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2016年5月の記事

2016年5月27日 (金)

君がくれたグッドライフ

★★★☆

製作:2014年ドイツ 上映時間:95分 監督:クリスティアン・チューベルト

Goodlife
 ドイツ語の原題は『HIN UND WEG』で『帰らぬ旅路』のような意味らしい。またストーリーのほうは、安楽死を求めてベルギーまで旅立つ主人公ハンネスに付き添う形で、自転車の旅をする家族と友人たちの姿を、ロードムービー風に描くことにより、死に対する恐怖や暗さを消している。

 そもそも大切な人が死ぬための旅に付き合うということ自体が、日本人には違和感があるのだが、ドイツでは自殺幇助は違法行為ではないらしい。さらにベルギーやスイスなどでは、直接的安楽死までが合法なのである。
 そしてなんと安楽死を求めスイスへ渡航する外国人(その多くが英国、ドイツからの自殺旅行者)が年々増加しており、2008年からの5年間で611人に上るというのだ。つまりこの映画が創られた背景には、ドイツで国をあげて『自殺介助問題』が議論されているからにほかならない。

 本作は前述した通り、明るいロードムービー仕立てになっているのだが、手回し良くラストシーンを想像してしまうのか、観客の多くが終始泣き続けてしまうという異常な状況に驚いてしまった。逆にいつも泣き虫の私が全く悲しみを感じなかったのも異常なのだろうか。
 ただ本作は余りにもあっさりと尊厳死を描き過ぎているところが物足りないのだ。そもそも尊厳死とは何なのか、ハンネスが尊厳死を選択しなければならなかった苦悩の過去も余り語られていない。また最愛であろう夫婦間の葛藤もほとんど暗黙の了解で括っているだけなのだ。
 
 本作を上映したヒューマントラストシネマ有楽町を出て、近くの東京国際フォーラムにある『相田みつを美術館』に立ち寄ってみた。ここにくるのはこれで3回目だが、いつ来ても相田みつをの書と詩には心が洗われる。そのなかの一作に『いのち』という詩があった。
 
 アノネ
 にんげんはねえ
 自分の意志で
 この世に生まれて
 きたわけじゃねんだな
 だからね
 自分の意志で
 勝手に死んでは
 いけねんだよ

 みつを

 自分を殺すのは自分の自由ではないかと言う人もいる。だが自分の命は自分だけのものではないことも確かである。自分を大切に育ててくれたひと、自分を愛し続けてくれているひとがいることも忘れてはならない。
 従って本作の主人公のように、それらの人々の思いを無視して自分の願望だけで尊厳死を強行するのは優しさに欠けてはいないのか。まだ30代で若いのだから、もう少し苦しさに耐えて自分を愛してくれる人々との時間を過ごせなかったのだろうか。そのあたりの葛藤が全く伝わってこなかったのが残念である。

 また尊厳死そのものについても、身体も心も全く機能せず、これ以上生かしても医療費の無駄であり、周囲の人々もその死を納得できるような場合にのみ許されるものではないかと思っている。それが本当の優しさではないだろうか。

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2016年5月21日 (土)

進撃の巨人

★★★

製作:2015年日本 上映時間:98分 監督:樋口真嗣

  とにかくネットでの評価が異常に低すぎる。それで映画館には足を運ばなかったのだが、DVD化されたので、なぜそれ程までに低評価なのか、怖いもの見たさでレンタルすることにした。
 確かに飛び上がるほど面白い映画ではなかったのだが、CGの完成度も邦画としてはまずまずだし、ネットでの酷評ほど「ダメダメな映画」ではない気がする。どうしても原作ものは、人気が高ければ高いほど過剰な期待を抱いてしまうため、その反動として必要以上の酷評に陥り易いのである。ただ同じ原作ものでも、「恋愛もの」は少女マンガ発で女性が対象であり、かつ特撮がらみではないため余り酷評されないのであろうか。

