上意討ち 拝領妻始末
★★★★☆
老人の会津藩主が、無理やり藩士の娘いちを妾とし、男子を誕生させる。そして今度は不要になったいちを、藩士笹原伊三郎の長男与五郎に無理やり払い下げる。最初は渋っていた笹原家であったが、藩主の命令に逆らうことは出来ずに、仕方なくこの嫁を迎え入れることになった。
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そのために、以前にいちと藩主の間に生まれた子供がお世継ぎ候補となり、いちはそのご生母様になるため、再び大奥に戻れという命令が下されるのだ。一度無理矢理払い下げ、幸せにに暮らしている女を再び差し出せというのである。いくら藩主といえども理不尽このうえない。
さすがに今度ばかりは、笹原伊三郎も与五郎夫婦も納得出来ず、やんわりとお断りするのだが、その願いも叶わず、いちを差し出さねば一族郎党全てが処罰を受けるという。そのため伊三郎の悪妻と次男、そして親戚全員が伊三郎と与五郎夫婦を説得することになる。
だが三人の頑固者は、どうしても首を縦にふらない。そして意地でも、たった三人で藩全体を敵に回して戦うことを決意するのだった・・・。
それにしても、この意地の張り方は生半可ではない。そして終盤に藩主の側用人自らが、折衷案を持って笹原家を訪れるのだが、もはや鉄壁の武士の意地は崩れない。
だから当然ハッピーエンドになるはずがないのだ。監督は小林正樹であるが、このあたりの描き方はなんとなく黒沢明監督を髣髴させる。ただ三船プロ作品のためか、三船敏郎自身の描き方にかなり雑な感が残った。
どうも三船が登場すると、思い切りエンタメになってしまうのだ。このようなシリアスな作品では、むしろ敵方の仲代達矢、そして悪役の神山繁などの奥深い演技力にのほうに魅せられてしまうのである。なかなか素晴らしい作品ではあるが、同じ小林正樹監督の『切腹』には及ばない。やはり主演俳優の違いが大きいのだろうな。
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