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2011年3月18日 (金)

暴走機関車

★★★★☆

 あの黒澤明監督が、米国で映画化するために書いた脚本をアレンジし、ロシアのアンドレイ・コンチャロフスキー監督がメガホンをとったサスペンス・アクション大作である。
 豪雪の中、アラスカ刑務所から脱獄した二人の凶悪因人が、こっそり貨物列車に乗り込んで逃亡する。ところが運転手が心臓発作で急死し、列車はものすごいスピードで暴走してしまう。
 先にある古い橋を渡るには、低速で走らなければ橋が破壊してしまうのだ。そこで鉄道局は、途中でこの列車を脱線させようとする。ところが無人だと思った列車に人が乗っていることが分かり、脱線はとりやめになるのだが・・・。またその先には曲カーブや化学工場があるという。

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 まるで先頃公開されたトニー・スコット監督の『アン・ストッパブル』そのものではないか。だが『アン・ストッパブル』のほうは、実話をもとに作られたという。そして『アン・ストッパブル』では、すぐに列車の暴走が始まるのだが、この映画では前半に二人の因人が脱獄するまでの経緯を詳しく描いているのだ。
 どちらが面白いかは、観る人の好みかもしれない。せっかちな現代人には、列車の暴走シーンが長くアクションに特化した『アン・ストッパブル』のほうが好みかもしれない。だが私は、人物描写のある本作のほうが面白かった。ただ所長がしつこく追いかけてくるという展開は、暴走機関車というテーマに水を差すようで、ちょいといただけなかった。
 黒澤監督のオリジナル脚本は、『アン・ストッパブル』同様、アクション中心のシンプルな構成だったという。それを米国側が、脱獄の背景や列車暴走の経緯等を付け加えてしまったため、黒澤監督がそれを承知せず、実現しなかったと言われている。まことに皮肉な話である。
 まあいずれにせよ、主役の囚人たちとシべリアの大雪、そして機関車の重厚な風貌などが重なって、凄まじい迫力を生み出していたことは確かであろう。まさしく名作にふさわしい映画だと感じた。

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