 私自身はこの原作は読んでいない。もちろんその存在は知っていた。ただ中古書店などでパラパラと眺めた限り、余り興味が湧かなかっただけである。だから内容についての比較は出来ないのだが、逆に原作に対するこだわりがないだけ、客観的でフェアな立場で観ることが出来たはずである。
 だからもちろん酷評はしないし、CG映像もそこそこ楽しめたのだが、なにせストーリーが余り面白くないし、感動的なシーンも見つけられなかった。面白かったのは、序盤の教会に逃げ込んだシーンまでだろう。

 さらに二部作に分けるほどのボリュームもストーリー展開もなかったのも非常に残念である。私の場合はDVDレンタルだからそれほど腹も立たないが、映画館で1800円を二度も払った観客にしてみれば、きっとかなり不愉快だったに違いない。もしかするとそれも酷評の一因だったのかもしれない。いずれにせよ、本作は邦画の最新CG技術を確認するだけの作品であり、もうその目的は達したため、今後また続編が創られたとしても、次はDVDで観る必要もないだろう。

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2016年5月16日 (月)

海街diary

★★★★

製作:2015年日本 上映時間:128分 監督:是枝裕和

 本作もまたまた原作がコミックなのだが、少女マンガなのでアクションマンガとは違ってなかなか文学的な趣があった。また舞台となる鎌倉の、美しい四季折々の風景も見逃せない。
 さて物語は、15年前に姿を消した父親の訃報が届くところからはじまる。鎌倉で暮らしている三姉妹の幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)は、父の葬儀場所である山形へと向かう。そこで初めて出会ったのが、異母姉妹のすず(広瀬すず)であった。この出会いがきっかけとなり、すずは鎌倉で姉3人と一緒に暮らすことになるのである。

 鎌倉の家は亡くなった祖父母が住んでいた古い家だが、かなり広いので姉妹4人が共に暮らしても何の不都合も湧かない。こうして四姉妹の新しい共同生活がはじまるのである。そしてすずは、鎌倉から通える高校へ転校し、姉たちの性格、仕事、恋愛、日常生活なども垣間見るようになるのだった。
 だからと言って何か特別なことが勃発する訳でもなく、淡々としたゆったりとした日々が、美しい風景とともに流れてゆくだけである。何か派手なことを期待する男性には多少退屈かもしれないが、じんわりと心温まる心地良い映画に仕上がっている。

 ことに四姉妹の性格、風貌が全く異なり、それぞれの良さや特徴がにじみ出ていて好感が持てるのだ。しっかり者の長女幸、あわてんぼうでズバズバものを言う次女の佳乃、ちょっと変わり者で呑気な三女千佳、そして素直で可愛い末っ子のすず、といった具合である。
 そしてラストは、気が付いたら自然に終わっているという、なかなか味のある手法で締めくくっているではないか。さすが第39回日本アカデミー作品賞受賞作品であり、ことに女性には必観の一本と言えるだろう。

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2016年5月12日 (木)

アイアムアヒーロー

★★★☆

製作:2015年日本 上映時間:127分 監督:佐藤信介

Iamahero
 またまた原作がコミックの作品である。同時期に上映している作品だけでも、『ちはやふる』、『テラフォーマーズ』、『スキャナー』、『僕だけがいない街』、『暗殺教室』、『ヒーローマニア』などがずらーりと並んでいる。まさに邦画はコミックからしか創れないのだろうかと、思い込んでしまいそうな勢いなのだ。

 それはそれとして、本作の原作コミックについては、主人公が銃を構えている表紙を見ただけで、中味は全く読んでいなかった。従ってパニックものだとは感じていたのだが、ここまでグロイ作品だとは思わなかった。
 まさに人肉・ミンチ・血みどろ・首切り等のオンパレードなのだ。とにかく、本当にこれが邦画なのかと疑ってしまうほど凄まじい。
 またCGの出来もなかなか素晴らしいのだが、私的にはスプラッタシーンはごめんなさいである。それなのに、若い女の子の二人連れが楽しそうに観ていたのには驚いてしまった。

 まあ主人公が大泉洋で、ヒロインが有村架純と長澤まさみなので、なんとか普通に観てしまうのだけれども、実は物凄くグログロだと言うことを承知しておこうね。

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2016年5月 8日 (日)

