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2015年8月の記事

2015年8月28日 (金)

九月の恋と出会うまで

著者:松尾 由美

 志織は入居したばかりのマンションで、不思議な現象に遭遇する。なんと隣室に住んでいるが、ほとんど話したことのない平野という男性の声が、エアコンの穴から聞こえてきたのだった。それも一年後の未来から話していると言うのである。
 はじめは信じられない志織だったが、翌日から先一週間分の新聞見出しを言い当てられ、未来からの声だということを信じざるを得なかった。それで現在の平野を尾行すると言う、奇妙な未来の平野の依頼を受けてしまうのである。

 登場人物が不動産屋、大家とマンションの住人4人しか登場しない。階下に住んでいる倉さんや祖父江さんとは、少し話をするのだが、それだけでほとんどいてもいなくてもよい存在だ。面白いのだがどちらかと言えば、ストーリーよりもアイデア優先の小説と言い切って良いかもしれない。

 タイムトラベルロマンスにややミステリアスな展開も含んでいて、梶尾真治の作品と似たような味がするのだが、過去改変の影響について、いま一歩深みにはまり切っていないところが物足りない。また序盤はやや読み辛いものの、中盤からは一気に読み抜けるところは好感が持てるものの、シラノの正体はすぐ分かってしまったし、その種明かしも単調過ぎるような気がする。
 まあワインにフレンチやイタリアンではなく、香り良いコーヒーを飲みながら、とりあえず美味しいパンケーキを食べたいと言う方には、ぴったりの作品かもしれない。

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2015年8月25日 (火)

タイム・チェイサー

★★★☆

製作:2013年 カナダ 上映時間:93分 監督:リッチー・メータ

 12年前に出張したまま行方不明となってしまった父親。だが母親は夫は死んだのか、女と逃げたのか、生活を捨てたのか判別できず苦悩の末自殺してしまう。ところが大学教授の祖父は、娘の夫は失踪したのではなく、タイムトラベルしたまま事故に巻き込まれてしまったのではないかと推測していた。だがそんな荒唐無稽な話は娘に告げられず、天才的な頭脳を持つ孫のエロルにだけ教え、一緒にタイムマシンの開発をすることになるのである。

 タイムマシンの話が出るまでは、父親の失踪の謎と、母親の苦悩を描いたサスペンスドラマのようであった。だがタイムマシンはなかなか完成しない。そしてエロルは過去を変えることにより、恋人との幸せな生活が消滅することを恐れて研究を止めてしまう。だがある出来事がきっかけとなり、見えなかった方程式が解けて、あっという間にタイムマシンが完成するのである。
 そして父親がタイムトラベルした過去へ出発する。なにせタイムトラベルはこの一回だけである。そして父親に遭遇し感動のラストへ。となんとなく『オーロラの彼方に』と似たような展開だが、本作のほうが父親の存在感が薄いような気がする。

 まあタイムトラベルものとしては、まずまずのストーリー構成だと思うのだが、なにせ主役のエロルを演じたハーレイ・ジョエル・オスメントがミスキャストだったのではないだろうか。彼は過去に天才子役と騒がれ「シックスセンス」や「A.I」などで、インパクトのある役柄をこなしていたことを知る人は多いはずである。
 そのハーレイ・ジョエル・オスメント君も、20代後半となったのだが、なんとチビで小太りのうえ、似合わないヒゲ面で、誰が観ても天才大学生とは思えない風貌なのだ。これでこの作品の価値がかなり萎んでしまった気がする。主役のイメージは、恐ろしいほど映画全体の完成度に影響するものである。
 もうひとつタイムマシンが余りにもチープ過ぎるのも悲しいね。ほかにお金をかけるシーンはほとんどないのだから、タイムマシンのセットとタイムトラベルシーンくらいは、もう少しましな創り方が出来なかったのだろうか。なぜプロの監督にそんなことが出来なかったのか、非常にもったいないし残念である。

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2015年8月20日 (木)

日本のいちばん長い日

★★★★

製作:2015年日本 上映時間:136分 監督:原田眞人

Longlongday
  半藤一利が書いたノンフィクションで、太平洋戦争で日本が降伏を最終決定した昭和20年8月14日から、国民に正式発表される翌15日正午までの政府中枢の緊迫した長い1日を描いている。またこのタイトルは、ノルマンディー上陸作戦を描いた「史上最大の作戦」という米国映画の原題「ザ・ロンゲスト・デイ」から拝借したという。

 さて戦争を始めるのは簡単だが、終わりにするのはなんと大変なことか。二つの原爆を落とされて敗色の濃くなった日本。武力とパワーが圧倒的にまさる米国相手に、日本の命はもはや風前の灯火であった。だがいまだ兵力を温存している陸軍は、最後の一兵卒が消滅するまで戦うべきだと主張する。
 そして陸軍将校の一部には、現人神でかつ最高司令官である天皇に楯突いても『国体』を守ると息巻いていた。ここで言う『国体』とは、「天皇を中心とした秩序(政体)」のことであるが、彼等の行動は明らかに矛盾している。つまり建て前は『国体』の維持であるが、本音は軍人としての存在感の喪失を恐れただけではなかったのだろうか。

