ポエトリー アグネスの詩(うた)
★★★★
製作:2010年韓国 上映時間:139分 監督:イ・チャンドン
当たり前の日常を淡々と描いていて、前半はかなり退屈なのだが、ある事件が発覚してからは、急に心が締め付けられるような気分になってしまった。そして感動のラストでは深い余韻が心の中に沁みわたってくる。
暗く重いテーマなのだが、主人公の老女ミジャの静かで地味な佇まいがそれを拭い去ってくれる。あの『母なる証明』の激しさとは全く対極に位置し、一見実に穏やかで飄々としているのであるが、孫に対する愛情の深さでは決してひけをとらない。
老女ミジャはいつもスカートを穿き、ひとにお洒落だと言われている。しかしそのお洒落というのも、ちょっとセンスがズレているようにも感じる。また貧乏暮らしでお洒落をする余裕などないはず。たぶん若いころはかなり美しく男たちに言い寄られたのだろう。だから昔の服をいくつも持っていて、年をとってもそれを着ているのかもしれない。
ミジャを演じるのは、16年ぶりにスクリーンに戻ってきたユン・ジョンヒという女優ということだが、この人の風貌や雰囲気がなんとなく倍賞千恵子に似ていると感じたのは私だけであろうか・・・。
ある少女の自殺死体が河に流れてくるシーンから始まるこの物語。そして最後は、我儘な孫と二人で暮らしている初老の女性ミジャが書き綴った『アグネスの詩』で締めくくる。現代韓国の恥部をえぐりながらも、実に切なく哀愁漂う作品に仕上がっている。
ただもう少しストーリーを練りこんで欲しかった気もするのだが、淡々と流れるストーリーだからこそ、介護老人とのセックスや、詩人仲間の刑事への告発?、そして衝撃的なラストシーンが引き立ってくるのかもしれない。そこらあたりの感性については、いろいろと意見の分かれるところだろう。
それにしても、親孝行の模範だった韓国の儒教的思想は、いつごろから喪失してしまったのだろうか。良い思想は簡単に喪失してしまうのに、なんでも金で解決するという悪い思想だけが残っているのは実に悲しい現実ではないか。韓国が本当の意味で世界に羽ばたくためには、もう一皮むけなくてはならないのかもしれない。
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