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2015年12月19日 (土)

浮草

★★★★

製作:1959年日本 上映時間:119分 監督:小津安二郎

 本作は1934年の小津監督作品『浮草物語』を同監督自らリメイクした作品である。のほほんと穏やかな作品が多い小津映画の中では、珍しく脂ぽい作品であり、根無し草のような旅役者の世界を生々しく描いている。

 物語は旅回りの嵐駒十郎一座が乗った船が港に着くところから始まり、最後は一座が解散して汽車で帰るところで終わる。ところがこの町には、駒十郎と恋仲だった一膳飯屋のお芳と、昔二人がもうけた一人息子の清が住んでいたのだ。これにやきもちを焼いた連れ合いのすみ子が絡んで、ひと騒動起きてしまうのである。

 昔の映画なので当然だが、映画のポスター、チンドン屋とそれにまとわりつく子供たち、三等車、シュミーズ姿の女、ステテコ姿の男など、既に存在しなくったものが実に懐かしいのだ。またそれ以上に、中村鴈治郎、京マチ子、川口浩、若尾文子、杉村春子、野添ひとみ、笠智衆、浦辺粂子などなどが、若々しくて奇妙な気分になってしまった。

 まあ懐かしがってばかりいても仕方がないのだが、この映画はすみ子(京マチ子)の燃えるような嫉妬心にはじまり、ラストに煙草の火をつけるシーンで締めくくっているところが、実に見事なバランス配合である。結局旅役者の駒十郎は、落ち着いた堅気の生活は似合わず、あてのない旅に出ることしか生きる術を知らないようである。まさにこの流れが、山田洋次監督の『男はつらいよ』に繋がって行ったのであろうか。

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