぼ4人、場所もほとんど老人の家の中という低予算B級映画なのだが、その中味はかなり良質のスリラー作品と言って良いだろう。
 三人の若者のうち一人はどうしようもない不良男だが、その他の男女はいろいろ訳ありな家庭事情を抱えていて、やむを得ず泥棒をしているという雰囲気もあるのだが、だからと言って決して褒められた若者たちではない。また盲目の老人も不気味な精神異常者であり、結局4人とも共感を得られない面々ばかりなのだ。

 ジェイソンばりの盲目老人も恐ろしいのだが、あの犬の存在もかなり恐怖感を盛り立ててくれた。とにかくドキドキハラハラ、少し毛色の異なるスリラー作品である。ただつかまったり、逃げたり、倒したりを繰り返し過ぎで、なかなか大団円とならず、ちょっぴりしつこい感があったね。またラストも決してハッピーエンドではなく、やはりしつこさがへばり付いてくるようなエンディングだった。

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2019年4月17日 (水)

偽りなき者

★★★★☆

製作:2012年 デンマーク 上映時間:115分 監督:トマス・ヴィンターベア

 冤罪に巻き込まれあらゆるものを失い、集団的ヒステリー化した村で迫害される男の話である。本作はデンマークで記録的大ヒットを飛ばし、主演のマッツ・ミケルセンはカンヌ映画祭男優賞を受賞している。
 
 離婚した教師ルーカスは、郷里の村に戻って幼稚園の先生をすることになった。彼は子供たちの人気者だったのだが、ある日親友の娘であるクララにキスをされたりラブレターをもらった。だがクララのその行為を諭すと、彼女は自分の好意を拒絶されたと勘違いし、園長に「ルーカスにいたずらされた」とも取れる発言をしてしまうのである。

 そのあと園長はルーカスの話を良く聞かないまま、得体の知れないカウンセラーを連れてくる。そしてクララに対して誘導尋問のような質問を浴びせかけ、強引にクララから嘘の証言を引き出してしまうのだ。
 さらに園長は父兄や職員たちを集めて、ルーカスによってある少女が被害を受けたと吹聴する。さらには警察にまで訴えてしまい、とうとうルーカスは逮捕されてしまうのである。

 だが子供たちの発言は辻褄が合わず、証拠不十分ということでルーカスは釈放される。しかし無実となっても、狭い村の中で一度広まってしまった虚報は、まるでウィルスのように伝染して収拾が付かなくなってしまった。
 友人たちからは罵られ、食料品店では商品を売ってもらえず、ボコボコに殴られ、大きな石で家の窓が割られて、なんと飼い犬までが殺害されてしまうのである。

 とにかくこんなことになった発端は、全て職員の話を丁寧に聞かない女園長の早とちりである。この園長は決して悪人ではないのだが、世間知らずで事なかれ主義の小心者といったところか。またルーカスのほうもはじめからもっと強く反論すべきだった。彼は優し過ぎたのかもしれない。
 いずれにせよ恐ろしきは、集団心理である。現代風にいえば園長がインターネットで暴露した誤情報が大炎上してしまったということなのだろう。

 本作はヒューマンドラマなのだが、まるでホラーのようにじわりじわりと心を締め付けられるストーリーである。ただ唯一の救いは父親想いの素晴らしい息子と、ルーカスを擁護してくれた少数の友人の存在であった。
 本作の原題は『JAGTEN/THE HUNT』で、デンマーク語の「狩り」というような意味らしい。これはラストの意味ありげな鹿狩りシーンを示唆していると共に、村の人々の「魔女狩り」的な行動も指しているのであろうか。

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2019年4月11日 (木)

家族

★★★★

製作:1970年 日本 上映時間:107分 監督:山田洋次

  あの『男はつらいよ』シリーズの第一作が製作されたのが1969年だから、本作はその翌年に製作されたことになる。また本作はいわゆる山田監督の「民子3部作」の初作でもある。その影響か、出演者の多くが『男はつらいよ』とダブっていて実に興味深い。具体的には主演の賠賞千恵子をはじめとして、笠智衆、前田吟、三崎千恵子、森川信、太宰久雄そして渥美清と続くのである。

 ストーリーの背景は、高度経済成長期の日本であり、途中で大阪の万国博覧会の混雑振りが紹介されている。また東海道新幹線は東京~新大阪間しか開通しておらず、そのほかの新幹線はまだ全て未開通である。
 長崎の小さな伊王島で生まれた精一と民子は、結婚して10年の歳月が流れていた。だが精一の会社が倒産してしまい、彼の友人が勧めてくれた北海道の開拓地への移住を決心せざるを得なかった。

 一家は精一夫婦と子供が二人と精一の父親の5人である。まず船に乗り長崎に出て、列車に乗って精一の弟が住む福山で途中下車。さらにまた列車で大阪まで行き、新大阪から新幹線で東京に向かう。
 途中で子供が病気になって東京で足止めを食うのだが、さらにそこから先は地獄のような列車の旅が待っているのだった。現代であれば飛行機に乗れば一飛びなのだが、当時の航空運賃はかなり高額だったのだろう。

