過去からの手紙
著者:岸田るり子
タイトルに惹かれて読んでみたのだが、タイムトラベルものではなく、ジュニア向けのファミリーミステリーだった。確かに母親が残した手紙が、事件のカギを握るポイントではあるのだが、「過去からの」という表現が紛らわしい。「過去から届いた手紙」のように錯覚してしまうタイトルだが、単純に「過去に書いた手紙」ということなのである。なーんだつまらない。
主人公である高校生の香山純二が、一週間振りに沖縄合宿から帰宅すると、家には母親の姿が見えない。そして郵便受けには2日前の新聞や手紙が詰まったままだ。さらにリビングのテーブルの上には母親の書いた不可解なメッセージが残されている。そして母が指定のゴミ袋を使用しなかったため、捨てたはずのゴミ袋が玄関前に戻されており、しかも不思議なことにそのゴミ袋の中に買ったばかりの肉がまるごと捨てられていたのである。
母親は一体どこに消えてしまったのだろうか、なぜ母は指定のゴミ袋を使わなかったのか、またなぜ買ったばかりの肉をそのまま捨ててしまったのか、そして置手紙の正体は・・・とバカバカしいような謎が一度に提示される。この謎を純二とクラスメートの音輪静海、上田貴之、花咲京子の4人で結成した「少年少女探偵団」が解明してゆくのである。
謎そのものは陳腐であるが、次々に新しい謎が発生し、それをパズルのように解いてゆくという技法だけは、さすが海外のミステリーを読み込んでいる著者の力量だと認めたい。ただストーリーテラーとしては、素人の域を出ていない感がある。それに登場人物が限定的で底が浅いし、純二の父親と静海の母親の存在感が全くないのは奇妙なくらいだ。
ジュニア向けの作品だから、と言ってしまえばそれまでだが、読み易いことを除けば中途半端で頼りない作品だと言いたい。また兄の幽霊が登場してみたり、たいして面白くもない料理談義も、ページ数を増やすために無理やり取ってつけたような感がある。そしてラストの収束も、ありきたりで鋭い捻りもない。まあ毒にも薬にもならないが、ジュニアならそこそこ楽しめるのかもしれない。
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