BT’63
原作:池井戸 潤
タイトルのBTとは、ボンネットトラックのことであり、63とは1963年のことであろう。一応銀行員は登場するものの、あの「倍返し」半沢直樹の原作者が書いたとは思えない異色サスペンス巨編である。
主人公の大間木琢磨は、精神分裂病で2年間の闘病生活を余儀なくされ、会社を退職し妻とも離婚せざるを得なかった。そんな彼が5年前に亡くなった父の遺品を手にすると、視界には四十年前の風景が広がってくる。気が付くといつの間にか、自分自身が若き日の父・大間木史郎の意識の中へタイムトリップしているのだった。
父・史郎が生きている時は、寡黙で生真面目だけが取り柄のようなつまらない男にしか見えなかった琢磨だったが、何度もタイムトリップしているうちに、何度も父・史郎の燃えるような生きざまを目の当たりにする。そして琢磨自身も現実世界の中では、自分探しの旅も兼ねて、父・史郎が残した数々の足跡を辿って行くことになる。とにかくテンポの良い展開で、BT21というボンネットトラックが、過去と現在を繋ぎながらこの作品のキーとなり、かつ道案内もつとめてくれるのである。
タイムスリップという手法を使って、父と息子の葛藤と愛情を描いているところは、なんとなく浅田次郎の『地下鉄に乗って』とか重松清の『流星ワゴン』を彷彿させられる。ただこの物語は単にそれだけに終わらず、恐ろしい二人の殺し屋の存在と、彼らが演出するおどろおどろしい犯罪との絡みにも、つい恐いもの見たさで覗き続けずにはいられなくなってしまうのだ。
ただ父の恋人・鏡子の余りにも救われない人生や、後半のややご都合主義的であっけない展開には多少疑問符が付くかもしれない。しかしながら、そうしたマイナス点を差し引いても、読めば読むほどぐいぐいと心が惹き込まれて、あっという間に読破してしまうほど面白い小説であることは否めないだろう。
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