 このように延々と船や電車を乗り継ぎながら、様々なトラブルや不幸に見舞われながらも、「家族の絆」だけを拠り所に、力強く生きてゆこうとする姿が胸に沁みる感動作なのである。またなんとなく本作の7年後に製作される『幸福の黄色いハンカチ』を髣髴させられるロードムービーともいえる。
 なんと言っても、倍賞千恵子の瑞々しさと笠智衆のよき日本の穏やかな父親像がとても印象深く、高度成長期の日本がひしひしと伝わってくる良薬のような映画である。ことにラストでの二つの命の誕生が、それまでの苦労がやっと報われたようでとても嬉しかった。

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2019年4月 8日 (月)

シェイプ・オブ・ウォーター

★★★☆

製作:2017年 米国 上映時間:124分 監督:ギレルモ・デル・トロ

 原題は『THE SHAPE OF WATER』。直訳すると「水の姿」あるいは「水の形」という意味なのだが、このままでは意味不明である。そこでいろいろ調べてみると、ギレルモ・デル・トロ監督がこの難解なタイトルを説明している動画を見つけることができた。またその動画で監督は次のように語っている。

 「水は一番力を持った物質だ。どんな場所でも通り抜けるし、どんな形にもなり得る。グラスに入れるとその形になる。瓶の形にもなるしボトルの形にもなる。氷にもなるし蒸すこともできる、柔軟で強力だ。
 それは愛だと思う。愛する対象により形を変える。相手が誰であろうと、人種、肌の色、宗教、性別に関わらず形を変え全てに適応する。水は強力でやさしい物質だ。愛の形という認識だった。」

 つまりあらゆる障壁を超えたところにある『究極の愛の物語』を描きたかったのだろうか。だから本作に登場する主な人物は、ゲイ、黒人女性、障害者など差別を受けやすい人ばかり、そしてさらには究極の「半魚人」なのかもしれない。
 さて何といっても半魚人の登場は荒唐無稽なのだが、本作はモンスター映画ではなく、れっきとした恋愛映画なのである。それも人間と半魚人のラブストーリーなのだ。だから半魚人の姿はやや陳腐だが、CGではなく着ぐるみで優しい眼をしたぬいぐるみ仕様になっているのかもしれない。

 いずれにせよ監督が描きたかったのは、あらゆる障壁を超えたところにある『究極の愛の物語』なのだから、美女と野獣でもよかったのだろう。だがそれを半魚人と障害を持つ不美女にすることで、いまだかつてなかった斬新さを創造したのである。
 それにしても本作は、主役のイライザを演じたサリー・ホーキンスの熱演がなければ完成しなかったに違いない。『しあわせの絵の具』でも熱演していたが、美人でもなく貧相で小さい彼女が、これほどの大女優に駆け上がるとは誰が予測したであろうか。
 また本作は第90回アカデミー賞作品賞に輝いているのだが、半魚人の登場するファンタジー作品がアカデミー賞を受賞するなど、一体誰が想像でき得たであろうか。時代の流れとは実に恐ろしいものである。
 ただ注意しなければならないのは、残酷なシーンやエロいシーンが所々にちりばめられているので、お子様と一緒に観るのはやめたほうがよいだろう。

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2019年4月 3日 (水)

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

★★★☆

製作:2017年 米国 上映時間:120分 監督:クレイグ・ギレスピー

 この映画のチラシには、スケート靴を履いて大股開きをして、ふてくさくれた表情をしている金髪女性が写っている。そうこのチラシこそが、この映画の全てを語っているのだ。
 そしてなんとこれは実話であり、実在の人物も頻繁に登場するのである。そして俳優たちはメーキャプの技術もあるのか、気味が悪いくらいまるでそっくりさんばかりなのだ。

 アメリカ人の女子フィギュアスケート選手として、初めてトリプルアクセルに成功し、1992年アルベールビル、94年リレハンメルと2度の冬季五輪にも出場したトーニャ・ハーディングを知っているだろうか。一般的にフィギュアスケートの一流選手として活躍するにはかなりの費用がかかる。だが本作の主人公トーニャは、貧しい家庭に生まれたが、努力と才能により全米のトップ選手へ上り詰めたのである。

 しかしながら元夫のジェフ・ギルーリーが、トーニャのライバル選手を襲撃して負傷させた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を引き起こしたことから、彼女のスケーター人生の転落がはじまってしまう。この映画はそんな彼女の怒涛の半生を描いているのだ。
 それにしてもラストに映し出された実物のトーニァの演技は、約30年後の今見ても素晴らしい。あのスピードと躍動感、そしてジャンプの高さは現代でも見劣りしない凄さを感じてしまった。

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