悼む人
★★★☆
製作:2015年日本 上映時間:138分 監督:堤幸彦
原作は天童荒太の長編小説で、2008年に第140回直木賞を受賞している。この小説はいまだ未読であるが、映画を観て是非とも読んでみたくなってしまった。映画が先か原作が先か、もちろん私にとっては、映画が先だと断言したい。
人の死に視点をおき、全国を放浪しながら死者を悼む青年。その主人公坂築静人を、イケメン俳優の高良健吾が、誠実に淡々とした雰囲気を漂わせながら演じていたのが印象的であった。
だが静人は、なぜ世を捨て家族を捨てて、全国行脚の旅に出たのだろうか。それは小さい時から慕っていた祖父の死が原因の一つだと語られていた。だがそのあたりの説明が不十分だ。原作はともかくとして、せっかく映像化したのだから、もう少し丁寧に描いても良かったような気がする。
ところで坂築静人は、単なる主人公という位置付けではなく、幾人かの登場人物とその人生を紹介する狂言回し的な役割も演じている。つまり静人そのものは、ほとんど無機質のような存在であるが、彼に係った人々の心象風景には心惹かれるものがある。
その静人をめぐる人間模様を巧みに演じたのが、彼と行動を共にする夫殺しの奈義倖世(石田ゆり子)、人間不信でヤクザな雑誌記者の蒔野抗太郎(椎名桔平)、末期ガンに侵されながらも息子静人を案ずる坂築巡子(大竹しのぶ)の三人である。なにせ芸達者揃い、三者三様でなかなか渋くて良い味を出していたと思う。
ちょっと気になったのが、現実離れしている主人公の行動だが、さらに悼むとき手を上げるポーズが、どこかの国の宗教儀式みたいでひいてしまった。このポーズは映画化で考えたのだろうか、それとも原作でもそのように記されているのだろうか。いずれにせよ、もう少しなんとかならなかったのだろうか。
また母親が危篤だと言うのに、女とアオカンしたり寄り道をしたり、というくだりが不謹慎だし同調できない。
それにオープニングがちょっとくどいが、ラストシーンは、あえてわかり辛い展開に終始し過ぎている感がある。どうも演出を気どり過ぎ、いや力み過ぎたのだろうか。
個人的にはもっと素直に、すっきりと分かり易く描写してくれるほうが好きである。だから、俳優さんたちのせっかくの好演が100%生かされない。やはり堤監督の独りよがり演出だったのだろうか。非常に残念である。
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