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2017年3月の記事

2017年3月31日 (金)

コラテラル

★★★★

製作:2004年 米国 上映時間:120分 監督:マイケル・マン

 コラテラルとは、『巻き添え』という意味だそうです。
 本作は、ロスの夜街を走るタクシーに偶然乗り合わせた冷徹な殺し屋ヴィンセント(トム・クルーズ)と、ドライバー役のマックス(ジェイミー・フォックス)の魔化不思議な関係を描いた一風変わったサスペンス映画であります。

 トムが初めて演ずる殺し屋役は、ターミネーターのような無類の強さと、非情さを持ちながらも、本当に悪人なのかと疑問に感じた人も多いと思います。
 それは何故2度目の殺人が終ったあとに、マックスを殺して別のタクシーに乗り移らなかったのか。その他にも何度もマックスを殺す理由と機会があったというのに・・・。
 もちろん途中でマックスが殺し屋ヴィンセントに殺されてしまっては、このタイトルとは繋がらないし、この作品そのものが成り立たないのですが、なにか不自然な感じがしました。

 一方お人好しで、明るく人間的なマックスは、ヴィンセントとは正反対の性格で、仕事に対しても女性に対しても、優柔不断なのであります。ところがヴィンセントの仕事(5人の殺人)に引き回されて『巻き添え』を食らっているうちに、だんだんと強い男に変貌してゆくのが面白い。
 僕にはヴィンセントが、頼りないマックスをたくましくするために、未来か宇宙からやってきたターミネーターか、神(悪魔)のような気がしました。そしてロスの夜景と高速道路を走るタクシーの美しさと不気味さ、そしてノリの良い音楽が、心に染み込みました。

 ラストについては、話が見え過ぎるとの批判が多いのですが、ロスの深夜中、殺し屋にどつきまわされて、心身ともにボロボロの善良なマックスに、あれぐらいの癒しを与えても良いのではないでしょうか。
 そうでもしないと、この作品はどうにも救いのないドロドロな暗い映画で終ってしまいますよ。

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2017年3月25日 (土)

3月のライオン 前編

★★★★

製作:2017年 日本 上映時間:138分 監督:大友啓史

3mlaion
 原作が少女マンガで、将棋の青年プロ棋士を描いている作品だということだけは知っていたが、原作未読で事前知識は全くないまま映画を鑑賞した。囲碁の『ヒカルの碁』では、囲碁を全く知らない少年がプロになるまでの過程を中心に描いていたが、本作は初めから将棋のプロ棋士というところが異なっている。
 またヒカルには藤原佐為という幽霊の師匠兼友人がとりついていたし、主人公自身も明るい性格だった。ところが本作の主人公・桐山零は、幼少期に交通事故で両親と妹を亡くし孤独で暗い性格なのである。

 そんな背景もあり、序盤の暗く重苦しい雰囲気に少し辟易したのだが、有村架純扮するところの義姉が登場するころから俄然面白くなってくる。そして実際の将棋界同様に、奇人・変人のプロ棋士たちが闊歩する姿もなかなか興味深い。ことに故・村山聖九段がモデルになったライバルの二海堂晴信を演じた染谷将太の迫真の演技はかなり光っていた。
 また将棋を指すシーンでは、盤面の映像やその棋譜の解説等はほとんどないが、棋士たちを演じた役者の表情の変化を観ているだけで、どちらの形勢が良いのか悪いのかが良く判るので、将棋を知らない人でも楽しめる仕組みになっている。ことに佐々木蔵之介、甲本雅裕、奥野瑛太、加瀬亮、伊藤英明、豊川悦司らの個性的なキャラ創りは俳優の演技力と演出の勝利なのだろう。

 本作は将棋のプロ棋士が主人公であるが、「将棋映画」と言うよりはもしかすると「恋愛映画」なのかもしれない。いずれにせよ本作は前編なので、まだその全貌が明らかにされていない。ただ前編と言っても、きりの良いところでそこそこにまとめている。もちろん後編が公開されたら、是非また劇場で観てみたいものである。

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2017年3月20日 (月)

NOVO ノボ

製作:2002年 フランス 上映時間:98分 監督:ジャン=ピエール・リモザン

  もう14年前の話になります。当時評価の高かった『北京ヴァイオリン』を、会社帰りに渋谷で観るつもりでした。しかしチケット屋に前売り券がなかったため、シネセゾン渋谷というミニホールで「NOVO」というフランス映画を観ることに変更しました。
 それにしても渋谷で映画を観たのは、なんと今はなき「全線座」以来25年ぶりのことでした。またこのころから、私の映画好きとこのブログが始まったような気がします。