テラフォーマーズ

★★★

製作:2016年日本 上映時間:108分 監督:三池崇史

Teraf
 原作はまたまたコミックである。ここ最近の邦画は、大半が人気コミックを原作にしている。やはり、既にコミックでヒットを実証済だし宣伝効率も高いため、こうした傾向に走ってしまうのかもしれない。本作もコミックが原作らしいが、私自身はまだこのコミックは未読である。従って原作に惹かれてこのタイトルを選んだわけではない。単にあの『エイリアン』のようなホラーチックなSFが観たかっただけである。

 さすが人気コミック発で、ストーリーはなかなか興味深い。近未来のお話である。地球で猛烈な人口増加が続き、人類は火星への移住を計画する。そしてまず火星の環境を地球に近づけるため、コケと原始時代から地球に生息し、環境変化に強いゴキブリを火星へと送り込んだのである。さらにその500年後、移住計画の最終段階として、今度はそのゴキブリを駆除するため、個性的な15人の隊員が火星に派遣される。ところがなんとゴキブリたちは、強力なゴキブリマンに進化していたのだった。そして彼等こそが、テラフォーマーと呼ばれていた新生物だったのである。

 そのゴキブリマンの造形や動作はCGで描かれており、なかなか見応えがありスピード感もあった。さすがワーナーが配給しただけあり、邦画と言えどもVFXの出来栄えはまずまずかな。と思ったのもつかの間、隊員たちが昆虫人間に変身した途端に、かなりの失望感を抱かざるを得なかった。
 なんと変身後の姿は、TVの仮面ライダーに登場する怪人たちの着ぐるみそのものだった。また、ゴキブリマンとの戦闘もプロレスゴッコに終始するばかりなのだ。

 なぜ変身後の怪人を、ゴキブリマンと同様にCGで描き、もっとド派手な戦闘シーンを創出できなかったのだろうか。ストーリーとゴキブリマンの出来が良かっただけに、この状況は非常に残念である。
 たぶんネットでの評価が異常に低いのも、きっとこのせいかもしれないと感じてしまった。またラストシーンも単調で全く捻りがない。とかく詰めが甘いのが、邦画のSF映画の特徴である。悔しいが世界的な水準に到達するのは、まだまだ時間がかかりそうだね。

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2016年5月 4日 (水)

あやしい彼女

★★★★

製作:2016年 日本 上映時間:125分 監督:水田伸生

Ayashii
 歌あり、笑いあり、涙ありの楽しくて良質のファンタジー映画なのだが、韓国映画『怪しい彼女』のリメイク版というところが非常に残念である。もし本作がオリジナル作品なら、満点に近い出来栄えと言っても過言ではないだろう。

 ストーリーのほうは、女手一つで一人娘を育てた70代の老婆(倍賞美津子)が、摩訶不思議な写真館で写真を撮ると、なんと20歳の若々しい娘(多部未華子)に変身してしまうのである。その後言動がおばちゃんの奇妙な娘になって昔の歌謡曲を歌うと、これがまた心のこもった良い歌声で、聞く者たちに大感動を与えてしまうのだった。

 たべちゃんが歌うのは、1960年代から1970年代のヒットソング数曲なのだが、小さかった娘を抱えて苦労した昔の映像が映される中で歌う『悲しくてやりきれない』が一番心の中に染み込んできた。観ているほうも、なんだか自分の少年・少女時代がオーバーラップして、涙が止まらなくなってしまうのである。
 この曲ってこんなに良い曲だったのか、と、改めてつくづく感心してしまうから不思議なのだ。そして観客のほとんどが、感動の波に飲み込まれてしまうのである。それに若いたべちゃんが、涙を流しながら熱唱している姿も実に神々しかった。

 やや微妙な部分もないことはないが、たべちゃんの歌唱力はごりっぱだと言ってもよいだろう。本作はまさにたべちゃんの魅力を100%発揮した超娯楽作品と言える。また老女役の倍賞美津子の熱演も、決して見逃すことは出来ないはずである。
 オリジナルの韓国版は観ていないのだが、機会があったら是非見比べてみたいものである。日本版は懐かしい歌謡曲に感動したわけだが、韓国版では歌の部分に感情移入ができないと思うので、たぶん日本人には日本版のほうが感動的なのではないだろうか。

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