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2010年12月28日 (火)

最後の忠臣蔵

★★★★☆

 年配の人なら誰でも知っている忠臣蔵だが、それは主君の仇討ちのため、吉良邸に討ち入りするまでのお話であった。ところが本作は、生き残った二人の赤穂浪士の討ち入り後の話なのである。
 一人は討ち入りを後世に伝え、残された遺族に支援金を与える役割を担った寺坂吉右衛門(佐藤浩市)。いま一人は、大石内蔵助の愛人可留と彼女が身ごもった可音を助ける密命を受けた瀬尾孫左衛門(役所広司)である。

Saigo
 二人は共に総帥・大石内蔵助の指令によって、他の46人とは別行動をとったわけであるが、吉右衛門が表舞台で活躍したとすれば、孫左衛門のほうは地味な裏方の任務だった。共に大変な任務ではあるが、実は二人に与えられた役割は、天と地ほどの差があったような気がする。
 吉右衛門は討ち入りにも参加し、その任務にも大義名文があり、出会う人々にも感謝されるばかりだ。ところが孫左衛門のほうは、内蔵助の私的な任務につき、隠密裏に事を運ぶ必要があった。それでやむなく討ち入り前日に逃亡した形をとることになる。また尋ねあてた愛人可留もすぐに病死し、残された赤子が成人になる迄、りっぱに育てあげなくてはならないのだ。
 それで本作では、その瀬尾孫左衛門が本懐(討ち入り)を遂げられず、逃亡した形をとってからの、16年後の生き様を追求してゆくのである。もちろん大石内蔵助も吉良邸討ち入りも、サラリとしか描かれていない。それでいて、悲しくて切ない武士道に生きる男の悲哀が見事に描かれているのだ。
 また配給がワーナーということもあってか、大覚寺の竹林、人形浄瑠璃などの描写は、純邦画の時代劇よりも、さらに日本的美意識に拘っているように感じた。そして武士道についての究極な世界観にも揺るぎがない。余りにも完璧過ぎるというか、全く無駄や遊びがない。そして主役・役所広司さんの迫真の演技や、可音役の新人女優・桜庭ななみちゃんの清楚な美しさもよかった。
 心情的には最後に、ゆう(安田成美)と幸せに収まって欲しかったのだが、それでは単なる「子育て忠臣蔵」で終わってしまう。後味は悪いのだが、ラストをああして武士道を強調することで『最後の忠臣蔵』となり得たのだろう。

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コメント

ななさんこんばんは

感動できて良かったですね。
最後の切腹は僕もちょっと納得出来ませんでした。僕なら、ゆう(安田成美)と幸せになる道を間違いなく選びますね。
まあ、それじゃ軽い映画になっちゃうので仕方ないですな・・・

投稿: ケント | 2011年1月21日 (金) 21時39分

こんばんは!
遅ればせながら観ました。
役者の演技が素晴らしく予想以上に感動できましたが・・・
>ラストをああして武士道を強調することで『最後の忠臣蔵』となり得たのだろう。
女性の私としては主人公にロマンスも味わってほしかったけど
やっぱりそれじゃ「忠臣蔵」じゃなくなるのかなぁ・・・。

投稿: なな | 2011年1月20日 (木) 23時10分

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