ルーム
★★★★☆
製作:2015年 米国 上映時間:118分 監督:レニー・アブラハムソン
7年間に亘って狭い部屋に監禁され続けた女性・ジョイと、そこで生まれた息子・ジャックの話である。と言うと怖くておぞましいだけの話を想像するだろう。もちろん怖い話に違いないのだが、監禁生活は前半だけで、やがて二人は必死に外界へ脱出し、衛星を使ってあっという間に犯人は逮捕されてしまうのである。
もしこの映画が単なるサスペンス映画なら、ここでザ・エンドとなってしまうのだが、二人の監禁生活は序章に過ぎなかった。この作品の真のテーマは、心身ともにズタズタに傷ついた二人が、どのようにして社会復帰できるのかということなのである。
また一番怖いのは犯人ではなく、近親者や親友、マスコミたちだったというシニカルな現実。そして死ぬほど可愛い息子が、あの忌まわしい犯人の子でもあるという、どうにもならない狂気の事実。
たぶんジョイが行方不明なってしまったことが原因で、監禁状態になっている間に父母は離婚してしまった。そんなこともあってか、監禁状態のときはあれほど強かったジョイの心も、元の世界に戻るにつれてだんだん破壊されはじめる。逆に監禁されていた部屋だけが、この世の全てと信じていた無菌状態の息子のほうは、当初現実社会とのギャップに馴染めなかったものの、その成長力と順応性が著しく、次第に現状に慣れ親しんでゆくのである。
傷心のジョイを演じたブリー・ラーソンは、この作品で『アカデミー主演女優』に輝いた訳だか、それよりも息子のジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイに主演男優賞を捧げたい。それくらいこの子役の演技と存在感は圧倒的にズバ抜けていた。そしてこの少年の存在こそが、この映画を暗くじめじめした作品から、ヒューマンで生き生きとした作品に昇華する原動力となっていたような気がする。
またサスペンスから一転してヒューマンという流れとなり、あの忌まわしい『ルーム』にどのような落とし前をつけるのかと、チラチラ考えながらスクリーンに没頭していた。そうこうしているうちに、母子は警官立会いのもとで、あの忌まわしいルームを再訪する。そこで少年が気付いたことは、「こんなに汚れた小さな場所だったのか」という当たり前の真実だった。ここで観客たちは、思わず静かなる感動に打ち震えてしまうのである。
実に見事な収束ではないか!。いずれにせよ、親子ともどもの監禁、さらには監禁からの脱出劇、そして傷心の社会復帰という、斬新な流れと問題提起手法である。さらにそれに加え母子の抜群の演技力には、呆れるほど痺れてしまった。
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