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2014年7月21日 (月)

白蓮れんれん

著者:林 真理子

 現在放映されているNHK連続テレビ小説「花子とアン」では、主役の村岡花子(吉高由里子)よりも、伯爵家の令嬢・葉山蓮子(仲間由紀恵)ほうに人気がなびいてしまったようである。この葉山蓮子とは、実在の人物である大正時代の歌人・柳原白蓮(柳原燁子)がモデルになっているという。

 この柳原白蓮は妾腹ではあるが、大正天皇と従妹の関係にあったらしい。またなかなかの美貌を誇っており、大正三大美人と言われたと言う。確かにネットで写真を見ると、スレンダーで上品な顔付をしているではないか。

 彼女の父は柳原前光伯爵。母は前光の妾のひとりで、柳橋の芸妓となっていた没落士族の娘の奥津りょうである。そして彼女は、生後7日目に柳原家に引き取られ、前光の正妻・初子の次女として入籍される。

 
 その後9歳で遠縁にあたる子爵・北小路隨光の養女となり、隨光が女中に生ませた資武と無理やり結婚させられる。そして15歳で男子(功光)を出産したが夫婦仲が悪く、子供を残す条件で離婚が成立し、20歳で柳原家に戻ることになる。
 5年後には、兄義光が選挙資金目的のために、白蓮より25歳も年上である九州の炭鉱王・伊藤伝右衛門と白蓮との見合いを強引に取り仕切り、半分騙されるような形で、伝右衛門と結婚させられてしまうのであった。

 とにかく生まれながらにして、周囲の者たちに振り回され続け、青春を謳歌できなかった白蓮は、悲しいお姫様だったようである。だが再婚より10年後に、7歳年下の宮崎龍介と知り合い、なんと駆け落ちをすることになるのだ。この駆け落ちの一部始終が新聞に掲載され、センセーションを巻き起こしたためこれを『白蓮事件』と呼んでいるようである。

 
 またテレビドラマでは、主人公の村岡花子と腹心の友ということになっているが、実際には同じ女学校を卒業しているものの、ドラマほど深い関係ではなかったようだ。それよりも本作では、白蓮と龍介の不倫だけではなく、白蓮を取り巻く上流階級の夫人たちの不倫も同時に描かれていが、姦通罪が存在していた大正時代に、これほど命がけの不倫が多かったのかと驚かされたものである。

 本作『白蓮れんれん』は、白蓮が伊藤伝右衛門と結婚して九州にやってくるところから始まり、不倫相手の宮崎龍介と結ばれるまでを描いている。文庫本で418頁という長編であるが、林真理子女史の読み易く、読者の心を惹きつける巧みな文章力のお蔭で、誰でもあっという間に読破してしまうことであろう。

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