 ストーリーは、5分経つと記憶を失ってしまう男が、ある女性と知り合って恋をするうちに、だんだん記憶を取り戻してゆくお話です。ラストの意外な展開も含めてちょっと難解なストーリーでしたが、乗りの良い音楽と、出てくる女性が全員が私の好みだったので退屈しませんでした。

 記憶が長く残らない男という設定では、メメントと同じですが、この映画はセックスシーンが多いので、子供には見せられません。しかしミニシアターファンには、かなり嬉しい作品だと思います。ネットの評価はそれほど高くはないのですが、私にとっては映画ファンになりはじめた記念碑的な作品なので、いつまでも心に残っているのでしょう。

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2017年3月16日 (木)

バリスティック

★★★

製作:2002年 米国 上映時間:90分 監督:カオス

 ルーシー・リューとアントニオ・バンデラスのバリバリアクションで、ことに女ターミネーターばりのルーシー・リューがクールでスピーディーな演技でがんばっていました。
 ただこの映画には全く艶っぽさがなく、せっかくのバンデラスとリューの共演が色あせた感光紙のようでもったいない感がありました。
 またストリーがはちゃめちゃで、全く前後の辻褄が合わず、際立ったストーリー展開もない。ただただ無意味にドンパチと破壊を続けるだけなのです。そしてそのアクションシーンでも、戦争並のものすごい量の火器と火薬を使っている割には、敵の弾は一切かすりもしないのであります。

 監督がタイ人であることを聞いて、さもあろうと思いました。タイの映画はハチャメチャものが多い。しかしポジティブで昔の香港映画のように所々におふざけが入るので、おバカ映画だと思えば腹も立ちません。
 ところが、この映画はハリウツド資本の入った大作で、シリアスな展開の作品なはずであり、タイ風のハチャメチャは、全く場違いこのうえないのであります。結局この監督は、タイで低予算のドタバタ映画を創っているほうが向いているのかもしれませんね。

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2017年3月12日 (日)

約束

著者:村山由佳

 村山由佳がイラストレーターと創った絵本から、文章の部分だけを取り出して再構成した『絵のない絵本』である。子供向けで字数も少なく読み易いので、誰でもあっという間に読めるだろう。
 収録作品は表題の『約束』をはじめ、『さいごの恐竜ティラン』、『いのちの歌』の三作で紡がれている。
 この中で一番長いのが約80頁の『約束』で、4人の少年たちの友情をノスタルジックたっぷりに描いた『スタンド・バイ・ミー』もどきの小説である。その中で難病で入院した友達を助けるために、タイムマシン製作に夢中になってゆく3人の少年たちの涙ぐましい努力が実に微笑ましい。

 『さいごの恐竜ティラン』は、肉食恐竜に子供を食われた草食恐竜が、その肉食恐竜の赤ちゃんを育てるというお話。また『いのちの歌』は、人間によって汚染された海の中に迷い込んでしまったくじらの母子の愛情物語である。ともにいのちの尊さと母性本能の深さを、しみじみと描いてジーンとくる短編小説に仕上がっている。

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2017年3月 5日 (日)

ラ・ラ・ランド

★★★★

製作:2016年 米国 上映時間:128分 監督:デイミアン・チャゼル

Lalala
 惜しくも第89回アカデミー作品賞は『ムーンライト』に譲ったが、アカデミー主演女優賞・監督賞・撮影賞・美術賞・作曲賞・歌曲賞を受賞している。さらには、ゴールデン・グローブ賞をはじめとする主要映画賞を総なめしているのだから驚きである。

 女優志望のミアは、オーデションに落ちて失意のままジャズバーに引き込まれ、そこでピアノを弾いているセバスチャンと運命的な出会いをするのだが、そのいきさつは最悪であった。その後プールサイドで、不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し、二人は急接近してゆくのである。

 本作は、女優とジャズピアニストという夢を持つ男女の恋を描いたミュージカル映画と言えよう。もちろん音楽とダンスについてはなかなか魅力的なのだが、ミアの歌が今一つ聴き辛かったな。そのあたりが★4で留まってしまった理由かもしれない。

 素晴らしかったのは、序盤でミアが電話をするシーン、というより彼女の複雑な感情を表情だけで演じたエマ・ストーンの見事な演技力。やはりアカデミー主演女優賞は伊達ではなかった。
 また夕焼けを背景にしたタップダンスや、星空の中を浮遊するダンスシーンもバッチリである。またなによりも感動したのは、ラスト数分の『うたかたのパラレルワールド』ではないだろうか。このシーンにこの映画の全てが詰め込まれている、と言っても過言ではないかもしれないほどジーンと痺れてしまった。

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