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2016年2月12日 (金)

ジパング

著者:かわぐちかいじ

 2002年に第26回講談社漫画賞一般部門を受賞した戦記マンガである。と言っても、単なる戦記物ではなく、自衛隊のイージス艦が隊員を乗せたまま、第二次世界大戦の真最中である1942年にタイムスリップしてしまうところから始まるのだ。
 レーダーやミサイルという現代兵器を搭載しているイージス艦にしてみれば、当時の米軍戦艦や戦闘機など物の数ではない。ところが自衛隊員たちには、自衛のため以外の戦闘はしてはいけなという戒律が沁み込んでいるため、積極的な攻撃は全く出来ないのであった。

 また自衛隊員に救助され、歴史のからくりを覗いてしまった帝国海軍の草加拓海少佐は、原爆による日本の敗戦を知ってしまう。だが彼は歴史をねじ曲げても大日本帝国を守り、新しいジパングを目指すことを決意する。そして米国より先に原爆を創り上げ、それを戦艦大和に乗せて米国軍へ向かうのであった。
 だがそれを阻止するのは米軍ではなく、未来から来た自衛隊員という皮肉。その結果として歴史は大きく捻じ曲げられることはなかったのだが、それと引き換えのように、たった一人の隊員だけを残し、全ての自衛隊員は死亡して、歴史から抹殺されることになってしまうのである。

 なかなか興味深いストーリーであり、歴史上の人物も数多く登場するので大いに勉強になるのも嬉しい。従って全43巻という大長編にも拘らず、あっという間に読破してしまった。
 だが何となく物足りない。自衛隊員が余りにも保守的過ぎて、ほとんど米軍を攻撃しないどころか、歴史を守るために逆に米軍を守るという結果になるのが歯がゆいのだ。

 どうせマンガなのだからと言っては失礼だが、この際歴史なんぞどうでもいいじゃないの。いずれにせよタイムスリップしたこと自体が荒唐無稽なのだから、米軍を完璧に叩き潰し日本軍を勝利に導いてくれたほうが溜飲が下がるというものだ。
 そして変貌してしまった未来、つまり歴史に存在しない『ジパング』の姿を紹介し、パラドックスで捻じりながら締めくくって欲しかった、という気分で一杯なのである。まあ43巻の大作なので仕方がないものの、ちょっと真面目過ぎたのか、或は気取り過ぎたのではないだろうか。

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