55歳からのハローライフ
著者:村上 龍
地方新聞に連載されていた五編の中編小説を集めたものである。五人の主人公たちは、全て著者と同年齢の60歳前後であり、女性を主人公にしたものが2作で、男性を主役にしたものが3作であった。そしてそれぞれが挫折した後に再生して行くという展開でもある。具体的な内容は次の通り。
1.結婚相談所
夫が定年になってから離婚した女性が、結婚相談所に入会し、新たな伴侶を探すのだがろくな男がいない。そのうえ別れた夫からは、未練がましくいつまでもメールが届く。さてこの女性はこれからどうやって生きて行こうとしているのだろうか。
2.空を飛ぶ夢をもう一度
誰でも空を飛ぶ夢を見たことがあると思う。だが夢の中の飛行は長く続かず、一度地面に落ちると二度と空中に浮くことが出来なくなる。というくだりを読んで、空を飛ぶ夢とは誰でも同じなんだと妙に感動したものである。きっと生きている人には分からない何かを暗示しているのかもしれない。
ただこの物語は、空を飛ぶこととは直接は無縁の話である。リストラされて絶望的な生活を送っていた男が、過去に友人だったホームレスと巡り合うことにより必死の体験に遭遇する。だがそれを乗り切ることによって、少年の頃にしか見れないと言われる「空を飛ぶ夢」を見られるかもしれないという、救われた気分に満たされると言うお話である。
3.キャンピングカー
1千万円もするキャンピングカーを購入し、妻と日本中を旅するという期待を抱いて定年を迎えた男。だが妻は妻で自分の時間を奪われるのが嫌だと言う。それで息子と娘に相談するのだが…。
4.ペットロス
夫は身勝手で、他人にばかりに愛想を振りまいている。そんな夫に失望した妻が、夫の反対を押し切り、長年の夢だった柴犬を買うことになる。そして愛犬の散歩中に犬仲間が出来、その中の紳士的な老人に心を惹かれてゆく。そうした関係が数年間続くうち、愛犬のボビーが病気にかかり死んでしまうのだ。
5.トラベルヘルパー
大型トラックの運転手だった男が、定年を迎え急に読書に関心を持つようになる。そして近くの古本屋で、清楚で美しい50代の女性と知り合い何度か食事をすることになる。デートを重ねるうち、男は年甲斐もなく、その女性に夢中になり、「老いらくの恋」にはまってしまう。
以上5作のあらすじを箇条書きにしたが、どれも読みやすくあっという間に読破してしまった。ただ女性を主人公にしたものよりも、男性を主役にした作品のほうが気合が込められているように感じた。ことに最後の「トラベルヘルパー」が一番面白かったような気がする。
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