座頭市(北野バージョン)
★★★★☆
ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した北野映画『座頭市』です。
結論から言えば、前評判通りの最高級のエンタメといって良いでしょう。そもそも僕は、北野武作品は嫌いなのですが、今回の『座頭市』に関しては「面白い!」と太鼓判を押しても良いと思いました。
ところが、だいぶ前にこの映画を映画館で観た時、開始してから30分位経過したところで、3~4人の人達が憤慨したように思い切り席を立ってしまったのです。その人達を良く観ると、皆さんかなり年配の方々のようでした。後で思ったのですが、たぶん彼等は『勝新の座頭市』ファンで、『北野の座頭市』が余りにもかけ離れた作品であることに失望したのではないでしょうか。
『勝新の座頭市』が汗臭く、埃っぽかったのに比べて、『北野の座頭市』は汚れた部分をカットし、スマートで美しい映像が目立ちました。また勝新の演じる市が義理人情に富み、話し好きで、強敵に対してもある種の友情を抱く余裕があったのに対して、タケシの市は無表情で無口な非情の殺し屋であります。
これは『その男凶暴につき』からずっとタケシが演じて来た個性であり、彼は地のままの演技しか出来ないのだと確信してしまいました。
従ってこと演技力においては勝新には遠く及ばないし、新春かくし芸大会で座頭市のパロディーを熱演しているような気がしました。銀獅子賞が監督賞であることからも、この映画の良さは「エンターティメントに徹している」ということに尽きると思います。また従来の北野映画がタケシ中心の映画だったのに対して、今回の作品では浅野忠信演ずる浪人の物語や強盗団とそれを追う姉弟の物語が同時平行で進行し、主演であるはずの「座頭市そのもの」を喰ってしまったことが、この映画をより面白くした最大原因ではないでしょうか。
たぶんこれは意識して作られたのではなく、タケシの演技下手から生れた「怪我の光明」だったのかもしれませんね。それからテンポの良さと殺陣に関しては、『勝新の座頭市』より素晴しかったと思いますが、なんとなく『必殺仕置人』や白土三平の『カムイ伝』を髣髴させる展開が気になりました。
いずれにしてもラストの「ゲタのタップダンス」だけは間違いなく大成功でしょう。これこそ北野監督のセンスと思い切りの良さが生んだ最高のシーンだと思います。北野監督には、これからも時代劇を期侍しますが、座頭市はこれ1作だけにして欲しいですね。
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