伝書鳩クロノスの飛翔
著者:中村弦
クロノスという愛称の報道用伝書鳩が、50年の時を飛び越えて昭和36年と平成23年を繋ぐ。そしてその奇跡の飛翔が、日本の危機を救うことになるという、ファンタジックなサスペンス小説である。
本作は時をテーマにしているが、時の流れを超えることが出来るのはクロノスだけであり、主役である昭和の坪井永史と平成の溝口俊太は、時を超えることは出来ない。彼等はただ自分たちが存在している世界で、必死になってその役割を遂行するだけである。
そして彼等だけではなく、多くの協力者たちがクロノスの奇跡を信じ、最後まで諦めずにひたすら前向きに行動することによって日本は救われることになる。
前半はやや読み辛いと感じたのだが、永史が拉致されるあたりからサスペンス風味が強くなり、俄然その成り行きが気になってくる。そしてラストの収束が実に見事であった。
謎の人物の正体、明和新聞社の旧館が取り壊されなかった理由、クロノスの剥製などが、巧みに循環して繋がってゆくのである。だから読み終わった後に清々しさが残るのであろうか。
さらに昔は新聞社で情報伝達手段として伝書鳩を使用しており、どの新聞社の屋上にも鳩小屋があったということを初めて知った。そして鳩たちは記事や写真を足や背中に付けて、新聞社の鳩小屋までの何百キロもの距離を飛んだらしい。
もちろん近年は通信機器の発達により、伝書鳩の役割は終わってしまった。だがかつて彼等が命がけで特ダネを運んでいたのかと考えると、実に感動的な話ではないか。
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