君がくれたグッドライフ
★★★☆
製作:2014年ドイツ 上映時間:95分 監督:クリスティアン・チューベルト
ドイツ語の原題は『HIN UND WEG』で『帰らぬ旅路』のような意味らしい。またストーリーのほうは、安楽死を求めてベルギーまで旅立つ主人公ハンネスに付き添う形で、自転車の旅をする家族と友人たちの姿を、ロードムービー風に描くことにより、死に対する恐怖や暗さを消している。
そもそも大切な人が死ぬための旅に付き合うということ自体が、日本人には違和感があるのだが、ドイツでは自殺幇助は違法行為ではないらしい。さらにベルギーやスイスなどでは、直接的安楽死までが合法なのである。
そしてなんと安楽死を求めスイスへ渡航する外国人(その多くが英国、ドイツからの自殺旅行者)が年々増加しており、2008年からの5年間で611人に上るというのだ。つまりこの映画が創られた背景には、ドイツで国をあげて『自殺介助問題』が議論されているからにほかならない。
本作は前述した通り、明るいロードムービー仕立てになっているのだが、手回し良くラストシーンを想像してしまうのか、観客の多くが終始泣き続けてしまうという異常な状況に驚いてしまった。逆にいつも泣き虫の私が全く悲しみを感じなかったのも異常なのだろうか。
ただ本作は余りにもあっさりと尊厳死を描き過ぎているところが物足りないのだ。そもそも尊厳死とは何なのか、ハンネスが尊厳死を選択しなければならなかった苦悩の過去も余り語られていない。また最愛であろう夫婦間の葛藤もほとんど暗黙の了解で括っているだけなのだ。
本作を上映したヒューマントラストシネマ有楽町を出て、近くの東京国際フォーラムにある『相田みつを美術館』に立ち寄ってみた。ここにくるのはこれで3回目だが、いつ来ても相田みつをの書と詩には心が洗われる。そのなかの一作に『いのち』という詩があった。
アノネ
にんげんはねえ
自分の意志で
この世に生まれて
きたわけじゃねんだな
だからね
自分の意志で
勝手に死んでは
いけねんだよ
みつを
自分を殺すのは自分の自由ではないかと言う人もいる。だが自分の命は自分だけのものではないことも確かである。自分を大切に育ててくれたひと、自分を愛し続けてくれているひとがいることも忘れてはならない。
従って本作の主人公のように、それらの人々の思いを無視して自分の願望だけで尊厳死を強行するのは優しさに欠けてはいないのか。まだ30代で若いのだから、もう少し苦しさに耐えて自分を愛してくれる人々との時間を過ごせなかったのだろうか。そのあたりの葛藤が全く伝わってこなかったのが残念である。
また尊厳死そのものについても、身体も心も全く機能せず、これ以上生かしても医療費の無駄であり、周囲の人々もその死を納得できるような場合にのみ許されるものではないかと思っている。それが本当の優しさではないだろうか。
下記のバナーをクリックするとこの記事の人気度を確認できます↓↓↓
↓ブログ村もついでにクリックお願いします(^^♪
| 固定リンク | 0
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント