八日目の蝉
★★★★
自分は堕胎したため、子供の産めない体になってしまった希和子。そして捨てられた愛人の本妻には、可愛い女の子が産まれる。
ある雨の日のことである。愛人の家に不法侵入した希和子は、赤ん坊を誘拐して自分の子供として育てながら、4年間の逃亡生活を送るのだった。
原作は直木賞作家の角田光代で、20年前、16年前、そして現代をパラレルに描く社会派ドラマである。私は原作も読んでいないし、TVドラマも観ていない。従って全く予備知識ゼロでこの映画を観たので、正確なレビューは出来ないかもしれない。
なんといってもこの映画の焦点は、幼子の薫を連れた希和子の4年間の逃亡生活である。そして終盤の写真館での記念撮影と、逮捕時に「あの子はまだ食事をしていません」という言葉に、この物語の全てが凝縮していたのではないだろうか。
希和子を演じた永作博美の凄いところは、薫に対する愛情の深さをそれとなく演じ切ったことだろう。そこにはわざとらしさが全くなく、自然に沸き出てくる本物の愛を感じてしまったからである。そうした彼女の演技を100%引き出したのは、とりもなおさず子役の女の子が素晴らしかったからに違いない。
またいつもながら小池栄子の名助演ぶりにも感心してしまった。一体最近の彼女は、どうして演技派に変身してしまったのだろうか。大人になった薫を演じた井上真央が暗過ぎたので、小池の存在は一服の清涼剤になった感がある。
なかなか完成度の高い映画だと思うのだが、原作を詰んでいないためか、次の3点が分かりづらかったことを付け加えておきたい。
1)タイトルの『八日目の蝉』という意味
2)希和子が他人の子供になぜあれだけの愛情が湧いたのか
3)薫がどうして16年間も実母とうまく行かなかったのか
私の勝手な推測では、希和子が誘拐した赤ん坊のことを、自分が身ごもっていたときに考えていた「薫」という名で呼んでいたことから、彼女は自分自身にその子は自分が産んだ子だと「暗示」をかけていたのではないだろうか。
また薫と実母がうまく行かなかったのは、希和子があれほど献身的だったのに対し、実母が余りにも自已中人間だったからだと思う。従って誘拐うんぬん以前の問題として、もともと実母のほうに問題があったのだと推測する。
タイトルの真意だけは、全く分からなかった。こじつけ的にはいろいろ論じられてはいるのだが、もうひとつすっきりしないものばかりだ。こればかりは原作者に聞いてみなければ分からないだろうね。
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(ネタバレ注意!)
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八日目の蝉
【公式サイト】 【allcinema】
角田光代の同名小説を永作博美と井上真央の主演で映画化。監督は成島出。不倫相手の赤ちゃんを奪い、4年間にわたる逃亡生活中の母親として子供への深い...... [続きを読む]
受信: 2011年5月24日 (火) 02時13分
» 映画「八日目の蝉 」他人と違う経験を自分がどう感じるか [soramove]
「八日目の蝉」★★★★☆
井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子出演
成島出 監督、
147分、2011年4月29公開
日本,松竹
(原作:原題:八日目の/ 角田光代)
→ ★映画のブログ★
どんなブログが人気なのか知りたい←
「原作の評判が高かったので先に読もうと思っていたが
他に読む本がたまってきたので
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昨年の「告白」程の衝撃は無いにしても
ホ... [続きを読む]
受信: 2011年5月26日 (木) 07時38分
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丁度公開している時に、
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受信: 2012年1月17日 (火) 10時27分
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受信: 2012年1月18日 (水) 02時07分
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7月5日 八日目の蝉(感想232作目)
アメブロが5月15日よりTB廃止する事が発表されましたので
5月15日以降に更新した記事では当ブログでTBを受付ます
当ブログにTB ... [続きを読む]
受信: 2012年7月 5日 (木) 21時08分
コメント
KLYさんこんにちは
映画は映画で悪くないのですが、やはり本格的に楽しむには、原作やTVドラマのほうが向いているかもしれませんね。
このような長編ものは、どうしても映画では回想シーン中心になり、ある種の芸術点を獲得するような創り方になりますよね。そう『砂の器』もそんな感じでしたから。
投稿: ケント | 2011年5月16日 (月) 13時49分
こんばんは。
そうですね、1の疑問に関しては劇中ちょっとだけ触れていましたけれど私も解らないです。ドラマや原作を見れば解るかもしれないですね。
2に関しては、自分はもう子供を産めない体になってしまった彼女とすれば、我が子の様に愛情を抱いたとしても不思議はないかと。他人の子ではなくて愛する人の子ですし。
3は、実母に問題がないとは言いませんが、生まれてから4年間というある意味もっとも重要な時期に母と娘として接することが出来なかったというのは大きいと思います。産んだだけでなく育てて始めて親になるものでしょうし。
NHKでやったドラマを観てみたいです。映画も凄く良かったのですが、時間をかけて語らえることでまた違った見え方もできそうですし。
投稿: KLY | 2011年5月14日 (土) 21時05分