 そして実際にクーデターは勃発したのである。天皇の肉声によって終戦を宣言する『玉音放送』の原盤を奪取しようと、陸軍の若手将校たちが、なんと皇居に乗り込むのである。だが幸い玉音盤は見つけられずクーデターは失敗に終わり、日本は無事終戦を迎えることが出来たのは本当によかった。
 もしこのクーデターが成功し無意味に終戦を遅らせてしまったら、おそらく原爆が東京にも落とされ日本人のほとんどが死傷したに違いない。そんなことになれば、多くの現代日本人、もちろん私自身も誕生していなかっただろう。このように大変な経緯を経て終戦を迎えられたことを我々は深く心に刻んでおくべきである。こうして日本の軍人、いや武士の世の中は、完全に消滅したと言えるだろう。

 私は原作も読んでいるし、1967年の岡本喜八監督作品も観ている。原作はまさにドキュメンタリーであり、岡本作品はそれを意識したタッチで、重厚に描かれているのが印象的であった。その岡本作品についての特徴を簡単にまとめると次のようになるだろう。
 上映時間が157分という長丁場だったこともあるが、タイトル同様とにかく長いのだ。また白黒映像であり超一流の俳優が多数出演しているためか、全体的に物凄い緊迫感が漂っていた。ことに軍人たちの反発、つまり終戦による軍人社会終焉と屈辱感に耐えられない者たちの大いなる葛藤が痛いほど伝わってくる。それだからこそ、阿南陸軍大臣の切腹シーンも残酷で凄まじいのだろう。

 また昭和天皇の存命中に製作された映画なので、天皇を演じた松本幸四郎の姿ははっきり映さず背後からの映像が多かった。さらに天皇が「自分に何があっても良いから、国民のために終戦にしたい」と言う決断のお言葉には、スクリーンの中だけではなく、観ている者も涙でぐしゃぐしゃになってしまった。この天皇の決断には、永遠に感謝しなくてはならないだろう。

 さてだいぶ前置きが長くなってしまったが、そろそろ原田眞人監督の本作品についてのレビューも取りまとめておこう。
 とりかく原作を読み岡本作品も観たあとで本作を観たものだから、ストーリー展開云々よりも、どうしても比較論的なレビューになってしまうことをお許し願いたい。
 まず一番印象に残ったのは、カラー作品でありながら、モノクロタッチの落ち着いた美しい映像であることだ。映像技術やカメラワークなどは、時代の特権で岡本作品を凌駕しているのは当然であろう。

 また岡本作品では、女優が殆ど出演しない(唯一鈴木総理の私宅で新珠三千代がちらっと出るだけ)まさに男の映画であったが、本作では大臣たちの家族も出るし、なんと阿南大臣の妻が切腹の日に官邸まで、遠路はるばる歩いてやってくるのだ。
 さらには本木雅弘が演ずる昭和天皇が、正面切って堂々と何度も登場してくる。岡本作品では脇役扱いだった昭和天皇が、ほぼ主役級に昇格しているから驚きだ。これには賛否両論あると思うのだが、私には分かり易くて良かったと感じられる。
 ただ岡本作品の時代はまだ映画が全盛期であり、存在感のある大物や個性的な俳優が大勢闊歩していた。それに比べるとテレビ全盛の現代では、全般的に俳優が小粒になり、存在感のある大物俳優と言えば、鈴木貫太郎を演じた山崎努くらいしか見つからなかったのが淋しい。
 いずれにせよ玉音放送とは、我々戦後派にとって「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」だけの世界だったのだが、その裏にはこれだけいろいろな人々の葛藤と暗躍と努力があったことを、心の奥に刻んでおかねばならないだろう。

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2015年8月15日 (土)

プロジェクト・アルマナック

★★★☆

製作:2014年 米国 上映時間:106分 監督:ディーン・イズラライト

 何度も過去へのタイムトラベルを繰り返しているうちに、段々と制御不能な事態を招いてしまう若者5人を描いたSFサスペンスである。またこの作品は、ファウンド・フッテージという手法を使い、私の大嫌いな手持ちビデオカメラで写したPOV形式の低予算映画なのだ。

 ファウンド・フッテージとは、撮影者が行方不明などになり、それまで埋もれていた映像という設定の作品のことをいう。またPOV形式とは、カメラの視線と登場人物の視線を一致させるようなカメラワークのことを言い、『クローバーフィールド』、『クロニクル』、『プロジェクトX』などでも採用されている。
 これにより臨場感抜群でリアルな映像を創生しているつもりなのだろうが、ともかく私自身はこの「ゆらゆら、ザラザラ」した映像を観ていると船酔い状態となり、吐き気を催してしまうので、途中で目を閉じるか席を立ちたくなるのだ。

 そんな訳で、この映画も途中で気分が悪くなり、何度中座しようと思ったことか。ところがタイムマシンが登場すると、なんとか落ち着いて映像を見れるようになったのだから不思議なものである。そのタイムマシンが稼働するとき、空間を揺るがすようなエネルギーの暴発シーンがなかなか素晴らしく、一時的に低予算であることを忘れさせてくれたのが嬉しかった。
 
