トキワ荘の青春
★★★
製作:1996年日本 上映時間:110分 監督:市川準
トキワ荘と言えば、漫画界の大御所である手塚治虫をはじめとして、寺田ヒロオ、藤子不二雄、石森章太郎、赤塚不二夫などの一流マンガ家たちが住んでいたアパートの名である。そして若かりし彼等が成長して独り立ちするまで寄り添っていた『新漫画党』のアジトでもあった。
その中心人物となり自分の部屋を提供していたのが、本作で主人公として描かれている寺田ヒロオである。彼は藤子不二雄、石森章太郎、赤塚不二夫などに比べると寡作であり、かつ信念を貫くために42歳で絶筆しているため、現代の若者にはあまり知られていないかもしれない。
彼の代表作は『背番号ゼロ』、『スポーツマン金太郎』、『もうれつ先生』、『暗闇五段』などの健全でほのぼのとしたスポーツ漫画が多かった。また彼の作風を支援する読者も多く、基本的な実力も備えていたのだが、時代が要求する過激なものや非現実的なものを一切受け入れない頑固さのため、自らペンを捨てる羽目になり、61歳で夭折してしまったのも実に気の毒である。これらのことが本作では余り描かれていないところは残念だが、彼の優しい人柄や面倒見の良さはひしひしと伝わってくるだろう。
この物語の背景は昭和30年代であり、懐かしい時代写真や歌謡曲などが流れてくる。だが舞台のほとんどが薄暗いトキワ荘の中であることや、登場人物が多くかつ実在しているためか、誰かにじっくりとスポットを絞り込むことが出来なかった。さらにはトキワ荘のメンバーたちが描き、ヒットした漫画のことなどが、ほとんど描かれていないところも消化不良の一因だったのかもしれない。
またこの作品は、トキワ荘にいたメンバーの漫画を読んで育った世代で、かつ寺田ヒロオの作品にも触れたことがないと十分な理解を得られないだろう。そうした脚本の弱さは感じたものの、寺田ヒロオを演じた本木雅弘をはじめとする俳優さんたちの個性的な熱演は評価したい。
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