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2011年2月 1日 (火)

ヤコブへの手紙

★★★★

 登場人物は盲目の牧師ヤコブと、終身刑を恩赦され、ヤコブの家で働くことになったレイラと、たまに来る郵便配達の三人だけ。そしてほとんど会話もなく、舞台はヤコブの家と教会だけというかなり地味なフィンランド映画なのである。

Jaakob
 そのうえ上映時間は僅か70分という短さだ。フィンランドアカデミー受賞作とのこと。確かに心を打つ感動作品ではあるが、果して興行的に耐えられるかどうかは難しいところである。

 田舎での淡々とした不便で退屈な生活。善良なヤコブ牧師の生き甲斐は、毎日届けられる悩み事の手紙と、その返事を書くことだった。実はそれによって、彼は己の存在価値を確認していたのである。
 ところがある日突然、ヤコブ宛の手紙が来なくなり、彼は生き甲斐をなくし、病に伏せってしまうのだった。手紙が来ないということは、悩み事のある人がいなくなったということだ。ある意味良いことなのだが、ヤコブにとっては苦痛以外の何者でもない。そこに大きな矛盾が生じている事にヤコブは気付き、さらに深く心を痛めることになるのである。

 牧師という職業は、他人のためにあるのか、それとも偽善による自已満足のためにあるのか…。実に大きなテーマであるが、真実は藪の中だろう。それは他人がとやかく言うことではなく、自分自身が決める事なのだから…。
 感動的なのは、最後にレイラが読む二通の手紙である。一つは自分の身の上を語った架空の手紙であり、今ひとつはレイラが唯一愛していた人物からの手紙だ。このシーンでは、誰もが胸に熱いものがこみあげてくるはずである。
 そして醜悪で意地の悪い顔付をしていたレイラが、だんだん優しく明るい顔に変化してゆくのを決して見逃してはなるまい。ラストはあっけなく終るが、レイラの希望に満ちた顔が実に印象的であった。

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コメント

KLYさんこんにちは
この映画の見所は、最後の手紙とレイラの心の変化でしょうね。というよりそれ以外には何もないのですが・・・

投稿: ケント | 2011年2月 3日 (木) 19時21分

最後の手紙は感動しましたね~。
もちろん牧師だって嘘だって解ってて、それでもなお黙って聞いてあげる。
ヤコブは手紙への返事は自分のためだったのかもって嘆いたけれど、最後は紛れもなくレイラのためだったと思いました。

投稿: KLY | 2011年2月 1日 (火) 23時28分

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