帰還
実はキャメロン・ディアス主演の『運命のボタン』という映画を観て、どうもボタンを押した後の成り行きとか結末がはっきりしないのでリチャード・マシスンの原作を読むことにしたのである。ところがこの原作は、僅か17頁の超短編であり、結末も赤の他人ではなく自分の旦那が事故で死ぬのだ。しかも100万ドルではなく2万5千ドルの生命保険が手に入るという皮肉。さらに「知らない人が死ぬと言ったじゃないの!」と抗議すると、「あなたはほんとうにご主人のことをご存知だったと思いますか?」と問われる超皮肉。
運命のボタン (ハヤカワ文庫NV) 著者:リチャード・マシスン |
実にシンプルなのだが、だらだらとおかしな方向転換をしてしまった映画よりずっと出来が良い。そりゃあ原作だから当たり前か・・・。
さてそんなわけで超短編の原作は、わずか10分程度で読み終わってしまったのだが、この『運命のボタン』以外にもマシスンの短編・中篇が以下の通り12篇収録されている。
『針』、『魔女戦線』、『わらが匂う』、『チャンネル・ゼロ』、『戸口に立つ少女』、『ショック・ウェーヴ』、『帰還』、『死の部屋の中で』、『子犬』、『四角い墓場』、『声なき叫び』、『二万フィートの悪夢』
ほとんどがホラーまたはSFであり、どの作品もなかなか面白かった。その中で偶然タイムトラベルものが一作見つかったのである。タイムトラベルファンとしては嬉しくて小躍りしてしまった。『帰還』という作品である。
愛する妻を残して、タイムマシン(時間転移機)で500年後の未来に跳び立つ男の話だが、ちょっとしたミスから安全ベルトが外れてしまう。しばらくして気が付くと500年後の世界にたどり着いているのだが、そこの住人に元の世界には戻れないと言われる。だが彼はもう一度愛妻に逢いたくて、無理やり元の世界を目指すのだった。
といったお話であり、その後マシスンは同じ設定のタイムマシンを使った連作中篇シリーズを思いつき、『ショック・・・・・・』、『旅人』などを書いたという。なんとなく梶尾真治の『クロノス・ジョウンターの伝説』みたいだな。是非この二作も読んでみたいのだが、絶版なのかなかなかみつからないのが残念である。
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