パラドックス13
著者:東野圭吾
いかにも私好みのタイトルだったので衝動買いしてしまったのだが、相変わらずの読書不精で1年以上も積読状態のまま本棚の隅っこに放置したままにしていた。だが読み始めると、この562頁の分厚い文庫本を、一気に読み耽ってしまったのである。
さてタイトルの13とは何を意味するのだろうか。3月13日13時13分13秒、突然街から人と植物以外の生物が消えてしまう。だが
無人のはずだった東京には、なんと境遇も年齢も異なる13人の男女だけが生き残っていたのである。そして首相官邸で見つけた『P-13現象』を記す機密文書には、13秒間の空白の謎が・・・。つまりタイトルの『パラドックス13』とは、全てが13に係ってくる大いなる謎と矛盾を意味しているのであろう。
この小説を読むほどに、東京中心を襲う直下型大地震の恐ろしさを思い知らされる。飲料水や電気が供給されなくなるのは当然だが、首都圏を縦断する一級河川が氾濫して洪水となる。網の目のように広がる地下鉄によって道路が陥没し、地獄行きの暗黒トンネルと化してしまう。もちろん食べ物も、腐敗したり流されたり消費して徐々に消失してゆくだろう。
またこの小説の世界では、13人しか存在しないので、誰も救援に駆けつけてくれない。だから13人全員が一体となって力を合わせて、なんとか凌いでゆかねばならないが、それも限界があるし、そもそも13人全員の心が一つになれるはずもないであろう。
こうして物語の大半は、物語中の天候と同じように暗くくすんでほとんど救いようがない展開に終始する。僅かに冬樹と明日香の淡い恋心だけが唯一の救いなのだが、それもこうしたパニック状況下では成就するはずもない。そして一人死に二人死に、生存者が10人以下になった時、全員が失望しながらも、僅かな希望の灯りを求め仲間達は分裂してゆくのである。さて彼等は一体どうなるのか、謎の13秒間とは一体何なのか。極限状態の中で彷徨う人間の真理を追究した意欲作と言えよう。
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