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2017年8月の記事

2017年8月24日 (木)

ロスト・エモーション

★★★☆

製作:2015年 米国 上映時間:102分 監督:ドレイク・ドレマス

 あのSFの名作巨編である『ブレードランナー』や『エイリアン』を手掛けたリドリー・スコットが、製作総指揮をとった近未来SF作品である。終末の世界戦争により地上の99.6%が破壊されたのち、人類は滅亡から逃れるため感情のない人間の共同体を創り上げる。
 だが時として、人間本来の愛や欲望といった感情が芽生えてしまうことがある。保険安全局はそうした人々を「病気の発症」として隔離施設に封じ込め、やがては安楽死と言う名の死刑台に送るのであった。

 この映画は、そんな環境下で感情を発症し、恋をしてしまう男女のラブストーリーである。生まれて初めて感情を持ち恋をした男女なので、その愛はまるで高校生のように純真で燃えるような激しい愛となってゆく。だがいつまでも世間の目を誤魔化し続けることは不可能であり、いずれ二人にも破局が訪れることになる。

 本作は静かでシンプルなSF映画であり、ロケ地はシンガポールや日本で敢行している。そして近未来都市のデザインは、なんと日本が誇る建築家・安藤忠雄がその世界観をリアルに再現したものだという。

 無感情でプライバシーも無い世界のはずだが、監視カメラなどの設定が一切ないというやや甘い設定が気になる。ただSFというよりはラブストーリーに重点を置いているのだと考えて許容すれば楽しめる映画かもしれない。
 いずれにせよ人類が滅びるのは「感情」と「欲望」であることは間違いない。惜しいかなそのあたりをもう少し掘り下げた脚本に仕上げていれば、もっと高評点をつけても許される作品になったはずである。

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2017年8月19日 (土)

真田十勇士

★★★

製作:2016 年日本 上映時間:135分 監督:堤幸彦

 2014年に堤幸彦監督と中村勘九郎がタッグを組み、大ヒットを記録した舞台劇「真田十勇士」を映画化した作品だと言う。舞台は観ていないので比較はできないが、映画を見た限りでは『舞台で大ヒット』の理由が分からない。

 真田幸村は、容姿が良かったばかりに百戦錬磨の武将だと勝手に思われていたが、本人は平凡な武将であることを自覚していた。そんなある日、ひょんな事件から猿飛佐助と出会い、佐助のほうから無理矢理に豊臣方について徳川と戦うことを強要されてしまう。
 そして渋々徳川との戦いに参戦することになる幸村だが、何をすれば良いのか分からず、全て佐助の指示通りに動くことになる。また佐助のほうは旧友の霧隠才蔵ほか10人の仲間を集めて「真田十勇士」と名乗り、来るべく大坂冬の陣・夏の陣へ着々と準備をするのだった。

 戦場のシーンはスケールが大きく見応えがあったのだが、忍者など個別の戦い方に工夫がないこと、ストーリー的な魅力がほとんどないことなどには失望せざるを得ない。またかなり製作費を使っていると思うのだが、オチャラケているのか真面目なのかはっきりしない感性に勿体なさを感じてしまったのは私だけであろうか。それとあくまでも個人的な趣味だが、悪いけれど主役の勘九郎的キャラは敬遠したくなるよね・・・。

 もうひとつだけ言わせてもらえば、オープニングのアニメシーンが長過ぎるし、アニメにする必然性も感じられない。それもかなり古臭く退屈なアニメなのだ。劇場だったら途中で席を立ちたくなるよな、と思っていたら画面に「これはアニメ作品ではありません、もうすぐ本編がはじまります」との字幕が挿入されたので、思わず苦笑してしまった。実は監督も判っていたのかな・・・。

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2017年8月15日 (火)

聖の青春

★★★☆

製作:2016年 日本 上映時間:124分 監督:森義隆

 幼年時に難病を患い、それが将棋と出会うきっかけになった天才棋士・村山聖が、29歳の若さで癌に侵されて、死出の旅につくまでの物語である。また彼は同世代ながら、次々とタイトルを手中に収める羽生善治に嫉妬し、激しいライバル心を抱くのだった。

 なにせ実在の人物たちの物語なので、嘘や極端な誇張は許されない。従って恋愛話もなければ、スーパーマン的な活躍も描けない。描けるのは村山聖の人となりと羽生善治との戦いだけに絞られてしまう。だから将棋好きの人にとっては、いろいろと見どころが盛り込まれているものの、将棋を知らない多くの映画ファンにとっては退屈だったかもしれない。

