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2019年3月の記事

2019年3月31日 (日)

空飛ぶタイヤ

★★★☆

製作:2018年 日本 上映時間:120分 監督:本木克英

 池井戸潤の原作小説は未読である。タイトルの『空飛ぶタイヤ』とはいったい何事なのかと思っていたが、実は走行中のトラックのタイヤが外れて宙を舞い、歩行者を直撃してしまったということであった。
 現実には走行中のトラックのタイヤが簡単に外れることはない。この作品ではその原因がトラックを運転していた運送会社での整備不良なのか、トラックを製造したメーカーの設計ミスなのかを争う展開に終始することになる。

 原作者の池井戸潤といえば、作家になる前は三菱銀行に7年間勤務したことが知られている。その影響で小説には三菱銀行や三菱重工らしき企業がよく登場する。だから彼の書いた主な小説では、数年前にTV放映された『下町ロケット』や『半沢直樹シリーズ』などが有名だ。
 また彼は財閥系企業が大嫌いで、中小企業に好感を持っているようである。本作もその池井戸定石通りの展開で『下町ロケット』と似たような構成になっていた。ただ小説の発表は『下町ロケット』より本作のほうが5年も早いのである。

 ストーリーはまあまあなのだが、先に『下町ロケット』を観ているため、それほどの高揚感は湧かなかった。また主演の長瀬智也の熱演は買えるものの、ディーン・フジオカは今一つ迫力不足だし、高橋一生は登場時間が短すぎる。だから何となく底の深さを感じないドラマに落ち着いてしまったのが非常に残念である。

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2019年3月26日 (火)

私の、息子

★★★☆

製作:2013年 ルーマニア 上映時間:112分 監督:カリン・ペーター・ネッツァー

 もしかすると、ルーマニア映画を観たのは初めてかもしれない。原題は『POZITIA COPILULUI/CHILD’S POSE』で、直訳すると子供の位置/子供のポーズという意味らしい。邦題のほうは、母親視点でのタイトルとなっていて、こちらのほうがぴったりしている気がする。
 本作は、第63回(2013年)ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞しているヒューマンドラマである。本作は自動車事故を起こして、被害者の少年を死に至らせてしまった男が、被害者の家族に謝るかどうかまでを描いているだけなのだ。

 ただこの男の母親は子離れできず、過干渉で息子を溺愛しているのである。また息子のほうは30歳を過ぎて、妻もいるのだが極度の潔癖症と対人恐怖症で自立できていない。
 またキャリアウーマンで裕福でコネを沢山持っている母親は、警察の上層部を頼ったり、証人と金銭交渉したり、あらゆる手段を駆使して息子を助けようとする。だが息子はそんな母親に怒りをぶつけ、放っておいてくれと怒鳴るのだった。

 よくある話であり、こんな母親が「振り込み詐欺」に引っ掛かってしまうのだろう。ストーリーとしては実に単調なのだが、母親の葛藤を延々と描いた心理劇と考えれば良く出来ている。たぶん母親役の女優さんの存在感と演技力の賜物なのであろう。
 それにしても、こんなバカ息子を救うために違法行為も辞さない母親は、とてもじゃないが観客の共感を得られないし、そんな献身的な母親を「あんた」と呼び捨てて罵倒するバカ息子は、さらに不愉快なキャラクターではないか。ところがラスト数秒のワンカットで、全てが納得できてしまうのである。ある意味摩訶不思議な映画なのかもしれない。

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2019年3月20日 (水)

グリーンブック

★★★★☆
製作:2018年 米国 上映時間:130分 監督:ピーター・ファレリー
Greenbook_1
 本作は第91回アカデミー賞及び第76回ゴールデン・グローブ賞において、ともに作品賞、助演男優賞、脚本賞に輝いている素晴らしい作品である。だからといって決して堅苦しい作品ではなく、ロードムービー或いはコメディとしても鑑賞できる全方向のヒューマンドラマといっても良いだろう。
 タイトルの『グリーンブック』とは、Victor Hugo Greenという黒人の郵便局員が、車で旅行する黒人のために1936~1966年にかけて出版したガイドブックのことである。なぜこのようなガイドブックが生まれたのかというと、次のような背景があったからだと言われている。
 当時米国では、裕福な黒人であればマイカーを所有するようになっていたのだが、車で旅行する黒人(厳密には非白人)は、ジム・クロウ法(Jim Crow laws)という州法に基づく人種隔離政策(各人種は平等だが入り交じるべきではないという方針)の影響もあり、次のような不都合に直面していたという。
1.食事や宿の提供を断られる
2.自動車を修理してもらえない
3.給油を断られる
4.暴力を振るわれる
5.白人しか住まない町から追い出される
6.警察に逮捕されやすい
 地域によっては、黒人にサービスを提供する事業者のほうが稀で、黒人は広い国土を自動車で旅行するのがとても大変だったという。従って黒人がマイカーで旅行しようとする場合には、トイレを利用させてもらえない場合に備えて、車のトランクに簡易トイレやバケツを用意しておいたり、飲食店やガソリン・スタンドを利用させてもらえない場合に備えて食料やガソリンを余分に用意しておく必要があったのである。
 そんな時代に Green 氏が私費出版したのが、"The Negro Motorist Green Book" なのだ。これこそ黒人が利用できる飲食店・ホテル・民宿・ガソリンスタンド・娯楽施設・ガレージなどの名称と住所を記載してある黒人必携のガイドブックだったのである。
 本作では、黒人差別が続いていた1962年に、黒人ジャズ・ピアニストのドクター・シャーリーが米国南部を8週間に亘るコンサート・ツアーを実行する。だが米国南部は人種差別が激しい地域であり、黒人が旅をするには大変危険であった。そこで彼は移動中のトラブルを回避するために、粗野な白人バウンサーのトニー・リップをボディーガード兼ドライバーとして雇うことになるだ。さらに道中で困らないためのガイドブックとして、シャーリーの所属事務所がトニーに与えるのが「グリーンブック」だったのである。
 はじめは黒人嫌いのトニーだったのだが、シャーリーの天才的なピアノ演奏や文章力に脱帽してゆく。またシャーリーのほうもトニーのトラブル解決能力や、荒々しさの中に潜む心優しさに気付きはじめる。そして旅の終わりに近づく頃は、二人ともが主従の関係から友人の関係に心が転換してゆくのである。
 笑いあり涙あり、ラストのクリスマスイヴ風景も良かった。だが何といってもトニーの妻・ドロレスを演じたリンダ・カーデリーニが、とてもチャーミングで素敵だったよね。

