心が叫びたがってるんだ。
★★★★☆
製作:2015年 日本 上映時間:119分 監督:長井龍雪
テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメンバーが集結して製作した青春アニメである。だがアニメとバカにしてはいけない。とにかく泣けるのだ。いい年こいて、映画館の中でボロボロに泣き崩れてしまった。
まずオープニングが面白悲しいのである。丘の上に立つ王城のようなラブホテルの前で、自分もいつかは王子様と一緒にこのお城の中に入りたいと願う幼気な少女。とお城の中から車が少女の前を横切ってゆくのだが、なんとその車を運転していたのは少女のパパだったのである。
パパは王子様だったんだと錯覚し、いま観てきたことをママに話してしまう。結局そのことが原因でパパとママは離婚する羽目に。そしてパパは、「こうなったのはお前のおしゃべりのせいだ」と捨て台詞を吐いて少女の前から消えてしまうのである。その日から少女は、玉子の妖精に喋れなくなる呪いをかけられたと信じ込んでしまう。
それから10年以上経ち、この少女・成瀬順は高校生になっているのだが、相変わらず貝のように口を閉ざし、無理に喋ると腹痛を催すようになってしまったのである。そんなある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員会のメンバーに指名されてしまう。他に指名されたメンバーは、音楽部の坂上拓実、野球部の田崎大樹、チアリーダーの仁藤菜月であった。
この4人は全く性格や趣向が異なっていたが、それぞれが「言いたいことをきちっと言えない」という面では共通していたのである。また喋れない成瀬順でも、歌なら伝えたいことを声に出せるということが分かり、順が脚本を書き主役を演じるミュージカルをやることに決まってしまうのだった。
はじめはやる気のなかったクラスのメンバーも次第に盛り上がり、本番当日はきっと大成功と思いきや、前日になって突如事件が起きてしまうのである。さてミュージカルは無事に終わるのだろうか。
ところで、幼い時に両親が離婚したのは順だけではなかった。坂上拓実も同様であり、こちらは忙し過ぎる父親に代わって、祖父母が一緒に暮らしていたのである。また拓実は仁藤菜月とは中学時代からの学友なのだが、中学時代から彼女に打ち明けられないことがあった。
そしてそれは菜月も同様だったのである。その菜月に告ったのは田崎大樹だが、彼はあっさり振られてしまう。また怪我をして野球が出来ない大樹は、後輩たちと上手くゆかずいつもイライラしていた。
こんな具合にそれぞれが青春しまくり、悩みながらも勇気を持って前向きに生きてゆく姿が描かれてゆく。ストーリーも良いが音楽も良い。そして場違いのおじさんも、青春時代の思い出が、脳裏の中を走馬灯のように駆け巡り、熱い涙でぐしゃぐしゃになってしまったのである。
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