タイムスリップの不思議
リブリオ出版が『日本SF・名作集成』として全10巻をまとめ販売しているうちの第一巻目である。中身は味わい深いタイムスリップものの短編が四作収録されている。その概略は次の通りである。
● 『時間鉄道の夜』 大場 惑
宮沢賢治の童話作品『銀河鉄道の夜』を髣髴させる題名だが、1970年代に郊外にある学生街にてモラトリアムな時期を過ごす学生たちの日常と、10年に一度だけ運行されるという謎の時間鉄道の存在を描いた作品である。
● 『竜の侍』 山田正紀
時代背景は幕末。田舎の小さな藩士たちの生き様と、少女の密やかな淡い初恋をからませた作品で、まるで藤沢周平の時代劇のようである。ただ病に犯されて武士を諦めた藩士が、恐竜の骨を発掘することに夢中になるというくだりがかなり荒唐無稽。SFとか時間テーマとはちょっと無縁のようだが、無常な時の流れということを描きたかったのだろうか。
● 『時の果の色彩』 梶尾真治
リリカルなタイムトラベルロマンス作品を書かせたら、向かうところ敵なしの梶尾真治の登場。収録作品の中ではもっともタイムスリップというテーマに忠実である。ここに登場するタイムマシンは過去19年未来19年の38年間しかタイムトラベルが出来ないという仕組みになっている。実はこれが、甘く切ないストーリー構成に寄与しているのだが、このタイムマシンが12年前に戻されるという結末に矛盾が生じていることを著者は分かっているのだろうか。
● 『フライデイ』 谷甲州
帰還までに数十年を要するという宇宙への旅立ち。登場するのは宇宙船で唯一の乗務員である主人公と、フライデーという地球外知性体だけなのだが、ユニークな時間理論を展開してゆくため、飽きずに最後まで楽しく読ませてもらった。
以上の四作であるが、全編文字が大きいのでとても読み易く、あっという間に読破してしまった。
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