一枚のハガキ
★★★☆
99才になった新藤兼人監督が久々にメガホンを取った作品であり、本人が言っている通り、これが彼の最後の作品になるかもしれない。生きているだけでも大変なのに、100才間近になって、しんどい映画作りに挑戦した精神力は賞賛したいね。
最近の邦画は、TV局製作のものと、小説やマンガを原作をするものばかり。その中でこの映画のように、昔ながらの監督オリジナルの手作り作品は珍しくなってしまった。
戦争というものは、多くの人々が傷付き亡くなるという不幸を山のように築き上げたが、生き残った人々にも苦汁の選択を虐げたようである。戦死した長男の嫁と次男が結婚するしきたりがある地域があったり、金持ちの妾になったり、売春婦に成り下った女性たちもいた。また夫は戦死したと勘違いした嫁が、義父と出来てしまい愕然とする復員兵もいたらしい。
本作でもそれらの話を取り上げているが、脚本は新藤監督自身の経験から練りあげたというから、実際にそうした事態が多かったのであろう。いずれにせよ戦争が産み落した悲惨な事実である。
この映画は、戦死した戦友宛てに届いた妻からの一枚のハガキを、戦地に届いていたことを知らせるため、終戦後にその妻に届け返しに行った復員兵と戦友の妻との話である。
主役は豊川悦司と大竹しのぶで、大杉蓮・柄本明・津川雅彦などの芸達者が脇を固めている。その中でも、昔なら乙羽信子が演じたであろう役柄を、大竹しのぶが実に見事に演じ切っていたのが印象的であった。
ただ終盤になって、トヨエツとしのぶが急に親しくなったり、ご都合主義のハッピーエンドというところが、なんとなくしっくりとこないと思ったのは私だけであろうか。
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コメント
KLYさんこんにちは
そうですね。戦争直後の寒村での出来事ということでは、私も『キャタピラー』に似ていると思いましたが、こちらのほうが映画らしさと優しさのある作品でした。
投稿: ケント | 2011年9月30日 (金) 10時49分
多分エンディングそのものよりも、こういう銃後の戦争もあるのだという、若松監督の『キャタピラー』にも似た想いがあるのかもしれません。重要なのは実際に戦争時代を生き抜いてこられた方がドンドン減っていって、ケントさんも書かれているように経験から物語を紡ぎだせる人が少なくなっていくことなのだろうと思いました。最後などと言わず、もっと伝えて欲しいです。
投稿: KLY | 2011年9月28日 (水) 16時09分