 映画としての完成度は決して悪くはないし、村山聖役の松山ケンイチと羽生善治に扮した東出昌大の全身全霊で挑んだ役創りも見事としか言いようがない。二人とも外見や仕草もそっくりに仕上げていたし、こころの中の葛藤までをじっくりと魅せてくれたからである。
 それにしても、興行成績が振るわなかったのは、『3月のライオン』のように架空のお話で、可愛い女優やラブストーリー、派手な登場人物などで彩られることがなかったためと考えられる。まあ前述した通り、実話で現存の棋士が登場していめため、限界があるのは仕方ないだろう。

 それにしても将棋の世界は、昔から「静と動」、「優等生と劣等生」と、かなり対照的なライバルが多かったね。古くは関根金次郎と坂田三吉にはじまり、大山康晴と升田幸三、中原誠と米長邦雄と言った具合だ。もし村山聖が健在だったら、同じようなライバル関係が続いていたかもしれない。また奇人変人が少なくなり、コンピーターにも勝てなくなった将棋界に、きっと青嵐を巻き起こしてくれたに違いない。

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2017年8月 9日 (水)

フライト・デスティネーション

★★★☆

製作:2007年 カナダ 上映時間:98分 監督:ジェイソン・ボルク

 民間旅客機が時空を超えた異次元空間に移動してしまい、機内ではこれを元の世界に戻す努力が続けられる。またその航空機には、離陸直前に緊急事態で呼び戻された主人公・ケイレブの妻と娘が搭乗していた。地上に残されたケイレブは、必死になって手掛かりを捜査するのだが、なかなか思うように進展しない。

 ところでなぜ航空機が異次元空間に跳んでしまったのかを説明すると、かなりややっこしいのだが簡単に要約すると次の通り。
国家最高機密の「時空間移動装置」が開発者のウィンター博士に盗まれてしまう
博士は悪人ではなく、その装置を政府が戦争に使用するのが耐えられなかった
政府は国家機密の漏洩を恐れて、戦闘機を派遣して航空機ごと爆撃しようとする
それに気付いた博士が、急遽機内で「時空間移動装置」を稼働させ、間一髪のところで航空機は異次元空間に消え去る

 と言う流れである。それにしても簡単に一般の乗客全員を犠牲にしてまで守る国家機密なのだろうか。ちょっと待ってくれよと叫びたくなるではないか。

 タイムトラベル系の作品は大好物で、ワームホールがどんどん巨大化して建物や人を次々飲み込んでゆく。そしてアメリカだけではなく、地球丸ごといや宇宙全体を破壊してしまうという超壮大な発想に、なんとなく同調したい気分に巻き込まれたのだが…。
 その後の余りにも陳腐で理不尽な展開にむかっ腹が立ってきた。宇宙が破壊されてしまうという状況下で、なぜ機内でも地上でもアホなお邪魔虫がしつこく絡みついてくるのだろうか。もっともそれらの悪役が登場しないと、変化に乏しい退屈な映画にしかならないからかもしれない。

 まあ娯楽作品なのだから、多少の無理が目についても目を瞑るしかない。だがこのような安易な展開ならば、あえてタイムトラベル系の映画にしなくとも、テロでも脱獄でもとにかく単なるハイジャク映画にすれば良かったのではないだろうか。

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2017年8月 4日 (金)

クイックセーブ&ロード

著者:鮎川 歩

 普通の人間なら、人生は一回限りでやり直しがきかないのだが、本作の主人公は何度でもやり直しができる能力を持っている。つまり死んでも再生可能ということなのだが、事前にセーブしておくことが必要となる。そうすることにより死後に再生する時間と空間が、セーブした時点からのやり直しで済むことになるのだ。

 セーブそのものはただ頭の中で念じるだけなので、脳に針を突き刺すような感覚が一瞬走るだけなのだが、死ぬときの痛みと恐怖感は半端ではない。それでも主人公は何度も何度も自殺を繰り返して再生しているのである。その感性は余り理解できないし、主人公の暗くてドジではっきりしない性格も好きになれない。

 ただ唯一の協力者である「超能力研究会」の常盤夢乃先輩のキャラだけは、なかなか好感が持てるし、染谷の漫画チックなイラストもなかなか良い味を漂わせている。

 ストーリーは、幼馴染の女の子を救うために、主人公が何度も自殺と再生を繰り返して別の結果を導こうとするのだが、ドジで非力で弱虫のためなかなか思うような結末にならない、といったループものにはよくある展開なのだ。そして終盤になって致命的なミスを犯してしまうのだが、それが通常のゲームと違い平行セーブできないという弱点であった。

 いずれにせよ新鮮さやストーリーの緻密さにはやや欠けるものの、読み易さという面ではかなり評価できるかもしれない。なにせ超・遅読症の私でも、350ページ近い本作を、僅か3日間で読了してしまったのだから…。

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