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2015年12月の記事

2015年12月31日 (木)

妻への家路

★★★★

製作:2014年 中国 上映時間:110分 監督:チャン・イーモウ

 舞台は文化大革命が終結する1977年頃の中国である。
 逮捕され一時は逃亡したものの、再逮捕されたルー・イエンシーだったが、文革終結により20年ぶりに自由の身になる。それで自宅に帰って妻のフォン・ワンイーと再会したものの、どこか彼女の態度がよそよそしい。そしてあなたは「方さん」でしょ、出て行ってと騒ぎだす始末。彼女は余りにも長期間に亘り夫を待ち続けたせいか、一種の記憶障害を患っていたのであった。

 その後夫のルー・イエンシーによる涙ぐましい「記憶復活」処方がいろいろと繰り広げられる。そしてピアノを弾いていたときに、もう少しで記憶が甦りそうになるのだが、残念ながらもう一歩のところで終わってしまう。そして最後は、昔書いた手紙を集めて手紙の読み人になるのだが・・・。

 これ以上はネタバレになるため書かないが、この映画の骨子は文化大革命の批判であろう。また現実感と芸術性を保持するため、最後まで徹底的に切なさを追及し続けた感がある。まあそれはそれで素晴らしいのだが、私的には月並みでもいいから、ラストは大きく盛り上がって、もっともっと怒涛のように泣かせて欲しかったね。

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2015年12月25日 (金)

ヴィレッジ

★★★☆

製作:2004年 米国 上映時間:108分 監督:M・ナイト・シャマラン

 ある小さな村のお話です。村を囲こむ森には、怪物が住んでいて、村人達は森に入ることが出来ません。従って森の向こうにある町へ行くことも出来ないのです。
 ある日、突発的な事件が起こり、ヒロインの婚約者が、生死の危機に陥ります。それで彼女は、目が不自由にも拘わらず、町に薬を買いに行く事を決心するのです。そして、あの怪物のいる森の中に入ってゆくのでした。
 とまあ、こんなストーリー展開で、美しい自然と小さな村の映像が続いてゆくのですが・・・。

 この作品については、全く予備知識がなかったせいか、初めはお伽話なのか、スリラーなのか、怪物ホラーなのかと、どきどきしながら観ていました。
 それで話が進んで、ヴィレッジの謎が解明されると「なるほど!」と妙に感心してしまいました。

 確かに細かいことを追求すると、やれ「どうやって服や食料を調達しているのか」などという愚問を発する人もいるかもしれません。
 しかしこの作品は、ある意味ファンタジーですから、余り生真面目に考えても意味がないでしょう。ファンタジックスリラーとしては、風刺味も利いてかなり良い出来だったと思います。
 ただ村の大人達が集まって、これからの村の運営を語るラストシーンは、ちょっと工夫が無さ過ぎる感じがしました。同じく小さな村を舞台劇風に描いた『ドッグ・ヴィル』の衝撃のラストと比べると、もうひと捻り出来なかったのがやゝ心残りではあります。

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2015年12月19日 (土)

浮草

★★★★

製作:1959年日本 上映時間:119分 監督:小津安二郎

 本作は1934年の小津監督作品『浮草物語』を同監督自らリメイクした作品である。のほほんと穏やかな作品が多い小津映画の中では、珍しく脂ぽい作品であり、根無し草のような旅役者の世界を生々しく描いている。

 物語は旅回りの嵐駒十郎一座が乗った船が港に着くところから始まり、最後は一座が解散して汽車で帰るところで終わる。ところがこの町には、駒十郎と恋仲だった一膳飯屋のお芳と、昔二人がもうけた一人息子の清が住んでいたのだ。これにやきもちを焼いた連れ合いのすみ子が絡んで、ひと騒動起きてしまうのである。

 昔の映画なので当然だが、映画のポスター、チンドン屋とそれにまとわりつく子供たち、三等車、シュミーズ姿の女、ステテコ姿の男など、既に存在しなくったものが実に懐かしいのだ。またそれ以上に、中村鴈治郎、京マチ子、川口浩、若尾文子、杉村春子、野添ひとみ、笠智衆、浦辺粂子などなどが、若々しくて奇妙な気分になってしまった。

 まあ懐かしがってばかりいても仕方がないのだが、この映画はすみ子(京マチ子)の燃えるような嫉妬心にはじまり、ラストに煙草の火をつけるシーンで締めくくっているところが、実に見事なバランス配合である。結局旅役者の駒十郎は、落ち着いた堅気の生活は似合わず、あてのない旅に出ることしか生きる術を知らないようである。まさにこの流れが、山田洋次監督の『男はつらいよ』に繋がって行ったのであろうか。

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2015年12月15日 (火)

横道世之介

★★★★

製作:2012年日本 上映時間:160分 監督:沖田修一

 ちょっと脳天気で図々しいのだが、明るく人柄の良い青年世之介のおバカ映画なのかと思っていたら、あの悲劇の実話をモデルにしたシリアスなお話であった。そのことが分かるのは中盤過ぎなのだが、劇中にラジオのニュースでさらりと流れるだけなので、うっかりしていると気付かないかもしれない。
 それにしてもこの映画は忙しい。時間軸が頻繁に入れ替わり、1987年あたりの過去とそれから16年後の現代を行きつ戻りつ、良く見ていないと何だか良く判らなくなってしまう。

