かたみ歌
朱川湊人/著
東京の下町、アカシア商店街に起きた摩訶不思議で心暖まる7つの物語を、芥川龍之介似の古本屋店主を狂言回しに仕立て全編を紡いでゆくオムニバス小説である。
時代背景は昭和30年から40年代で、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」をはじめとして、「シクラメンのかほり」、「愛と死をみつめて」、「好きさ好きさ好きさ」、「モナリザり微笑み」、「ブルーシャトウ」、「いいじゃないの幸せならば」、「世界の国からこんにちは」、「圭子の夢は夜ひらく」、「瀬戸の花嫁」、「心の旅」などの懐かしい歌謡曲が全編に流れている。
さらには、もう死語になっているトランジスタラジオやメンコ、そしてエイトマン、忍者部隊月光、鉄人28号、少年探偵団、ハレンチ学園、タイガーマスクなどのテレビ番組も登場する。とにかくこのあたりの時代で青春を送った者たちには、涙が出るほどなつかしいもののオンパレードなのである。
まさに朱川ワールドとも呼ぶべき、独特の作風で小説としての完成度もかなり高い。ちなみに収録されている7作品を並べてみると次の通り。
「紫陽花のころ」
「夏の落とし文」
「栞の恋」
「おんなごころ」
「ひかり猫」
「朱鷺色の兆し」
「枯葉の天使」
冒頭に記したとおり、これらの全てが摩訶不思議で心暖まる秀作なのであるが、私的には時空を超えた切ない恋を描いた「栞の恋」が一番気に入っている。それから締めくくりの第7話「枯葉の天使」では、全編に登場する古本屋店主の正体が明かされることになる。
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