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2019年3月14日 (木)

しあわせの絵の具

★★★★☆

製作:2016年 カナダ・アイルランド合作 上映時間:116分 監督:アシュリング・ウォルシュ

 カナダの女性画家モード・ルイスとその夫の半生を描いた実話ドラマである。モードは先天性のリウマチを患い手足が悪く、なかなかまっとうな仕事につけない。また夫となるエベレットは孤児院育ちで学がなく、武骨で人付き合いが苦手な魚売りだ。そんなはみ出し者同士が同居することになり、初めはお互いにすれ違いが多かったが、共同生活を重ねてゆくうちに次第に惹かれ合うようになる。

 モードは住み込み家政婦としては、充分な働きは出来なかったものの、何事にもひた向きに取り組み、こつこつと絵を描くことが生き甲斐になっていた。そんなある日、エベレットの顧客であるサンドラに絵の才能を認められ、絵の制作を依頼される。
 やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン副大統領から依頼が来るまでになるのである。そして彼女はマスコミにも紹介されて名士となるのだが、暮らしぶりは相変わらず地味で質素であった。

 そんなある日、疎遠にしていた叔母と久し振りに逢い、彼女から過去のある出来事について、衝撃の告白を聞くことになる。その事実を知ったモードは思案にくれ、エベレットに相談するのだが・・・。

 それほど製作費はかけていないものの、とにかく映像も音楽も良い、そして感動の涙に濡れる心温まる作品である。さらに起承転結の見極めもしっかりしているし、何といっても障害を持つモードを演じたサリー・ホーキンスの抜群の演技力には脱帽するしかないだろう。まさに映画らしい実に映画らしい珠玉の名作に仕上がっているではないか。

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2019年3月 8日 (金)

待ち伏せ

★★☆

製作:1970年 日本 上映時間:117分 監督:稲垣浩

 三船プロの製作で社長の三船敏郎をはじめとして、石原裕次郎、勝新太郎、中村錦之助、浅丘ルリ子と超豪華キャストを集めたアクション時代劇である。ネットの評価はいま一つだったのだが、これだけ超大物が揃った映画は後にも先にもないと思いDVDで観ることにしたのである。

 ただ結論から言えば、残念ながらネットの評価通り駄作であった。まず脚本も演出も酷すぎる。また石原裕次郎は時代劇には全く向いていないばかりか、その役割そのものが不要だった気がする。また中村錦之助の演技力は買えるものの、あんな役ではもったいない。彼は時代劇の申し子なのだから、もっと強い侍を演じてもらいたかった。

 そして一番残念だったのは、これだけの俳優を揃えながら、誰一人として見せ場が用意されていないことだ。また殆どの時間が、茶店の中での心理劇的展開に終始し過ぎて、安っぽい舞台劇を見せられているような退屈感に襲われてしまったこと。
 さらには期待していた殺陣のシーンは、ラストに申し訳程度の添え物として、ちょこっと用意されただけだったのである。まさに裏切りが裏切りを呼ぶだけの、見どころのない顔見世だけの映画であった。 

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2019年3月 2日 (土)

チャンブラにて

★★☆

製作:2017年 伊・米・仏・スウェーデン 上映時間:118分 監督:ジョナス・カルピニャーノ

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 手持ちカメラの映像が揺ら揺らして気分が悪くなる。だから薄目を開けて観ていると、今度は眠い、ひたすら眠くなってしてまうのだ。ところが今度は、ガンガン大音響でがなり立てる音楽が、やかましくてたまらない。
 
 タイトルのチャンブラとは、イタリア南部のスラム街の通りを指す。そしてこの映画は、国に縛られずに生きてきたロマというジプシーに焦点を当てた、ドキュメンタリー仕立てのヒューマンドラマなのである。

 本作にはストーリーらしいストーリーは存在しない。差別によりまもな職に就けないロマの人々が、窃盗などで生計を立てている様子を延々と描いてゆくだけなのだ。また兄と父が逮捕されたため、14歳の少年ピオが窃盗を繰り返して家族や仲間を支えることになってしまう。と言うより、彼が周囲の反対を押し切って勝手に窃盗に手を染めるのだが・・・。

 子供たちが酒を飲み、煙草を吸い、女を買うシーンが印象的である。だがアフリカや南米では、それに加えてマシンガンをぶっ放す子供たちがいることを考えれば、まだまだおとなしいほうなのかもしれない。

 いずれにせよ、登場人物の多くは主演のピオ君をはじめ、現地の素人たちで占められているというから、まさにドキュメンタリーと紙一重なのだ。こうした作風は珍しいし、こんな世界の存在を知ることも必要かもしれない。だがこうした直線的な描き方では、ただ窃盗を繰り返しているジプシーたちが悪いだけ、という印象しか残らないではないか。

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