 また何度も過去をやり直すのだが、何かを変えることにより別の何かも変わってしまう、という因果律に逆らうことが出来ない。なんとなくあの『バタフライエフェクト』を彷彿させられるような展開でそれなりに面白かったのだが、過去での行動が余りにも単純だし、いくつかの矛盾点が目立ったのも残念でならない。もう少し手直しすればかなり完成度があがったと思うのだが・・・。

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2015年8月11日 (火)

ギャルバサラ -戦国時代は圏外です-

★★

製作:2011年日本 上映時間:110分 監督:佐藤太

Gall

劣等女子高生3人と男子高生2人の計5人が、奇妙な光に巻き込まれ戦国時代にタイムスリップしてしまう。そこでさっそく野武士に襲撃されたり、岐阜城ではなんとあの織田信長に謁見するという荒唐無稽な青春SFコメディーである。

 それにしても低予算の目立つB級映画で、武士たちの話し方や仕草が現代人そのまんまで、全く迫力がなく緊張感も湧かないのだ。コメディーと言ってしまえばそれまでだが、もう少し何とかならなかったのだろうか。お気楽な映画のはずだが、心が宙に浮いたままで何だか疲れてしまった。

 派手なタイトルと可愛いギャルのポスターに釣られてレンタルしてしまったが、余りにも突っ込みどころが大過ぎるし、製作者側のやる気の無さにも腹が立ってくる。もうこれ以上批評するのも面倒になってしまった。ただ唯一ラストに出てくる「ストラップ」だけが、タイムスリップもののお約束の締めくくりだったと言ってよいだろう。

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2015年8月 8日 (土)

篤姫ナンバー1

★★★

製作:2012年 日本 上映時間:86分 監督:小中和哉

 タイトルの『篤姫』は分かるのだが、そのあとに続く『ナンバー1』とは何なのだろうか。と思ってこの作品を観たのだが、江戸時代から現代にタイムスリップしてきた篤姫が、銀座ホステスのナンバー1を目指すと言うおバカなお話だった。
 江戸時代から現代にタイムスリップしてくるという映画は、これまでに時任三郎の『満月』、錦戸亮の『ちょんまげプリン』などがあるが、いずれも武士が現代にタイムスリップしてくるお話だった。ところが本作でタイムスリップしてくるのは、女性でしかもなんと歴史上の人物である天璋院篤姫なのである。

 江戸時代から現代にタイムスリップすれば、その文化の大きな差に驚愕し、なかなか現代には馴染まないものであるが、何とこの篤姫さまは、あっという間に現代人に溶け込んで、ミニスカートをはくどころかホステスになってしまうのだ。今も昔も若い女性の適応能力の早さなのだろうか。ただ銀座ホステスと言ってもアダルト色は皆無なので念のため・・・。
 それにしても、現代から江戸時代にタイムスリップすると、時代劇のセットなども含めてかなりの製作費を覚悟しなくてはならないが、この映画のように江戸時代のシーンが箱根の山奥だけだとお金がかからなくていいよね。いずれにせよ深刻な作品ではないのだから、ファンタジーコメディーと割り切ってお気楽に観るしかないよね。
 
 まあ低予算で荒唐無稽なハチャメチャ映画であるが、タイムスリップして来たのが篤姫だけではなく、世話係のタエと女忍者のみつも一緒だったという設定が面白かったかもしれない。この三人は三者三様で個性的に描かれており、なかなか笑える仕上がりになっている。
 タイムスリップものとしては、余り期待できないものの、ラストシーンでの『変形Vサイン』だけは、思わずニヤリとしてしまうだろう。まあ映画館で観ると腹が立つかもしれなが、レンタルDVDを家族揃って楽しむ程度なら許せる範囲であろうか。

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2015年8月 4日 (火)

タイタンズを忘れない

★★★★☆

製作:2000年 米国 上映時間:114分 監督:ボアズ・イェーキン

 1970年代が始まったころ。まだ人種差別が収まらない米国で起きた実話を下敷きに創られたスポコン・ヒューマン・ドラマである。
 ある町で白人の高校と黒人の高校が統合することになる。そして統合されたフットボールチームのヘッドコーチに、デンゼル・ワシントン扮する黒人コーチが抜擢されるのだった。それを歓迎する黒人と快く思わない白人たち。
 しかし夏休みの厳しい合宿を通して、選手たちは様々な苦難を乗り越えて、やっと一つにまとまってゆく。だが地元の住民たちは、根強い人種差別観を捨てきれず反発し続けるのだった。

 黒人大統領が誕生したにも拘らず、現在でも相変わらず根深い米国の人種差別問題。本作では差別を乗り越えて成長してゆく高校生を描いているが、主役であるはずのデンゼル・ワシントンがポスターでは小さく扱われているのが解せない。やはりそれも一種の差別なのだろうか。
 まあいずれにせよ、「お互い嫌いでも、相手を認めればきっといつの日か人として向き合える」や「南北戦争の死者から学べ!私たちが学ばなければすべて終わる」などなど、デンゼルの心に沁みる名言集が印象的な名作であった。

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