幸せなひとりぼっち
★★★★☆
製作:2015年 スウェーデン 上映時間:116分 監督:ハンネス・ホルム
愛妻のソーニャに先立たれて失望の縁を漂っている矢先、40年以上真面目に勤めてきた会社からリストラをほのめかされ、その場の勢いで会社を辞めてしまったオーヴェ老人の話である。曲がったことが大嫌いな彼は、毎朝家の周辺を巡回してルールを守らない人がいると、容赦なく大声で罵るのであった。
具体的には、自動車の通行禁止のルールをはじめ、ゴミの分別、自転車の駐車、犬の小便から扉の開閉まで、些細なことにまでいちいち神経を尖らせているのだ。そのため近所の人々は、陰で彼のことを偏屈な頑固爺とか変人と囁いている始末。
近所の人々の思惑などはどうでも良かったが、そんな彼を理解して愛してくれた妻は、既にこの世にはいないという絶望感だけが、彼の全身を侵し続けていた。それで自殺を決行するのだが、なかなかうまくゆかない。
そんな絶望的な彼の隣家に、陽気なアラブ人の家族が引っ越してくる。この家族の奥さんと子供たちが、なかなか人懐こくて愛嬌があり、人間嫌いのオーヴェとの絡みがなかなか楽しく感動的なのである。
こんな感じでストーリーはとんとん拍子で進んでゆくのだが、彼が自殺を実行するたびに、父親との想い出やら愛妻との出逢いなどが回想されるというユニークな構成となっているのも面白かった。
それにしても主人公オーヴェのような頑固オヤジは身近でも時々見かけるし、もしかすると私自身も他人からはそう見られているかもしれないのだ。
・・・そう他人ごとではないのだから、思い切り感情移入してしまい、劇場の中は嗚咽しているオジサンたちで溢れ返っていた。笑いあり、涙あり、愛ありの文句のない作品で、久々に良い映画を観たと言う充実感に浸れることだろう。
スウェーデン映画は余り見慣れないのだが、このような素晴らしい作品がまだ沢山創られているとしたら、それは宝の持ち腐れと言うものである。もっと他の作品も観たくなってしまった。
それなのにこの作品は、関東でも『ヒューマントラストシネマ渋谷』と『新宿シネマカリテ』の2館だけ、全国併せてもたった8館でしか上映していないのは、実に勿体ない話ではないか。配給がテアトル系ということもあるが、今後はシネコンなどでも上映出来ないものだろうか・・・。
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