わが母の記
★★★☆
原作は井上靖の自伝的小説だというが、現代の若者の中で井上靖の名前を知っている人が何人いるだろうか。そんなこともあり、映画館はほぼ満員だったものの、ほとんどの観客が70代前後の高齢者ばかりであった。若い人たちのほとんどは、隣のスクリーンで上演されている『テルマエ・ロマエ』のほうに吸収されてしまったようである。
さてこの映画は、タイトルに「記」とあるように、小説と言うより随想といった感じであり、ストーリーはほとんどなく、また著者は母のことは余り関心がなかったようで、母親の昔の映像は、冒頭にちょっぴり登場しただけであった。樹木希林のボケ老女役は流石であるが、あとはネットで絶賛されるほどの映画ではなかったような気がする。またどちらかといえば、同じ樹木希林が母親を演じた『東京タワー』のほうが号泣させられた記憶がある。
そんな中で、この映画の良かったところは、昔の大作家の暮らし振りを垣間見る事が出来たことだろうか。現在は検印廃止となっているが、当時は家族と秘書総出で、20万枚の検印を押していたというシーンが、いやになまめかしく、ある意味凄く羨ましい感があった。またいくつもの出版社の編集者達が、自宅に行列になったり、難しそうな沢山の書物が積み上げられた書斎などなど、古き良き時代を感じるものがあった。また最初は強引で、着替えも妻に手伝わせていた主人公だが、晩年は優しくなって一人で着替えているシーンに、時代の変遷と監督の細かい演出を感じた。
ストーリーのほうはともかく、久々に良質な文芸大作といった映画を観ることが出来たのは嬉しかった。それこそ昔は、時代劇の「東映」、アクションの「日活」、特撮と喜劇の「東宝」、そして文芸の「松竹」だったからである。松竹さんこれからも頑張れよ。
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