 またこの作品に登場してくる人々は、主人公の世之介以外全て身元がはっきりしない。ヒロインの与謝野祥子ですら、成金らしき横暴な父親の娘であるということ以外は全く判らないのである。それだけ世之介一人にだけ強烈なスポットライトを浴びせたのであろうか。とは言っても、祥子を演じた吉高由里子のお嬢様ぶりは、ちょっと太めだったが実に可憐で良かったね。もちろん世之介を演じた高良健吾もハマリ役だが、綾野剛、朝倉あき、伊藤歩、柄本祐などもなかなか良い味を出していた。

 ただ上映時間160分は、ちょっと長過ぎたのではないだろうか。だいたいこの映画はどこで終わってもおかしくないし、逆にどこで終わってもおかしいのだ。そしてとことんしつこいようで、いつの間にか別れていたという、あっさり感も漂う一風変わった妙な感覚の作品である。まあ個人的には決して嫌いな作風ではなく、そこそこ楽しめた映画といえるだろう。

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2015年12月11日 (金)

たそがれ清兵衛

★★★★

製作:2002年 日本 上映時間:129分 監督:山田洋次

 藤沢周平と山田洋次監督のコンビが良かったのだろう。日本人の大人の心にくすぶっているもやもやした何かを断ち切ってくれた感がある。
 また真田広之は、日常生活はだらしなさそうだが、なんでもこなせる役者になったようだ。宮沢りえも、北の国からあたりから哀愁を感じさせる女性に成長したと思う。

 また試合前日に一生懸命刀を研ぐ姿や地味な中にも壮絶だった立ち会いにもかなりの緊張感が漂っていた。最後の終わり方については、多少文学性が薄らいでも、もっと二人と娘たちのハッピーな時間を作ってほしかった。そのあたりの単純な「幸せの黄色いハンカチ」こそが観る側にとっては、感動の嵐となるのになあ。実に惜しかった。

 またラストシーンに岸恵子が登場する必要があったのだろうか。実を言えばこの作品のタイトルこそが、本ブログのネーミングヒントとなったのである。

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2015年12月 8日 (火)

A・Li・Ce

★★★★

製作:1999年 日本 上映時間:85分 監督:前島健一

 

  モーションキャプチャーによりフル3DCGを実現したデジタルアニメである。
  月世界観光ツアーへ向かったシャトルが墜落。タイムスリップにより30年後の世界に迷い込んだ少女が、荒廃した未来世界で見る自分とは?
 そして世界を変えた原因も、自分にあることを知り、更にはそのすさんだ未来を平和な世界に戻すことも自分の使命であることを理解する。

 ラストシーンは、メビウスの輪のように捻れながら見事に初めに繋がってゆき、タイムパラドックスを解消してゆく。
 ストーリーはとても興味深く面白かったのだが、なにせ低予算のためか、動きが少なく、表情の乏しいCGキャラであったことが、非常に残念で堪らない。

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2015年12月 3日 (木)

怒りの荒野

★★★☆

製作:1967年 イタリア 上映時間:115分 監督:トニーノ・ヴァレリ

 ジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフが共演した懐かしきマカロニウエスタンである。
 スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は娼婦の子という生い立ちから住民たちに蔑まれ、貧しい掃除人として暮らしていた。そこにある日、凄腕で非情のガンマン、タルビー(リー・ヴァン・クリーフ)が町に現れる。

 スコットはタルビーの剛腕に憧れ、彼の弟子となり早打ちの腕を磨いてゆく。そしてタルビーはスコットに「レッスン」という形で『ガンマン十戒』を教えるのだが、このガンマン心得十ヶ条が面白い。
教訓の一 決して他人にものを頼むな
教訓の二 決して他人を信用するな
教訓の三 決して銃と標的の間に立つな
教訓の四 パンチは弾と同じだ。最初の一発で勝負が決まる。
教訓の五 傷を負わせたら殺せ。見逃せば自分が殺される。
教訓の六 危険な時ほどよく狙え。
教訓の七 縄を解く前には武器を取り上げろ。
教訓の八 相手には必要な弾しか渡すな。
教訓の九 挑戦されたら逃げるな。全てを失う事になる。
教訓の十 殺しは覚えたらやめられない。

 ただこの『ガンマン十戒』に沿ったストーリー展開がもっとあっても良かったのではないだろうか。それにしても最後の師弟対決で、皮肉にも弟子に教えたこの『ガンマン十戒』が仇になろうとは誰が予想しただろうか。

 この当時のジュリアーノ・ジェンマは、まだ若々しくはじけるようだが、存在感のほうはリー・ヴァン・クリーフには全く及ばない。とにかく悪人なのか善人なのかはっきりしない非情な男を演じさせたら、リー・ヴァン・クリーフの右に出る者はいないだろう。
 なお余談だがあのクエンティン・タランティーノは、本作の大ファンであり『キル・ビル Vol.1』や『ジャンゴ 繋がれざる者』で本作の音楽が使用されているという。

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